[文書名] 『中央アジア+日本』対話・首脳共同宣言(東京宣言)
2025年12月20日、東京において、「中央アジア+日本」対話の第1回首脳会合が開催され、高市早苗日本国総理大臣、カシム=ジョマルト・トカエフ・カザフスタン共和国大統領、サディル・ジャパロフ・キルギス共和国大統領、エモマリ・ラフモン・タジキスタン共和国大統領、セルダル・ベルディムハメドフ・トルクメニスタン大統領及びシャフカット・ミルジヨーエフ・ウズベキスタン共和国大統領(以下「首脳」という。)は、相互協力の現在の水準に満足の意を表すとともに、相互協力の展望及び地域・国際情勢について議論した。
◆ 総論
日本と中央アジアとの間の協力のレビュー
(1)首脳は、外交関係樹立以降33年間にわたる日本と中央アジア5か国との関係発展を高く評価した。
(2)首脳は、過去21年にわたり確立された友好と相互信頼に基づくパートナーシップと互恵的協力の維持・強化に貢献してきた「中央アジア+日本」対話(CA+JAD)の貴重な役割を歓迎した。
(3)過去10回の「中央アジア+日本」対話の外相会合の実績を確認し、首脳は、人づくり、テロ及び暴力的過激主義の予防、薬物問題、国境管理、農業、防災、水資源等の分野における地域協力や地域の平和と安定の促進における日本の「触媒」としての役割を称賛した。
(4)首脳は、高級実務者会合(SOM)、知的対話(東京対話)及び様々な分野における専門家会合等の特別なメカニズムを通じた「中央ジア+日本」対話の継続を歓迎した。
(5)首脳は、2024年8月にアスタナで開催されたビジネスフォーラム、及び2025年の第1回首脳会合のマージンで開催されたビジネスフォーラムを歓迎した。
(6)首脳は、2023年9月の「中央アジア+日本」対話・経済エネルギー対話の立上げと2025年9月の第2回対話の開催を確認し、その共同声明を歓迎した。
(7)首脳は、経済関係を強化し、具体的かつ実利的な協力を発展させるべく、日本と中央アジア地域の間の更なる協力を促進する重要性について一致した。
日本と中央アジアとの間の今後の協力の方向性
(8)21年間の積み重ねられた協力関係を考慮し、首脳は、「中央アジア+日本」対話の第1回首脳会合の結果を強く称賛した。
(9)これまで達成してきた協力関係に基づき、日本は、互恵的関係を強化するための「中央アジア+日本」対話(CA+JAD)東京イニシアティブを立ち上げ、その下で、首脳は、「グリーン・強靭化」、「コネクティビティ」及び「人づくり」を重点協力3分野として特定した。中央アジア諸国の首脳は、日本のイニシアティブを歓迎した。
(10)日本は、CA+JAD東京イニシアティブを通じ、政府開発援助(ODA)、日本輸出信用機関(ECA)、多国間開発銀行、民間金融部門等からの支援により、グリーン・トランスフォーメーション(GX)及びデジタル・トランスフォーメーション(DX)技術を含むがそれらに限られない日本の技術と知識を活用することで、ビジネス関連人材の育成、中小企業や地場産業の振興を含め、中央アジア諸国による産業の高度化・多様化を支援する意向を表明した。首脳は、互恵的な協力の共創と、日本の積極的な関与による中央アジアと国際社会の連結強化に向けた具体的なプロジェクトの推進のための更なる取組について一致した。
(11)首脳は、公衆衛生の向上のための保健・医療分野における中央アジア諸国への日本の継続的な支援を評価し、医療・保健関連分野の改善について一致した。
(12)首脳は、2025年2月に日本で開催された中央アジア諸国におけるテロ対策を支援するための法の支配に関するワークショップを歓迎した。また、首脳は、法の支配を強化するために意見交換を行う「中央アジア+日本」法務大臣会合を来年日本において開催するという日本の提案を歓迎した。
(13)首脳は、中央アジアにおいて、5年間で総額3兆円というビジネスプロジェクトの目標を設定した。
◆ 重点協力3分野
I. グリーン・強靱化:中央アジアの気候変動対策に整合的な新産業構築及び
産業高度化を含む協力
(14)首脳は、経済成長、エネルギー安全保障及び脱炭素を同時に達成し、多様な道筋を通じてネット・ゼロ/カーボンニュートラルに向けたエネルギー移行の実施を目指すことの重要性について一致した。
(15)首脳は、ネット・ゼロ目標に向けたエネルギートランジションロードマップ策定の進展を歓迎した。この文脈において、首脳は、GX技術を含むエネルギーインフラプロジェクト及び火力発電所の近代化における潜在的な協力を探求することで一致した。
(16)首脳は、気候変動の緩和措置を含む環境分野での具体的な協力の進展を歓迎した。首脳は、環境問題に関する日・中央アジア閣僚級会合を開催することで一致した。また、首脳はグリーン経済と強靭化に関する省庁間会合の開催について一致した。
(17)首脳は、パリ協定の枠組みにおいて提出される温室効果ガス排出量に関するより正確かつ透明性のある報告書の作成に向けた中央アジア諸国における温室効果ガス観測技術衛星(GOSAT)シリーズを利用した中央アジア諸国との協力の進展を歓迎した。
