データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日韓貿易会議に関する共同コミュニケ

[場所] 
[年月日] 1965年3月27日
[出典] 外交青書9号,28−29頁.
[備考] 
[全文]

一,一九六五年二月椎名日本国外務大臣が韓国を訪問した際李韓国外務部長官との間にその開催が合意された日韓貿易会議は同年三月十一日より二十七日まで東京において開かれた。開会および閉会に当ってはそれぞれ椎名外務大臣および李長官が出席した。

二,会議は両国関係政府機関の代表の間で終始極めて友好的な雰囲気の中で行なわれた。日本側よりは牛場外務審議官以下関係各省幹部,韓国側よりは金駐日代表部代表以下関係各省幹部が出席した。

三,両国代表は戦後日韓貿易が大勢として増加の一途をたどっており,特に最近数年間においては顕著な拡大が見られ,その結果両国の対外貿易全体に占める比重も極めて大きいものとなっていることを歓迎した。

 しかしながら,韓国側代表は,最近数年間韓国側において毎年五千万ドルないし一億ドル程度の輸入超過を示していることに日本側の注意を喚起し,このような逆調状況が恒久化すれば両国間貿易の健全な発展は期し難い旨強調した。

 これに対し,日本側代表は日韓貿易のバランスが一九六四年においては著しい改善を見たことを指摘するとともに,この傾向は今後の両国間貿易のより健全な発展を約束するものと考える旨述べた。

 両国代表は,日韓貿易の均衡の問題は,韓国一次産品の対日輸出の増大ももとより重要ではあるが,それだけでは完全な解決が期待されず,韓国における保税加工輸出および開発輸出に関する協力などによって韓国の輸出力を増強し,長期的に貿易規模拡大の過程において均衡化を計って行くべきものであって至近の距離にある日韓両国間においては,相互に善隣友好の精神にもとづいて相協力すれば極めて大きい貿易発展の可能性があることにつき意見が一致した。

四,日本側代表は,韓国の一次産品特に農水産物に対する輸入自由化の問題は社会的,政治的考慮からも慎重に対処する要がある旨述べる一方その輸入増大については今後ともできるだけの努力を注ぐ旨表明し,両国代表はのり,魚介類,畜産物,米,葉タバコ,無煙炭,鱗状黒鉛及び寒天等について韓国側の諸要望につき熱心な討議を加え,これら要望を実現するための諸措置を可能なものより逐次講ずることに意見の一致を見た。

五,両国代表は韓国における現行の保税加工輸出制度は一次産品の輸出増大問題に劣らず,韓国の輸出振興上重要な意義をもっていることを認識し,そのための日韓協力については今後更に検討を続けるべきも,現在なしうるものは具体的事例に則しつつ之を行なうことに合意した。

六,両国の代表は日韓貿易の不均衡是正は双方が拡大均衡の過程において長期的に不断の努力を続けることが必要であるとの認識の下に韓国の一次産品の開発に限らず工業化の分野においても韓国の輸出力の増大のため緊密に努力すべきことに意見の一致を見た。日本側代表は韓国一次産品開発の可能性を調査するため調査団派遣を考慮する旨約した。製品,半製品の輸出を目的とした韓国の工業化努力に対しては日本側代表より政府の技術協力機関を通ずる技術指導者の派遣又は韓国の技術研修生の受け入れも積極的に考慮したい旨述べた。

七,さきに両国政府間でイニシアルされた基本関係条約の第五条にいう条約又は協定が締結されるまでの間,両国間通商貿易関係を律する暫定取極締結の問題に関して,両国代表は,現在両国間に事実上適用されている貿易協定を終了させ,これに代る新たな行政取極を締結するため今後継続して交渉することに合意した。

 金融協定については両国代表はこれを終了させること並びに右終了に伴なう両国間清算勘定廃止のために必要な取極めを速かに取結ぶことに合意した。

 また,暫定海運協定についても新たな協定のとりまとめにつき,できるだけ早い機会に討議することに合意した。

八,両国代表は,また,両国実業人等の相互間往来,相手国における滞在等に関し,両国政府が相互にできる限りの便宜を与え合うことが両国間経済提携の一層の強化のため是非とも必要であるとの認識の下に,速かにこの必要を充足させるべく事実上可能な措置をとることに合意した。

九,その他,日本からの漁船,漁具の韓国への輸出問題及び両国間密貿易抑止問題についても討議が行なわれ,両国代表は,前者の問題については今後は双方にとって満足のいく解決の見通しを得たことを歓迎し,また,後者の問題については,この目的達成のため両国政府が密接な協力を行なうことに合意した。

十,両国代表は,最後に,本年中の適当な時機にソウルにおいて再び貿易会議を開催することに合意した。