[文書名] 2026年から2030年までの日本国とチェコ共和国の間の戦略的パートナーシップ協力実施のための行動計画(日・チェコ行動計画2026-2030)
日本国政府とチェコ共和国政府は(以後「当時者」と言う。)、
日本国とチェコ共和国との間の二国間関係における著しい進展を認識し、1920年の外交関係樹立から110周年となる2030年に向けて、全ての分野における協力が発展されていくことを強調し、
2003年8月、ヴラジミール・シュピドラ首相と小泉純一郎総理大臣により、プラハにおいて署名された、「日本国とチェコ共和国との間の戦略的パートナーシップの構築に向けた共同声明」を想起し、
2021年から2025年までの日本国とチェコ共和国との間の「協力のための行動計画」における達成について引き続き取り組むことを意図し、
相互に関心のある領域における協力を更に拡大し強化するという決意を再確認し、
2025年1月に発効した「日本国と欧州連合及び欧州連合構成国との間の戦略的パートナーシップ協定」と、2019年2月に発効した「経済上の連携に関する日本国と欧州連合との間の経済連携協定」を想起し、
国際連合憲章と、法の支配に基づく国際秩序の基礎としての国際連合憲章及びその諸原則の重要性を強調し、
特に民主主義、法の支配、人権、基本的自由、持続可能な開発、開かれた透明性のある市場といった共通の価値及び原則に対する強いコミットメントを再確認し、
共に強く豊かになるための、自由で開かれたインド太平洋というビジョンを共有しつつ、欧州大西洋とインド太平洋の安全保障は不可分であることを認識し、
SDGs、防災、気候変動、環境保護、テロリズム、サイバーセキュリティ、エネルギー安全保障、大量破壊兵器の拡散など、相互に関心のある地球規模課題への協力を更に拡大し、強化することを決意し、
2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)を通じて育まれた、両国民間の相互理解とビジネス交流を更に発展し、深化することを決意し、
次の行動を取ることを計画する。
政治・安全保障協力
1. 両当時者は、全てのレベルにおいて政治的対話を増加させる努力を継続する。この目的のために、日本国外務省とチェコ共和国外務省は幹部レベルにおける政務協議を実施することを継続し、二国間訪問及び多国間の枠組みを利用し、政務協議を強化しつつ、外相会談を実施するために継続して努力する。
2. 両当時者は、高官を含む様々な実務者の間の交流と、2017年7月27日にプラハにおいて、日本国防衛省とチェコ共和国国防省との間で署名された、防衛協力・交流に関する覚書を基礎にした、訓練、演習及びその他の活動への参加を通じて防衛及び防衛産業協力を発展することに努め、2024年11月8日にプラハにおいて、日本国防衛省とチェコ共和国国防省との間で署名された、防衛産業協力に関する覚書に基づいた特定の成果を追求する。
3. 両当時者は、北大西洋条約機構(NATO)と日本国との間の、国別適合パートナーシップ計画(ITPP)及びNATOとインド太平洋地域のパートナー間(IP4)の旗艦事業を含めた、より緊密な協力を推進する。
4. 両当時者は、日本国国家サイバー統括室とチェコ共和国国家サイバー情報セキュリティ庁との間の協力覚書に基づき、サイバーセキュリティ分野において、協力を促進し、相互の努力及び技術的・人的資源を集中させることを目指す。
5. 両者は、サイバーセキュリティ、サイバー防衛及びサイバー犯罪を含む、国際的なサイバー問題で引き続き協力し、二国間協議、実務経験の交流及びベストプラクティスの共有を通じて、これらの分野での連携を強化する。
6. 両当時者は、サイバー空間における責任ある国家行動の規範を促進する。両者は、既存の国際法の遵守の推進、必要に応じた新たな枠組みの策定、デジタル分野における紛争や誤解を防ぐ信頼醸成の手法への支援を含む外交的努力に関与することで、安全で安定した平和的なサイバー空間とデジタル環境の醸成を目指す。