(18)首脳は、二国間クレジット制度(JCM)パートナー国におけるJCMのための合同委員会の開催を歓迎し、官民協力を推奨した。
(19)首脳は、クリーンエネルギーへの移行に不可欠な重要鉱物のサプライチェーンの強化と、鉱物探査及びその他の活動を通じた中央アジアの経済的強靭性強化の双方に寄与する協力の推進について一致した。
(20)首脳は、中央アジア諸国における防災及び都市の強靭性に対する支援に関する進展を歓迎した。この点に関し、首脳は、国連開発計画(UNDP)との連携による「中央アジアにおける災害リスクと気候変動に対する都市の強靭性向上プロジェクト」の実施及び「中央アジア地域全体の災害リスク削減体制強化プロジェクト」に対する日本の支援に関する交換公文への署名を歓迎した。
(21)首脳は、中央アジア地域における地震活動を考慮し、地震及び気候変動の影響を受けたその他の自然災害の脅威からの効果的な市民の保護を確保するために、「仙台防災枠組2015-2030」に沿って、耐震補強による予防措置を講じ、住民に対する早期警報システムを促進し、地域の全ての国の取組を結集する必要性について一致した。この観点から、首脳は、「日本-世界銀行防災共同プログラム」による技術協力を歓迎した。
(22)世界的な食料安全保障危機への対応として、首脳は、植物遺伝資源の保全、農耕地の土壌改良、農業及び畜産のバリューチェーンの強化を含めた強靭で持続可能な農業及び食料システムの構築における協力を促進することで一致し、同分野における日本と中央アジア諸国とのコミュニケーションの強化を歓迎した。
(23)首脳は、IT産業及び先端技術分野におけるあり得る協力について協議し、GXなどの多様な分野における政府間及び企業間の連携や、DXを含むがそれに限られない先進技術を通じた様々な産業の強化のために協力することで一致した。
II. コネクティビティ:中央アジア内外における物流・交通・人的交流の強化及び様々な技術やDXを用いた社会課題への対処
(24)首脳は、豊富な資源及びエネルギー源に恵まれた中央アジアが、グローバルな経済的強靭性を高めるために、国際市場へのアクセスを拡大することの重要性について一致した。
(25)首脳は、政府開発援助(ODA)を官民の様々な主体を巻き込む触媒としてより戦略的に活用することで開発効果全体の最大化を目指す日本の開発協力の取組を歓迎した。この点に関し、首脳らは中央アジア域内外のコネクティビティ強化に向けた「カスピ海ルート」に関する協力の促進・拡大で一致した。
(26)この文脈において、首脳は、世界税関機構(WCO)と連携した税関職員に対する研修の実施を歓迎した。
(27)首脳は、日本と中央アジアとの間の直行便就航に向けた協力の進展を歓迎した。
(28)首脳は、持続可能な観光開発及び地域文化・スポーツイベントへの参加を含めた文化交流の分野における協力の拡大について関心を表明した。
(29)首脳は、自治体間、議会間、学術交流、様々な研修・訓練プログラム、並びに海外協力隊及びシニアボランティアを通じた青少年・草の根レベルの交流を含む人的交流の拡大を歓迎した。
(30)首脳は、平和、安全及び安定を確保するグローバルな交流の効果的な手段として、議会間交流の重要性と可能性の高まりに留意し、中央アジア諸国と日本との間の議会間交流のためのフォーラム設立に向けたトルクメニスタンのイニシアティブと取に留意した。この文脈において、首脳はまた、日本における日本・中央アジア諸国友好議員連盟の取組と貢献を歓迎した。
(31)首脳は、その潜在力を活用して持続可能な経済成長を達成し、社会課題に対応することを目指した、安全・安心で信頼できる人工知能(AI)のためのガバナンス及びエコシステムの開発・支援に向けて協力することで一致した。この目的のため、首脳は日本・中央アジアAI協力パートナーシップの創設を歓迎した。
(32)首脳は、2025年11月に開催された「中央アジア・コーカサス地域デジタルコネクティビティセミナー」における議論を歓迎した。同セミナーでは、デジタルインフラ及びデジタルソリューションの整備・展開を通じて、デジタルコネクティビティが地域の安定及び発展に貢献し得る可能性が検討されており、首脳は、パートナー国との継続的な対話及び協力への期待を表明した。
III. 人づくり:日本と中央アジアのパートナーシップを通じて能力強化された人材による繁栄
(33)首脳は、日本人材開発センター、人材育成奨学計画(JDS)、日本-IMFアジア奨学金プログラム(JISPA)、アジア開発銀行-日本奨学金プログラム(ADB-JSP)や他の関連団体を通して様々な分野で実施されている、日本の経験を生かした既存の人材育成関連プログラムの結果を評価した。首脳は、これらのプログラムを通じた公務員やビジネス関係者の更なる育成に対し期待を表明した。
(34)首脳は、女性のエンパワーメント及び女性・平和・安全保障(WPS)にも寄与する「一村一品(OVOP)」運動に関する協力について一致した。
