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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ウクライナ地雷対策会議(UMAC)2025 復興に向けた加速

[場所] 日本、東京
[年月日] 2025年10月23日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

ウクライナ地雷対策会議(UMAC)2025
復興に向けた加速
日本、東京

我々、閣僚、高級実務者、並びに、政府、国際機関及び市民社会のハイレベルの代表者は、2025年10月22日から23日にかけて東京で開催されたウクライナ地雷対策会議(UMAC)2025において、

ロシア連邦によるウクライナへの継続的な戦争がもたらす大規模な爆発性兵器(EO)による汚染、大規模な人的苦痛、破壊及び深刻な人道的影響を認識し、

国連総会決議A/RES/ES-11/1及びA/RES/ES-11/6を再確認し、

37,000 平方キロメートル以上の土地の解放及び120以上の認定オペレーターの稼働を含む、ウクライナにおける地雷対策の著しい進展を歓迎し、

クロアチアのザグレブにおける2023年のウクライナにおける人道的地雷除去支援ドナー会議及びスイスのローザンヌにおけるUMAC2024の成功及び教訓に基づき、

ウクライナの自立的な地雷対策の能力育成の重要性を再確認するとともに、国際的な支援を並行して強化し、

ウクライナにおける地雷対策の取組の効率性と持続可能性を高め、成功した戦略を採用し、地雷被害国を含むパートナー国及び組織の経験をグローバルガバナンスに活用する上でイノベーションと強固なパートナーシップが果たす重要な役割を強調し、

ウクライナ、国連、国際パートナー及びウクライナにおける地雷対策オペレーターにとっての指針文書としてのウクライナの「2033年までの国家地雷対策戦略」の役割を認識し、

以下の3つの推進要因に基づき、地雷対策を加速させることに努める。

1.人

・ 中央、地域及び地方レベル並びに官民両セクターにおける国家能力構築の必要性を踏まえつつ、ウクライナの「2033年までの国家地雷対策戦略」及びその「2026年までの実施計画」で定められた優先分野に基づき、資格のある専門家の能力強化及び人数の増強を図る。

・ 国家当局と連携した地方のコミュニティレベルでのイニシアティブは、ウクライナ国民全体の復興プロセスへの参画へと導くものであり、その重要性を認識しつつ、女性、若者、退役軍人及び地雷被害者を含む障がいを持つ人々など多様な社会集団の地雷対策への参画を促進する。

・ 地雷対策が、尊厳と生計手段へのアクセスを通じた避難民の再統合に寄与することを認識する。

・ 影響を受けたコミュニティ及び地雷被害者に対し、リスク教育、医療ケア、心理社会的支援、経済的再統合及び司法へのアクセスを含め、包括的かつ総合的な支援を提供する。

・ 義肢装具やその他の補助器具を含め、また、これらに限定されない、地雷被害者の医療ケアにおける革新技術のさらなる活用を歓迎する。

・ ウクライナと他の地雷被害国との間の連携促進に特に留意して、グッドプラクティス、技術的進歩及び専門知識の共有を通じた地雷対策における国際協力を促進する。

2.技術

・ 既存技術のさらなる改良、及び様々な関連技術の組み合わせを通じて、地雷対策の安全性、スピード、品質、費用対効果を向上させる取組を歓迎する。

・ 人工知能(AI)、ドローン、新型センサー、スキャナー、遠隔操作式地雷除去機などの革新的な地雷除去技術の研究、開発及び導入への投資を奨励する。

・ UMAC2025において特定された世界の技術ニーズとギャップに留意し、イノベーションと技術における拡張可能なソリューションの共創、研究、開発及び展開を加速するため、国際的連携と官民連携を促進する。

・ 地雷対策の管理と運用における安全、スピード、品質、費用対効果を改善するため、国際地雷対策基準(IMAS)及び各国の基準に沿って実施されるべき地雷対策をデジタル化により変革させる方法を模索する。

・ ウクライナが地雷対策プログラムに革新的な手法を統合した最近の多様な経験を認識し、IMASの世界的な履行状況の検証と改善への同国の貢献を促進する。

・ 世界の地雷対策分野のために、ウクライナにおいてこれら革新的技術のデモンストレーション、実地試験、改良、共同開発を行うイニシアティブを歓迎するとともに、ウクライナが、他の地雷被害国を含む国際社会と、イノベーション及び技術に関する経験を共有する用意があることを歓迎する。

・ 資源の最も効率的かつ戦略的な配分を可能とするため、ビッグデータ分析とAIを活用したツールを用いて、証拠及びデータに基づく優先順位付け及びタスク割り当てシステムを開発する取組を強化する。

・ ウクライナにおける機械類その他技術の生産の現地化に向けた取組を奨励する。

3.ネクサス

・ 人道的地雷対策をより広範な復旧及び開発の枠組み、特にウクライナの基幹産業の一つである農業に統合する重要性を理解し、この文脈における「ネクサス」の概念を「復旧への入口」として認識する。

・ 統合的で持続的な地雷対策の取組を支援するため、先行投資メカニズムやインパクト投資スキームなどの革新的な資金調達メカニズムを含む多様な資金源を動員する。

・ 国のオーナーシップを強化するネクサス・アプローチの下での直接協働に留意し、国と地方の当局の開発計画を統合させる長期的で柔軟な資金調達を推進する。

・ 地雷対策は復興の出発点と認識し、可能な限り最大限かつ早期に地雷除去から復興・開発への円滑な移行を促進し、全国的な長期的利益の最大化を確保する。

・ 国際NGOの能力に留意し、国内の地雷対策関係者の成長及び能力強化を支援し、透明性のある持続可能な人道的地雷除去のエコシステムの発展を促進する。

・ 弾薬・爆発物による環境リスクを評価し、必要なリスク低減措置を講じる。

・ 地雷除去後の復旧の取組における民間セクターの関与、セクター横断的な調整及び官民連携を奨励し、生計の回復を支援するために土地の解放を加速させ、世界の食料安全保障と持続可能な開発に貢献する。

前進に向けて

我々は、ビジネス関係者がウクライナの対人地雷除去分野を前進させ、国内外の企業が市場に参入する機会を拡大させていることを認識し、UMAC2025においてこの分野を取り巻く多様で数多くの代表者が参加したことを歓迎する。

我々はまた、人道的地雷対策の持続可能な資金確保に向けた革新的な金融メカニズムの重要性を認識し、復旧プロジェクトの加速に向け、国際金融機関と民間資本の双方に参画を呼びかける。

我々は、日本政府による本会議の主催、及び世界的な人道的地雷対策への継続的なリーダーシップと貢献に対し心からの謝意を表する。我々はEUが主催するUMAC2026に期待する。我々は、政府、国際機関、民間セクター関係者及び市民社会を含む全てのパートナーに対し、ウクライナとその他の地雷被害国における復旧・復興に向けた進展を加速させるために、連帯と革新の精神で協働するように強く求める。