7. 両当時者はヴィシェグラード・グループ+日本(V4+日本)の枠組みでの協力をより詳細に検討する。
8. 両当時者は、国際連合の枠組みの中で協力し、その他の国際機関や多国間フォーラムにおける相互協力を促進する。
9. 両当時者は、市民社会及びメディア組織の活性化並びに民主主義、法の支配及び関連課題の推進を含む人権の促進と保護に協力し、国際人権メカニズムにおける協力とそのための支援を強化する。
10. 両当時者は、UN80イニシアティブの枠組みにおいて、またその枠組みを越えて、実効的な多国間主義に向け、国連システム全体に渡る包括的な改革に協力するとともに、国連安保理改革の緊急の必要性についての共通認識に基づき、常任及び非常任理事国議席カテゴリーの双方拡大を含む、国連安保理改革に向けた具体的な行動を取る。
経済・産業分野における協力
11. 両当時者は、日・EU経済連携協定の着実かつ効果的な実施を歓迎し、相互の関心、ビジネス協力、経済安全保障及び強靭性、輸出管理並びにマクロ経済政策に関する対話の更なる促進を見据え、貿易や投資を含む経済協力に関わる省庁とその他の公的・民間機関との定期的な連絡と協力を促進する。
12. 両当時者は、2026年3月に実質合意に至った新たな租税条約の早期の署名及び締結に向けた努力を含め、貿易及び投資の更なる拡大に向けたビジネス環境の向上のために協力する。
13. 両当時者は、2025年7月15日に東京において日本国経済産業省とチェコ共和国産業貿易省との間で署名された、貿易及び投資促進のための協力枠組設置に関する覚書に基づき、貿易、投資、産業、エネルギー経済安全保障と先端技術の領域における機会を拡大するために、定期的な協議を通じて、両者間の経済協力の更なる強化について共同で調整する。
14. 両当時者は、技術的リーダーシップと不可欠な能力の維持・保護の重要性を認識し、重要技術の経済安全保障面での協力を強化する。この目的のために、両者は、技術移転リスクの対象となる可能性のある重要技術について必要に応じて意見交換を行い、技術移転リスクの評価、緩和策、対応の調整について協働する。両者はまた、関連する民間セクターのステークホルダーや技術所有者との構造的関与を促進し、それぞれの法律と規制に従って、安全保障上の利益にリスクをもたらす可能性のあるアクターへの、重要技術の意図しない流出を防ぐことを目指す。
15. 両当時者は、エネルギー(原子力を含む)、ナノテクノロジー、先端材料、水素・アンモニア技術、量子技術、ICT及び半導体開発・生産の分野における協力を奨励する。
16. 両当時者は、二国間ビジネスフォーラムやミッション、さらに見本市や会議への参加を含め、民間セクター間の更なる協力を支援し、二国間の経済、貿易、投資における協力を促進するために望ましい環境を作る。
17. 両当時者は、イノベーションセンター、インキュベーター、アクセラレーター、中小企業(SMEs)、スタートアップ間の連携を含む、両国のイノベーションエコシステム間のより緊密な協力を奨励する。
18. 両当時者は、引き続き民間航空分野での協力の強化に努め、航空業務に関する日本国とチェコ共和国との間の協定に基づき、人的交流を促進し、日本国とチェコ共和国の間での直行便の開設を奨励する。両者は、ドローンを含む航空の先端技術における協力、並びに、ドローン運用者向けの安全な航行、UAV、U-スペース、空域管理、試験及びアクセスサービスのための規制枠組みに関する実務経験や知見の交換を奨励する。
19. 両当時者は、獣医分野を含む農業におけるコミュニケーションを強化する機会について検討する。
20. 両当時者は、鉄道、都市交通、スマートでクリーンなモビリティソリューションを含む交通・モビリティにおける協力及び、二国間の経済・産業・研究プロジェクトにおける協力の強化を支援する。多国間の文脈において、両者は、2027年の国際交通フォーラム・サミットのチェコ共和国の議長職と、チェコの議長国期間における副議長国としての日本の貢献、及びチェコ共和国の支援を受けた2029年の日本の議長職を歓迎する。
