データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日英フロンティア・テクノロジー・パートナーシップ

[場所] ロンドン
[年月日] 2026年6月14日
[出典] 外務省
[備考] 和文仮訳
[全文] 

背景

 日英関係は、科学技術分野における強固な連携を礎として、過去最高水準に達している。この機運は、日英戦略的サイバー・パートナーシップ(2026年)、経済安全保障パートナーシップ及び産業戦略パートナーシップ(2025年)、半導体パートナーシップ(2023年)、デジタルパートナーシップ(2022年)といった影響力の大きい協力により加速しており、これらはすべて1994年の科学技術協力協定という永続的な基盤の上に築かれている。

 日英両国は、アジア及び欧州における相互の最も緊密な安全保障上のパートナーとして、共有するイノベーション能力を活用するうえで特別な立ち位置にある。同志国として協働することにより、我々の科学技術関係は、高付加価値の成長と技術的主体性を実現する。この協力は、国際社会の平和、繁栄及び安定の実現を包括的な目標とし、地政学的な不確実性が高まる時代において、我々の経済安全保障及び国家安全保障を強化するために、双方の相補的な強みを梃子にするものである。

 2026年1月、高市日本国内閣総理大臣及びスターマー英国首相は、基盤的な科学技術力を活用し、相互の経済成長と経済的強靱性を強化するべく、先端技術に関する優先課題の進展に向けて連携する意向を表明した。

コミットメント

 本フロンティア・テクノロジー・パートナーシップは、かかるコミットメントを実現するものであり、日本の比類のないハードウェア及び製造力と、英国の世界水準のソフトウェア及び研究におけるリーダーシップを結集し、両国の異なりながらも高い親和性を持つ産業基盤をまたいだ協力を後押しする。これにより、日本の成長戦略及び英国の産業戦略に掲げられた、両国の志を加速及び前進させる。

 我々は、深く、価値ある二国間科学技術関係を基盤として、更なる前進に向けた共通の志を示し、将来にとって最も重要な技術に焦点を当てつつ、安全保障、安全性、信頼及び協力に基づくイノベーション・エコシステムの下、取り組みを進める。

・ 我々は、政府間の協力及び連携のとれた重点的な研究開発(R&D)支援を通じて、これらの重要・新興技術の促進及び保護を図る。

・ 我々は、戦略的技術への民間資本の動員を図り、事業面での協業を促進し、潜在力の高い企業の創出・スケールアップを支援することにより、成長を創出し、競争優位を築く。

・ 我々は、国際標準及び規制に関する多国間の協調を通じて、重要技術の発展の方向性を形作り、我々が共有する価値を擁護する。

協力

 日本及び英国は、それぞれの国の繁栄に不可欠な新興技術を特定した。これらは、既に世界中で経済や社会を根底から揺さぶるような技術である。

 日英両国は、今こそこれらの技術に投資し、志を同じくし相互補完的なイノベーション・エコシステムを持つ国として協働すべき時であると認識する。

 我々は、共通のビジョンと志を有している。

・ 日英は、AIの「使い手」にとどまらず、「創り手」となり、強靱で、安全、安心で信頼できるAIエコシステムを促進し、両国のAI能力を強化する。我々は、両国のAIイノベーション・エコシステム間の連携を促進し、AI for Scienceの力を引き出す共同研究を前進させ、AI向け半導体分野における両国の強みを相互に連携させるための枠組みの検討を進めることにコミットしてきた。我々は、安定的かつ安全なAIサプライチェーンの必要性を改めて確認するとともに、多様なパートナー及びサプライヤーとの協力を通じてAIサプライチェーンの強靱性を高める取組を推進することの重要性を認識する。また、日英両国のAISI(日本のAI Safety Institute及び英国のAI Security Institute)間の協力を、先進的AI測定・評価・科学国際ネットワークを通じてAIの評価に関する科学の発展を推進することで深めていく。更に、広島AIプロセスの一層の推進に取り組むとともに、グローバル・サウスとのAI協力に関する両国の取組の相乗効果を模索し、安全、安心で信頼できるAIエコシステムのグローバルな共創を目指す。我々は、これら優先分野での協力を進めるため、AIに関するハイレベル対話を立ち上げ、2027年のスイスに続くAIサミットの成功裏の開催に向けて日本を支持することで一致した。

