[文書名] ウクライナの経済成長及び復興の推進のための日ウクライナ協力の深化に関する共同コミュニケ
2024年2月19日、日・ウクライナ経済復興推進会議は、両国から官民の参加を得て、日本及びウクライナの両首相により東京において開催された。
本会議の結果を受け、日本国の岸田文雄総理大臣及びウクライナのデニス・シュミハリ首相は、2023年3月21日に発出された関連する共同声明において両国の首脳が決定したとおり、日本とウクライナとの間の特別なグローバル・パートナーシップに基づく包括的な協力を強化し、及び深化させる双方のコミットメントを再確認した。
シュミハリ首相は、今般の能登半島地震の犠牲者、その家族及び被災者に深い哀悼の意を表した。
シュミハリ首相は、2023年の日本のG7議長年における、特に、ヴォロディミル・ゼレンスキー・ウクライナ大統領も参加したG7広島サミットにおける岸田総理大臣の力強いリーダーシップを高く評価した。両首相は、関連する国際場裡の下での協力を更に強化する意図を表明した。
両首相は、緊急復旧プロジェクト及びウクライナの大規模な復興の双方に日本が参加する上での土台を築く、本会議における決定の重要性を強調した。シュミハリ首相は、ウクライナにおけるプロジェクトの実施のために、日本の高度な技術力並びに戦後復興及び甚大な自然災害後の復旧における日本ならではの経験が重要であることを強調した。
両首相は、ウクライナの女性及び子どもたちの苦しみを軽減するため、復興のあらゆる段階における女性・平和・安全保障(WPS)アジェンダの実施及び子どもたちのニーズの重要性を強調し、この文脈で、両首相は、復興活動のために女性の更なるエンパワーメント及び女性のリーダーシップの推進が必要であることを強調した。また、女性及び子どもたちを含む全てのウクライナ避難民が安全かつ速やかに祖国に戻れる状況を回復することは決定的に重要である。
岸田総理大臣は、ウクライナの自立的かつ持続可能な発展という最終的な目標に向けて、民間部門の代表者を含む様々な当事者の参画を通じたマルチ・ステークホルダー・アプローチをとることにより、日本側がウクライナの人々のニーズに耳を傾け、ウクライナの復旧及び復興に積極的に貢献する用意があることを再確認した。特に、岸田総理大臣は、関連分野において世界有数の専門技術を有する日本の大企業及び最先端技術を有するスタートアップ企業を含む中小企業の役割を強調した。
この関連で、両首相は、緊急復旧プロジェクト及び大規模な復興のための協業及び協力並びに両国の民間企業間のウクライナ経済の復興及び成長を強調する、本会議において発表された意図表明文書、協力覚書及び契約を歓迎した。
両首相は、本会議における決定の効率的な実施を確保するために進捗状況をフォローアップし、更なる協力を推進するよう、双方の関係省庁に指示した。かかる取組の調整のため、関連当局は、それぞれの政府により割り当てられる。
シュミハリ首相は、日本政府及び日本国民に対し、ウクライナへの揺るぎない支援並びに財政的、人道的及び技術的な支援の提供に深い感謝の意を表明した。
岸田総理大臣は、ウクライナ及びウクライナの人々が、ウクライナの自由及び独立を守り、領土一体性を回復することに対する支援のコミットメント及びウクライナにおける第一次産業から第三次産業までの網羅的な経済発展の達成を目的として、ウクライナ経済の安定を確保するために必要な長期的支援を提供するという日本のコミットメントを再確認した。
岸田総理大臣は、地雷対策・がれき処理及び人道状況改善・生活再建といった初期の緊急復旧支援フェーズに始まり、農業、バイオテクノロジーなどの革新的な製造業並びにデジタル及びIT/ICTの発展といった経済復興及び産業高度化まで、復興のあらゆるフェーズにおける日本の継続的な支援を表明した。また、岸田総理大臣は、エネルギー及び交通のインフラ整備支援の回復並びに汚職対策及びガバナンス強化といった基盤を構築することの重要性を強調した。両首相は、両国の民間部門の参加が、両国間の協力を進展させるための具体的なプロジェクトを実現する鍵であると強調した。
両首相は、対露制裁の維持及び強化がロシアの軍事活動を抑止する上で極めて重要かつ効果的な措置であることにつき一致し、及び制裁措置の迂回を防ぐために必要な行動をとる決意を確認した。
両首相は、世界の食料安全保障の確保を目的とする、重要かつ国際的なイニシアティブ、特に、ゼレンスキー大統領の人道的なイニシアティブである「Grain from Ukraine(ウクライナからの穀物)」を維持する必要性を強調した。