経済安全保障分野における協力
21. 両当時者は、信頼できるパートナー間で、重要なセクターにおいて、透明、多様、安全、持続可能かつ信頼性の高いサプライチェーンを構築・強化するための協力を深める。この点に関して、両者は、サプライチェーンの混乱を引き起こす可能性のある恣意的な輸出規制を含む、経済的威圧や非市場的な政策・慣行(NMPPs)の適用に対して、深刻な懸念を表明する。
科学技術・イノベーション分野における協力
22. 両当時者は、科学技術・イノベーション分野における協力的活動のプラットフォームとして、日・チェコ科学技術協力協議の会合を引き続き実施する。このプラットフォームは、研究、開発、イノベーション(R&D&I)における協力強化のための重要なフォーラムであり続けている。
23. 両当時者は、ICT、モノのインターネット、量子技術、レーザー技術及びレーザーを基盤とする研究(ELIERIC施設を用いる)分野を含むがそれらに限定されない両政府間の優先事項を支援する研究及び技術開発における協力を促進するための更なる機会を探る。
24. 両当時者は、宇宙活動分野における制度・研究に係る協力を支援する。
25. 両当時者は、国際的な研究協力の開かれた性質が、自らの技術的、経済的、地政学的及び軍事的な力を増大させる意図を持った外国勢力によって悪用され、誤用されうることを認識する。それゆえ、開かれた協力と研究インテグリティを保護するために強力な取組が必要である。この点で、両者は、研究セキュリティを強化するための経験とベストプラクティスを交換することを促進する。
SDGsと防災を含むグローバルな問題における協力、気候変動と環境保全・保護
26. 両当時者は、SDGsへのコミットメントを想起し、持続可能な開発についてのハイレベル政治フォーラム2025において7月に提起された、自発的国家レビュー(VNRs)について、日本のものを含め歓迎する。
27. 両当時者は、仙台防災枠組2015-2030に沿った、国際的な防災協力の加速についてのコミットメントを再確認する。両者は、防災及び「より良い復興」のための災害に備えるアプローチの重要な役割と、ヒト、モノ、インフラへの投資の必要性を強調する。
28. 両当時者は、環境保全・保護の領域における協力を促進し、環境にやさしい技術の情報を共有する。特に、両者は、サーキュラーエコノミー、廃棄物管理、水資源管理、気候変動、自然と生物多様性の保全・保護、又は持続可能な開発といった分野における相互の協力の可能性を認識する。
29. 両当時者は、これらの分野における専門的・科学的ノウハウを交換するために努力する。
30. 両当時者は、環境に関する多国間の合意の範囲内及び民間セクターにおける二国間での協同を促進する。
文化、教育、人的交流と観光の促進
31. 両者当時は、文化交流イベントを開催し、観光を奨励する努力を引き続き行う。
32. 両当時者は、日本国文部科学省とチェコ共和国教育・青少年・スポーツ省との間における経験・実務交流を促進するとともに、両省が実施する奨学金制度の枠組みにおける交流の推進及び可能な場合にはその一層の拡充を目指す。また、共同研究プロジェクトの今後の発展を促進するため、情報や連絡先の共有を通じて、両国の自律的な高等教育機関間における学生及び研究者の直接交流を促進し、さらにシンクタンク間の協力を促進する。
33. 両当時者は、ワーキング・ホリデー・プログラムを最大限活用することに努め、両国間での青少年の往来を促進するという観点から、エラスムス・プラス・プログラムが促進する交流について検討することへの関心を表明する。
34. 両当時者は、高等教育機関間の既存の協力関係が高い水準にあることを相互に高く評価するとともに、大学間の直接的な交流が、質の高い研究の推進及び交換留学生に対する教育の質の向上に寄与していることに留意する。
