データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日伊アクションプラン-ファクトシート

[場所] 
[年月日] 2025年3月5日
[出典] 外務省
[備考] 仮訳
[全文] 

2024年6月、日本とイタリアは、戦略的パートナーシップの枠組みの下、今後の両国の協力の指針となる日伊アクションプランを発表した。石破茂日本国内閣総理大臣とセルジョ・マッタレッラ・イタリア共和国大統領は、2025年3月5日に会談を行い、2026年の外交関係樹立160周年に向けて、アクションプランの下での両国間の協力を一層強化し、及び両国民の交流を深める取組を積極的に推進していくことの重要性について一致した。また、両者は、アクションプランに基づき、以下の分野でこれまでに達成された進展を歓迎した。

1 外交

* 2024年のイタリアによるG7議長国のリーダーシップの下、ウクライナ

情勢、中東情勢、核・ミサイル問題や拉致問題を始めとする北朝鮮への対応を含むインド太平洋情勢及びアフリカ情勢並びに地球規模の課題について、両国の政府の代表及び外交当局間での協議を一層緊密に実施した。また、イタリアが欧州において果しているますます重要な役割を念頭に、両者は日EU間の協力の促進に向けた協議を行った。

2 防衛と安全保障

* 両者は、相互運用性の向上を目的とした複数の取組や二国間/多国間の訓練

ミッションを通じて、防衛・安全保障分野での協力を一層強化した。

* 2024年8月、空母打撃群(空母「カヴール」、フリゲート艦「アルピーノ」、海軍哨戒艦「モンテクッコリ」)及び練習帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」が日本に寄港した。同月、共同訓練「ライジング・サン24」及び「ノーブル・レイブン24-3」を実施した。また、同8月、海上自衛隊練習艦隊「かしま」及び「しまかぜ」がナポリに寄港し、海上自衛隊練習艦隊とイタリアのフリゲート艦「マルゴッティーニ」がエーゲ海で日イタリア親善訓

練を行った。

* 2024年11月、物品・役務を相互に提供する際の決済手続等の枠組みを

確立すべく、「日本国の自衛隊とイタリア共和国の軍隊との間における物品又は役務の相互の提供に関する日本国政府とイタリア共和国政府との間の協定」(日・伊物品役務相互提供協定(日伊ACSA)が署名された。

* 2024年12月、GCAP政府間機関(GIGO)設立条約が発効し、岡真臣元防衛審議官がGIGOの初代首席行政官に任命された。

* 2025年1月、イタリア陸軍の空挺部隊が陸上自衛隊の「令和7年降下訓練始め(NYJIP2025)」に初めて参加した。

* 2025年2月、両者は日伊防衛当局間(MM)協議を日本で開催した。

* 日本国航空自衛隊パイロットは国際飛行訓練学校(IFTS)におけるイタ

リア空軍飛行教育課程に引き続き参加した。

3 経済

* 2025年5月にローマで開催が予定されている日伊ビジネスグループ(I

JBG)合同会議を見据え、日本貿易振興機構(JETRO)やイタリア貿易振興庁(ITA)を通じた、スタートアップ企業を含む企業間ビジネスマッチングを一層促進する取組が実施された。

* 2024年10月のLNG産消会議にて、イタリア環境・エネルギー安全保障省(MASE)と日本資源エネルギー庁がLNGに関する包括的協力を確認し、協力覚書の署名に向けた協議が進められている。同会議では、ENI(イタリア大手エネルギー企業)とJOGMEC(エネルギー・金属鉱物資源機構)の間で、緊急時の協力を含め、ガスセキュリティの強化やLNGの供給・調達の多様化の支援に関する協力拡大を目的とした協力覚書が署名された。

* 2025年2月、JETROはミラノ・ウニカへの支援として出展料の一部を負担し、繊維産業における協力を促進した。

* 両者は、様々なイベントにおいて、協力して大阪・関西万博及びイタリアパビリオンのプロモーションを行った。

* 2024年8月、イタリア海軍の練習帆船「アメリゴ・ヴェスプッチ」が東京に寄港した機会に、ヴァレンティノ・ヴァレンティー二企業・メイドインイタリー省副大臣の主導により、イタリアへの投資誘致に関する取組が行われた。

4 文化・人的交流

* 浮世絵展(於:ローマ、ピサ)や天野喜孝氏展覧会(於:ルッカ、ミラノ)

といった日本関連の展覧会の開催を通じ、両者は、現代美術を含む日伊間の

芸術・文化交流を促進した。

* 2024年8月、日伊映画共同製作協定が発効し、両者は、同協定に基づく

共同製作作品に関する調整を開始した。

* 日伊ワーキング・ホリデー協定の速やかな発効を確保し、及び同協定を活

用した若者の交流を促進すべく、両者は必要な手続を着実に進展させた。

* G7観光大臣会合の機運も活用し、ANA及びITA航空による日本とイタリアを結ぶ直行便の運航を踏まえ、両者は観光促進に向けた意見交換を行っ

た。

* 日本とイタリアのスポーツ交流は、2025年スペシャルオリンピックス冬

季世界大会・トリノ、第25回夏季デフリンピック競技大会東京2025、東京2025世界陸上競技選手権大会及びミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックを機に、更に強化されるべく推進されている。

5 学術・科学技術分野における協力

* 研究協力に関し、2024年に2つの大型プロジェクトが開始された。イタ

リア国立研究評議会(CNR)が率いるイタリアの研究チームと、科学技術振興機構(JST)が実施する「革新的GX技術創出事業(GteX)」に参加する2つの日本の研究チームが、エネルギー貯蔵技術に関する研究協力を推進している。イタリア国立原子核物理研究所(INFN)と東京大学宇宙線研究所(ICRR)は、アインシュタイン望遠鏡の低温技術と低温鏡懸架装置に関する共同研究を行っている。

* イタリアCNRと日本学術振興会(JSPS)は、具体的な研究協力を進めており、2025年に協力覚書を更新することにコミットしている。

* 2024年、両国の複数の研究機関と大学が、宇宙と航空宇宙、生命科学、モビリティと自動車、グリーンエネルギーと水素、半導体、持続可能な食料、ロボット工学、経済安全保障など、相互に関心のあるトピックに関するシンポジウムやワークショップを開催した。

* 既存の協力覚書に基づき、宇宙航空研究開発機構(JAXA)とイタリア宇宙機関(ASI)は、災害リスク管理と国際宇宙ステーションのカロリメータ型宇宙電子線望遠鏡(CALET)での協力を実施しているほか、宇宙科学分野での更なる協力の機会についても協議を行っている。

* 両国のインフラ・プロジェクトの実施を支援するため、長大橋の建設、運営及び維持管理の分野において、日本とイタリアは、技術協力について事務レベルの協議を実施した。

6 食と農業

* 2024年9月、日本農林水産省とイタリア農業・食料主権・森林省との農

業及び食料分野における協力覚書が署名された。