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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 朴・池田会談(11.11)内容に関する韓国政府発表

[場所] 
[年月日] 1961年12月7日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),395頁.大韓民國外務部編「大韓民国外交年表 附主要文献1948〜1961」660−1頁.
[備考] 翻訳 玄大松
[全文]

 朴正煕議長と池田勇人首相の会談内容

第一に,去る11月14日の日本自民党の「日韓問題懇談会」および12月4日の外交委員会で,日本外務省の伊関アジア局長が,朴議長と池田首相の会談で韓国側は,対日財産請求権に関して,個人の請求権のみを要求することに合意したかのごとく発言ないし証言したと,外信は伝えているが,もし仮りにこれが事実であれば,これは同会談の内容を完全に歪曲して解釈したものといわざるを得ない。

朴議長は同会談において,韓国側の請求権は賠償的な性格を有するものではなく,全てが確実な法的根拠によるものである旨を明白に指摘し,その内容について地金,地銀,郵便貯金,被徴用者,未収金及び年金等を例として説明したのである。特に以上の例の中で指摘された地金と地銀の返還だけ取り上げても,それが個人の請求権に属さない性格のものであるということは明白である。こうした内容は,同首脳会談後,迎賓館で開かれた朴議長の内外新聞記者会見でもくり返し言明されたことでもある。

第二に,日本側は数次にわたって,朴議長と池田首相との会談で韓国側が日本側から無償援助の代わりに長期低利借款を受け入れることにしたと報道しているが,これは事実とは異なる。朴議長は,財産請求権問題と経済協力問題はあくまでも別個の性格をもつものとして,当然のことながら分離して議論されなければならないという点を強調したのであり,財産請求権問題が両国間で円満に解決した後に,必要であれば長期低利借款等を受け入れることを考慮すべきだといっただけであるのに,これが誤伝され、報道されたものと思われる。韓国政府は前記の朴議長が闡明した原則をずっと終始一貫して固守してきたし,また今後もこうした立場には変動はないであろう。

第三に,前述の首脳会談で,池田首相が現在東京で進行されている第六次韓日会談で実務的な討議が一段落した後,両国間の政治的折衝のために日本政界の指導者を韓国に招請していただきたいとの意思を表明したので,朴議長は今後必要であれば,そうしてもよいと回答をしただけである。ところが,最近の日本の各新聞は,某日本指導者は韓国政府が招請しても訪韓しないであろう云々と,報道したのである。わが政府は同氏を事実上いまだ招請したこともないのに,訪韓するとかしないとかいう報道が出てくることは理解に苦しむことである。

第四に,去る12月4日,日本の衆議院外交委員会で,伊関アジア局長が,日本は韓国の請求権が原則的に38度線以南に局限されるものと考えていると証言したと外信は報道しているが,仮りにもしこれが事実であるならばこれは大韓民国政府が国際連合及び世界の絶対多数の『国家に依って,韓半島において唯一の合法政府』と承認された事実と,韓国政府が自国民に代わって請求権を主張することができるという厳然たる国際法上の事実を無視するものといわざるを得ない。