(35)首脳は、日本と中央アジアの中央アジア側の架け橋として機能することを見据えつつ、中小企業を含む産業人材や留学生を対象とした事業における成果を歓迎した。
(36)首脳は、保健システムの強化に向けた協力を促進することで一致した。この文脈において、首脳は、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)の推進を加速するべく、「UHCナレッジハブ」を通じた協力を含め、協力を検討することで一致した。
(37)上記のイニシアティブを実現するため、首脳は、日本と中央アジア諸国とのビジネス関係強化の重要性を確認し、海外直接投資の受入れに寄与するビジネス環境の整備に尽力することで一致した。
(38)首脳は、国際的な人材の受入れを通じ日本と中央アジアの架け橋となる人材を育成すべく協力することで一致した。
(39)首脳は、中央アジア国民の日本の大学における研修のための奨学金プログラムの進展を歓迎した。
◆ 国際舞台における協力
地域情勢・伝統的な不安定化リスクへの対処
(40)首脳は、世界における現在の極めて困難な地政学的状況を考慮し、中央アジア地域の地政学的重要性が高まっているとの認識を共有するとともに、法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化するためのパートナーとしての相互協力の重要性を強調した。
(41)首脳は、中央アジア諸国首脳諮問会議が、地域の協力深化、友好・信頼・善隣関係の雰囲気強化において果たす役割を高く評価し、地域協力の強化と持続可能な開発促進に向けた域内諸国の取組に対する日本の支援に謝意を表明した。首脳は、協調的アプローチの構築と共同イニシアティブの推進における鍵となるプラットフォームとして、諮問会議の重要性を強調した。
(42)首脳は、全ての国の独立、主権及び領土保全の尊重、武力による威嚇又は武力の行使の禁止を含む国連憲章の目的及び原則を堅持し、人間の尊厳を保護及び強化することの重要性を確認した。首脳は、国連安保理改革の必要性について一致した。
(43)アフガニスタンにおける平和の確立なしには、地域のみならず世界の安全を確保することは不可能であることから、首脳は、アフガニスタン情勢の早期かつ長期的な安定化への関心を確認した。
(44)首脳は、国際社会と共にアフガニスタン国民への支援を継続する用意があることを表明した。首脳は、アフガニスタンの地域プロセスへの統合が、地域の全ての国々の持続可能な発展の重要な要素であることに留意した。
(45)日本、カザフスタン、トルクメニスタン及びウズベキスタンの首脳は、キルギス共和国とタジキスタン共和国が2025年3月13日に国境に関する条約に署名したことを歓迎するとともに、両国政府の建設的な対話により、長年続いてきた国境画定交渉を成功裏に完了させ、この歴史的な条約の署名にまで導いた両国首脳の政治的意志及び両国政府の尽力を称賛した。
(46)首脳は、関連する国連安保理決議に従った朝鮮半島の完全な非核化へのコミットメントを再確認するとともに、それらの完全な履行の必要性を強調し、また、拉致問題を含む国際社会が懸念する人道問題の解決の重要性を強調した。
国際情勢
(47)環境問題や人権問題等のグローバルな課題に関し、首脳は、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するべく、人間の安全保障の理念の下
で国連及びその他のフォーラムにおいて協力することで一致した。
(48)首脳は、日本及び中央アジア諸国における法の支配を一層推進するため、法務・司法分野における対話と協力のパートナーとして、日本と中央アジアとの関係を一層強化することを確認した。
(49)首脳は、国際的な核軍縮・不拡散体制の礎石及び原子力技術の平和的利用を追求するための基礎としての核兵器不拡散条約(NPT)の維持・強化のための協力を継続することで一致しつつ、「核兵器のない世界」の実現に向けたコミットメントを表明した。首脳はまた、原子力安全、核セキュリティ及び保障措置(3S)における最も高い基準の確保が重要であることを確認した。
(50)首脳は、食料安全保障、エネルギー安全保障及び物流の安全を確保することの重要性及び透明で公正な開発金融の重要性を確認した。
(51)経済安全保障に関し、首脳は、強靭なサプライチェーンネットワークを構築及び強化するに当たり、透明性、多様性、安全性、持続可能性及び信頼性が不可欠な原則であることを認識した。また、首脳は、多角的貿易体制においてグローバルな経済的強靭性を強化するために、非市場的政策及び慣行及び経済的威圧への対処について連携及び協力を強化することの重要性を確認した。
結語
(52)首脳は、日本が「中央アジア+日本」対話・首脳会合を主催したことを高く評価した。
(53)首脳は、次回以降の開催国はカザフスタンを起点とする英語アルファベット順とし、第2回首脳会合の日程は外交ルートを通じて決定することを確認した。