両首相は、両国が、貿易・経済関係の深化、農業・インフラ開発の強化、デジタル化及びグリーン・トランジション・イニシアティブの推進、科学及び文化の分野における協力の促進並びに個々人の関係構築の促進といった多くの分野において、二国間協力の更なる拡大に向けていまだ実現していない大きな潜在性を有していることを認識した。
両首相は、所得に対する租税に関する二重課税の除去並びに脱税及び租税回避の防止のための日本国政府とウクライナ政府との間の条約への署名を歓迎した。また、両首相は、投資の促進及び保護に関する日本国とウクライナとの間の協定の見直しのための交渉開始の発表を歓迎した。これらの国際約束は、日本とウクライナとの間の相互の投資及び経済の交流を一層促進することを通じて、ウクライナの経済成長及び復興に資する。
両首相は、ウクライナの経済安定の維持、経済成長及び復興の推進のためには、両国の関係機関のみならず国際金融機関を通じた融資及び保証を最大限活用することにより与信可能なプロジェクトを実現することが重要であるとの見解を共有した。
この点において、シュミハリ首相は、日本による世界銀行融資への信用補完及び無償資金協力を含む財政支援の迅速な実施を高く評価した。また、シュミハリ首相は、ウクライナの復興ニーズに対応するための、欧州復興開発銀行(EBRD)の増資のコンセンサス及びEBRDの総務による承認を導いた日本の主導的な役割に深い感謝の意を表明した。さらに、シュミハリ首相は、国際通貨基金(IMF)に設置されたウクライナ能力開発基金に対する国内歳入動員強化を支援するための日本の貢献、並びに民間部門の投資及び技術革新を促進するために国際金融公社(IFC)の包括的日本信託基金に新設されるウクライナ・ウィンドウに日本が貢献する予定であることに謝意を表明した。
また、シュミハリ首相は、国際協力銀行(JBIC)と黒海貿易開発銀行(BSTDB)との間のツーステップローンを供与するための了解覚書への署名を歓迎した。
両首相は、日本貿易保険(NEXI)がウクライナ向けの海外投資及び貿易保険のための新たなクレジットラインを設定したことを歓迎した。
両首相は、日本国財務省とウクライナ財務省との間で2023年8月2日に開始された日ウクライナ財務協議を継続し、並びに運輸、インフラ、エネルギー、デジタル技術、農業及び環境の分野における両国の関係省庁間の協力を深化させることが重要であることで一致した。
シュミハリ首相は、ウクライナにおける無償資金協力及び技術協力プロジェクトを含むプロジェクトの実施のための国際協力機構(JICA)の活動の重要な役割を強調した。
岸田総理大臣は、ウクライナ側からの要請を受け、日本貿易振興機構(JETRO)の駐在員事務所をキーウに設置する日本のコミットメントを確認した。シュミハリ首相は、ウクライナにおけるJETRO事務所の設置のために包括的な支援を提供する用意があることを表明した。両首相は、日本とウクライナとの間の二国間の経済協力を強化し、及び向上させるため、かかる協力が重要であることを確認した。
両首相は、経団連(日本経済団体連合会)のウクライナに関する委員会及びウクライナ経済省下のウクライナ対日経済協力調整協議会の活動を強化することが重要であると認識し、二者間の協力を強化するための経団連とウクライナ経済省との間の共同取決めへの署名を歓迎した。
岸田総理大臣は、ウクライナの民間部門の代表者による訪問を促進することを目的として、ウクライナ国民のための査証の発給要件を緩和する日本側の意図を発表した。
両首相は、両国が、科学及び文化・人的交流の分野における二国間協力を更に拡大する大きな潜在性を有していることを認識し、並びに教育及び科学技術の分野における協力覚書への署名を歓迎した。
また、両首相は、気候変動への対応における二国間協力を強化するための共同努力の一環として、日本国政府とウクライナ政府との間の二国間クレジット制度に関する協力覚書への署名を歓迎した。
両首相は、国際社会との協力の下、日本がウクライナを支援することを確認し、並びにウクライナの経済成長及び復興を推進するために第三国及び国際機関と協働することの重要性を認識した。
両首相は、昨年6月にロンドンで開催されたウクライナ復興会議の成果を認識した上で、本年6月に予定されるドイツ主催のウクライナ復興会議の準備のため、日ウクライナ経済復興推進会議の成果を強調し、ウクライナに対する国際的な支援を強化することの重要性を確認した。
東京、2024年2月19日
日本国総理大臣 岸田文雄
ウクライナ首相 デニス・シュミハリ