・ 我々は、2025年の量子に関する協力覚書を基盤として、量子計算、センシング及び通信を含む、国際競争力があり商業的にスケーラブルかつ実用化可能な量子技術を開発する。日英両国の量子計算能力の連携を強化する。日英の企業は、相互の市場において輸出、投資及び研究開発を実施し、両政府は量子と高性能計算(HPC)の統合に関する共同の長期協力にコミットする。併せて、試験環境(テストベッド)、評価枠組及びシステム統合に関する協力を強化することにより、計算、センシング、通信及びネットワーキングの各領域にわたる量子技術の実用化を前進させる。

・ 我々は、防衛及びデュアルユースの次世代技術における投資の動員及びイノベーション加速に向けた新たなアプローチの検討において、緊密に連携する。

・ 我々は、デュアルユース科学技術に関するより幅広い取組の一環として、新たな生物学的脅威への対処及び抑止の取組を深化させ、不拡散に対する我々の共同コミットメントを強化し、科学技術協力全体の一部としてバイオセキュリティ強化に関する戦略的アプローチを進める。

・ 我々は、日英宇宙協議を通じて、宇宙安全保障、宇宙の持続可能性及び商業開発を含む宇宙分野における共通の優先課題を推進し、JAXA及び英国宇宙庁(UK Space Agency)の下、衛星通信技術を含む産業主導の共同研究の機会を追求し、両国の安全と繁栄を支える重要なネットワークの保護及び強化に資する。

・ 我々は、将来の通信ネットワークが安全かつ強靱であり、社会及び経済のニーズに応えるものとなるよう、先端コネクティビティ技術を形作る。これには、共同研究プログラムの実施及びGlobal Coalition on Telecommunicationsを通じた「6Gのセキュリティ及び強靱性に関する原則」の実装が含まれる。

・ 我々は、東京電力福島第一原子力発電所やセラフィールドなどの原子力発電施設の廃炉作業をより効率的かつ安全に実施するという、世界でも最も複雑な工学的課題の解決に資するため、両国の最先端のロボティクス能力の連携を一層促進する。

・ 我々は、両国の産業界及び研究機関の実務協力を強化することにより、先進的な原子力技術及びフュージョンエネルギーを含む民生原子力分野での日英協力を深化させる。

・ 我々はサイバー脅威への強靱性を高める。日英戦略的サイバー・パートナーシップを通じて長期的なサイバー協力を強化しつつ、両国の相互補完的な能力を活用する産業主導の取組を歓迎し、日英両国が直面するあらゆるサイバー脅威から重要な国家インフラを守る強靱性の向上に向けて、共に取り組む。

・ 我々は、研究セキュリティに関する協力の深化を通じて重要・新興技術を保護するために連携し、これらの技術に伴うリスクを管理する必要性を認識し、オープンで安全かつ信頼できる国際研究協力を支援する。我々は、重要技術の喪失を低減する政策措置に関する情報を共有するために二国間で及び同志国であるパートナーと共に協働することにコミットする。この取組は、日英経済安全保障協力共同宣言を補完するものである。

・ 我々は、グローバルに接続した世界有数の創薬の地としての能力を構築しつつ、医療分野の研究開発を共に推進する。

民間企業関連の発表

本声明と併せ、日本及び英国は、日英産業戦略パートナーシップで特定された量子、AI、サイバーセキュリティ等の重要技術分野において、産業界のパートナーによる共同プロジェクト立上げに関する民間企業の発表を歓迎する。これらの商業的イニシアティブは、フロンティア・テクノロジーに関する我々のパートナーシップが現実の実務面及び経済面にもたらす便益を示すものである。

 本フロンティア・テクノロジー・パートナーシップは、いかなる法的拘束力のある義務を構成又は創設するものではない。本パートナーシップのいかなる規定も、参加者間の既存の合意を変更又は影響することを意図するものではない。協力は、適用される各国法及び国際上の義務の枠組みの下で行われることを意図している。

2026年6月14日にロンドンにて英語にて正本2通を作成し署名した。

日本国政府のために
高市早苗
内閣総理大臣

グレートブリテン及び北アイルランド連合王国政府のために
キア・スターマー
首相