[文書名] 経済安全保障協力に関する日英首脳共同宣言
1 日本国及び英国の首相である我々は、日英関係が現存する記憶の中で最も強固であり、経済及び安全保障上の優先事項に関する深い協力を基盤としていることを確認する。この経済安全保障協力に関する共同宣言は、2023年の広島アコードを補完するものであり、重要・新興技術に関する日英フロンティア・テクノロジー・パートナーシップと共に、経済安全保障に関する二国間協力を推進するための戦略的かつ共通のビジョンを示す。
二国間経済安全保障協力
2 我々は、経済版2+2、日英戦略的経済政策・貿易対話、日英財務協議、日英エネルギー・気候対話、デジタルパートナーシップ政務級会合、科学技術協力合同委員会等の二国間対話に加え、産業戦略パートナーシップ及び経済安全保障パートナーシップを通じ、経済安全保障分野における連携を深化する。
二国間貿易及び投資
3 我々は、市場原理及び民間所有の原則と整合する形で投資環境の予測可能性と透明性を高めつつ、戦略的分野における貿易・投資機会を促進するための協力を強化する。このため、我々は、両国を二国間投資及び貿易の有望な地として推進するとともに、戦略的金融機関間のより深い協調を促進する。我々は、投資審査政策及び慣行に関する情報共有の促進を通じ、投資の安全に関する連携を深化する。
官民パートナーシップ
4 我々は、産業界から積極的に意見を求めることを含め、機会を最大化し集団的強靱性を高めるため、官民パートナーシップを強化する。我々は、2025年11月に経団連と英国産業連盟(CBI)が発出した共同声明に体現されているとおり、経済安全保障に関する日英両国のビジネスコミュニティ間の対話の重要性を認識する。我々は、重要技術における、また重要技術を通じた安全かつ強靱な成長を促進する共同イニシアティブ等の取組を通じ、経済安全保障を強化するための日英両国における企業の行動変容を促す方策を共同で検討する。我々は、両国の政策・研究交流をさらに促進し、日本政府が設立する経済安全保障分野に特化したシンクタンクを含め、各国の政策研究機関間の連携を深化する。
5 この文脈において、我々は、産業戦略パートナーシップ分野全体にわたる具体的な協力プロジェクトの発表を歓迎した。これらには洋上風力が含まれており、その中で資金調達、研究開発及びサプライチェーンの発展に関する協力を促進するための「洋上風力産業コンパクト」が立ち上げられた。
エネルギーを含むサプライチェーンの強靱性
6 透明、多様、安全、持続可能で信頼性のあるサプライチェーン及び重要な部門へのアクセスは、我々の経済安全保障と強靱性の中核である。我々は、日本、英国及び戦略的パートナー間の集団的強靱性を強化する取組によって補完しつつ、強靱かつ信頼性のあるサプライチェーンを構築するための協力を更に強化する。中東における継続中の紛争の最中、特にエネルギー・サプライチェーンへの圧力を通じた世界経済への高まるリスクを認識し、エネルギーの貿易の流れの確保、国家石油備蓄制度によるものを含む効果的な緊急対応措置、並びにIEA等の関連国際機関、生産国・消費国間の連携及びグローバル・クリーン・パワー・アライアンス(GCPA)やアジア・エネルギー・資源供給力強靱化パートナーシップ(POWERRAsia)を含むイニシアティブを通じた緊密な国際協力の重要性を改めて確認する。我々は、我々の経済の強靱性を支える重要物資の自由な航行を回復することの重要性を強調し、混乱が脆弱な国々に対して与える甚大な影響を認識する。
7 我々は、グローバル・サプライチェーンを不安定化させ、経済安全保障と強靱性を損なう、経済的威圧及び重要鉱物に対するものを含む恣意的な輸出制限に、深刻な懸念を表明する。我々はまた、輸出管理措置を講じるいかなる場合にも、戦略的サプライチェーン、特に重要鉱物のサプライチェーンを混乱させないよう、輸出管理措置が限定的な品目を対象にする、差別的でなく、国際法及び国際慣行に従ったものであるべきことを改めて確認する。我々は、経済的威圧の事例に関する情報共有及び協議を行い、適切な対応を検討するために協働する。