35. 両当時者は、料理芸術、無形文化遺産、スポーツ、芸術の分野で、関連機関の協力の下、祭典やイベントといった地域レベルのパートナーシッププログラム及び文化・言語交流活動への参加を奨励する。
36. 両当時者は、観光に関する環境やインフラの質を向上させるために、観光地プロモーション、専門教育・技術、マネージメント、持続可能性の分野におけるベストプラクティスの共有や業界フェアへの相互参加を含む、国家、地域、自治体レベルの関連する組織間の協力を支援し、それによって両者におけるオーバーツーリズムとその悪影響を防止するバランスのとれた観光を促進する。
37. 両当時者は、人的交流、青少年交流、文化・産業協力の促進のために努力し、また、両当時者の都市や地域によって組織されたそのほかの交流プロジェクトを賞賛する。
地域・グローバル協力
38. 両当時者は、EUにおけるインド太平洋協力戦略、日本国とチェコ共和国それぞれの国家戦略及び(EUの)グローバル・ゲートウェイ戦略の履行の一環としての交流や実務協力を支援する。効果的な多国間主義の促進、外国による情報操作や干渉に対する防護、航行の自由、サイバーセキュリティ、経済的強靭性、サプライチェーンの安全保障、宇宙・デジタルコネクティビティの分野における共同活動は、特に重点を置いて検討・考慮される。グローバル・ゲートウェイ戦略のもと、第三国で行われるものを含む共同の連結性プロジェクトについても、検討されるべきである。
39. 両当時者は、ロシアの侵略に対するウクライナの戦いへの支持を改めて述べるとともに、国際情勢に対してウクライナの情勢が与える影響について引き続き意見交換を行う。この文脈において、両者はロシアと北朝鮮との間の軍事協力が増大していることを非難する。両当時者は、ウクライナ並びにその領土一体性、主権、独立及び復興のための多面的な支援について協力する。グローバルな観点において、両当時者は、国際法と国連憲章の原則の尊重を促進する。
40. 両当時者は、能力開発、都市交通システムと関連先端技術を含む交通、スマートシティ、インフラ、人道支援、住宅、エネルギー、ヘルスケア及び医療用品、地雷除去、その他関連分野における、ウクライナの復興と再建に協力する。両当時者はこの分野での好事例や経験を共有し、ウクライナの復旧と復興のためのプロジェクトの特定と実施への積極的な関与のために協力する。両当時者は、研究チーム、学術界及び民間セクターと更に協力し、ウクライナの復興に役割を果たす。
41. 両当時者は、国連海洋法条約(UNCLOS)に反映されている国際法に従って、南シナ海において航行及び上空飛行の自由を堅持し並びに海洋に関する紛争の平和的解決を追求することの重要性を再確認する。両当時者は、深刻な懸念を認識しつつ、力又は威圧によるあらゆる一方的な現状変更の試みを容認してはならないという理解に基づき、東シナ海及び南シナ海の状況について引き続き意見交換を行う。両当時者は、台湾海峡の平和と安定の重要性を再確認し、対話を通じた両岸問題の平和的解決を促す。
42. 両当時者は、朝鮮半島情勢について引き続き意見交換を行う。両当時者は、北朝鮮による弾道ミサイルの実験と発射について深刻な懸念を表明する。両当時者は、関連する全ての国連安保理決議を完全に遵守することの重要性を改めて述べる。両当時者は、完全で、検証可能かつ不可逆的な北朝鮮の非核化が平和的方法で実施されるための国際的な努力を支援する。両当時者は、拉致問題の即時解決の重要性を強調する。
この行動計画のいかなる内容も、法的拘束力のあるコミットメントとみなされない。2026年9月1日に、ブラチスラバで、英語による本文二通に署名した。
2026年9月1日に、ブラチスラバで、英語による本文二通に署名した。
日本国政府のために
茂木敏充
日本国外務大臣
チェコ共和国政府のために
ペトル・マチンカ
チェコ共和国副首相兼外務大臣