重要鉱物及び関連サプライチェーン
8 我々は、2023年の「重要鉱物に関する日英協力覚書」に基づく重要鉱物に関する協力を深化する。我々は、G7メンバー国及び同志国との協力を強化することにより、採掘、精錬、加工、リサイクル、備蓄等の分野において重大な依存を低減するためにパートナーと協働する。我々は、関連する公的金融機関その他の機関間のより緊密な関与を促進する。我々は、電池材料及びリサイクルを含む相互に関心があるプロジェクト及び第三国での協力機会について、焦点を絞った対話を推進するように事務方に指示した。
9 我々はさらに、重要技術の保護を通じ、重要鉱物に関するものを含む中流・下流産業の競争力を維持及び強化することの重要性を認識し、技術管理に関する政策措置に関して協調するために二国間で及び同志国と取り組むことにコミットする。
イノベーション
10 重要技術における各国の強みと不可欠性を共同で維持及び発展させることは、両国の強靱性、生産性及び経済成長の推進と、不可欠な製造・技術能力の維持に寄与する。両国はフロンティア・テクノロジー・パートナーシップ(FTP)に示された分野を含む重要・新興技術に関する協力を深化することに引き続きコミットする。
11 このような技術のイノベーションと保護は等しく重要である。このために、我々は、取組を協調させる。例えば、研究セキュリティ及び研究インテグリティに関して、オープンで安全かつ信頼できる研究を支援しつつ、国際的な研究協力におけるリスクを管理するために協働する。
12 我々は、双方向の投資拡大を促進し、デュアルユースを含む新興技術における共同商業化を支援することなどにより、イノベーション、ベンチャーキャピタル及びスタートアップのエコシステム並びに関連機関間の連携を増進するとともに、イノベーション及び商業化に対する潜在的リスクを理解して軽減するための方策を共同で検討する。
13 防衛産業を含む重要・新興技術における協力は、我々の集団的強靱性と経済安全保障の強化において重要な役割を果たす。GCAPを協力促進の触媒としつつ、産業協力・サプライチェーン連携、技術移転の活用及び専門知識の共有を通じて、防衛産業間の協力を更に深化することにコミットする。
ルールに基づく国際経済秩序
14 我々は、世界貿易機関(WTO)の貿易ルールによって規律される、実効性あるルールに基づく多国間貿易体制が、引き続き、我々の経済的繁栄、強靱性及び安全保障の礎となるべきことを再確認する。このため、我々は、WTOが目的に適合し、我々が直面する課題に対応することを確保するべく、有意義かつ必要なWTO改革に向けて取り組む。我々はまた、経済的依存及び脆弱性を深めるおそれのある、有害な過剰生産能力及び市場の歪曲をもたらす非市場的政策及び慣行(NMPPs)の利用について、共通の懸念を再確認する。
15 我々は、環太平洋パートナーシップに関する包括的及び先進的な協定(CPTPP)、日英包括的経済連携協定(CEPA)及びWTOの各規則を遵守するというコミットメントを再確認しつつ、オークランド原則に沿った履行及び継続的な拡大を通じたものを含め、CPTPPが我々の経済の繁栄を引き続き支えることを確保するために協働する。我々は、サプライチェーンの強靱化、経済的威圧及び市場の歪曲につながる慣行の分野を含め、CPTPPを更新し、強化する。
16 我々は、経済安全保障上の課題に対処するための支援の提供、並びに関連法令・制度に関するものを含むベストプラクティス及び知見の共有を行う各国別及び協調したアウトリーチを通じて、インド太平洋地域の国々を含むグローバルサウス諸国の経済的強靱性及び経済安全保障を向上し、ルールに基づく国際経済秩序を維持・強化するために、インド太平洋地域の国々を含むグローバルサウス諸国との協力を一層強化することの重要性を共有する。
2026年6月14日、英国ロンドンにおいて英語により正本二通を作成し署名した。
日本国政府のために
高市早苗
内閣総理大臣
グレートブリテン及び北アイルランド連合王国政府のために
キア・スターマー
首相