データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日韓基本条約の関係諸協定,漁業協定(日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定),合意議事録(日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定についての合意された議事録)

[場所] 東京
[年月日] 1965年6月22日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),578ー580頁.外務省条約局「条約集・昭和40年(二国間条約)」.
[備考] 
[全文]

 日本国政府代表及び大韓民国政府代表は,本日署名された日本国と大韓民国との間の漁業に関する協定に関して次の了解に到達した。

1 証明書及び標識に関し,

(a)両国政府は,証明書及び標識が,港内における場合を除き,海上において一の漁船から他の漁船に引き渡されることがないように行政指導を行なう。

(b)一方の国の政府は,自国の出漁漁船の正午位置報告に基づき漁業別出漁状況を月別に集計して毎年少なくとも四回他方の国の政府に通報する。

2 年間総漁獲基準量に関し,

(a)共同規制水域内における底びき網漁業,まき網漁業及び六十トン以上の漁船によるさばつり漁業による年間総漁獲基準量は,十五万トン(上下十パーセントの変動がありうる。)とし,日本国については,この十五万トンの内訳は,五十トン未満の漁船による底びき網漁業については一万トン,五十トン以上の漁船による底びき網漁業については三万トン及びまき網漁業と六十トン以上の漁船によるさばつり漁業については十一万トンであるものとする。年間総漁獲基準量は,最高出漁隻数又は統数によつて操業を規制するに当たり指標となる数量であるものとする。いずれの国の政府も,共同規制水域内における底びき網漁業,まき網漁業及び六十トン以上の漁船によるさばつり漁業による年間総漁獲量が十五万トンを超過すると認める場合には,漁期中においても年間総漁獲量を十六万五千トン以下にとどめるため出漁隻数又は統数を抑制するよう行政指導を行なう。

(b)いずれの国の政府も,暫定的漁業規制措置の適用の対象となる漁業に従事する自国の漁船が共同規制水域内において漁獲した漁獲物を水揚げすべき港を指定する。

(c)いずれの国の政府も,自国の出漁漁船による共同規制水域内におけるその漁獲量の報告及び水揚港における調査を通じ,漁獲量を月別に集計し,その結果を毎年少なくとも四回他方の国の政府に通報する。

(d)いずれの国の政府も,他方の国の政府の公務員が3(c)の視察を行なう際に,当該他方の国の政府の要請があつたときは,その公務員に対し,暫定的漁業規制措置の適用の対象となつている自国の漁船による漁獲物の水揚状況を視察させるための便宜をもあわせてできる限り与え,また,漁獲量の報告及び集計の状況についてできる限り説明が行なわれるよう取り計らう。

3 暫定的漁業規制措置に関する取締り及び違反に関し,

(a)一方の国の監視船上にある権限を有する公務員は,他方の国の漁船が現に暫定的漁業規制措置に明らかに違反していると信ずるに足りる相当の理由のある事実を発見したときは,直ちにこれをその漁船の属する国の監視船上にある権限を有する公務員に通報することができる。当該他方の国の政府は,当該漁船の取締り及びこれに対する管轄権の行使に当たつて,その通報を尊重することとし,その結果執られた措置を当該一方の国の政府に対し通報する。

(b)両国の監視船は,暫定的漁業規制措置に関してそれぞれ自国の漁船に対して行なう取締りの実施に当たり,その取締りを円満かつ効果的に行なうため,必要に応じ,あらかじめ両国の関係当局間において協議されたところに従い,相互に連携して巡視し,かつ,緊密な連絡を保持することができる。

(c)いずれの国の政府も,他方の国の政府の要請があつたときは,暫定的漁業規制措置に関し,自国内における取締りの実施状況を視察させるための便宜を,このために特に権限を与えられた他方の国の政府の公務員に対し,できる限り与える。

(d)いずれの国の政府も,他方の国の政府の要請があり,かつ,これを適当と認めるときは,暫定的漁業規制措置に関して自国がその漁船に対して行なう取締りの実施に当たり,その実情の視察のため,当該他方の国の政府の公務員をもつぱら漁業の取締りに従事する自国の監視船に乗船させるための便宜を相互にできる限り与える。

4 日韓漁業共同委員会に関し,

 日韓漁業共同委員会は,その常設の事務局の事務局長を,毎年の定例年次会議の閉会前に,翌年の定例年次会議が開催される締約国の国別委員部の委員の中から選任する。事務局長の任期は,一年とする。事務局長は,自国の関係当局の補佐を受け,及び,必要に応じ,自国に駐在する他方の締約国の権限を有する公務員の援助を受けて,委員会の会議の開催準備を含め,その他の必要な事務局の事務を遂行する。

5 仲裁委員会に関し,

 協定第九条3にいう両国政府のそれぞれが選定する国及びそれらの国の政府が協議により決定する第三国は,日本国及び大韓民国の双方と外交関係を有する国のうちから選ばれるものとする。

6 監視船間の出漁状況の情報提供に関し,

 一方の国の監視船は,共同規制水域内における漁船の出漁状況につき必要と認めるときは,他方の国の監視船に対して必要な情報を提供するよう要請することができ,当該他方の国の監視船は,できる限りこの要請に応ずるものとする。

7 沿岸漁業に関し,

両国政府は,沿岸漁業(底びき網漁業,まき網漁業及び六十トン以上の漁船によるさばつり漁業を除く。)の操業の実態に関して情報の交換を行ない,漁場秩序を維持するため必要なときは,相互に協議を行なう。

8 国内漁業禁止水域等の相互尊重に関し,

(a)日本国政府が現在設定している底びき網漁業及びまき網漁業についての漁業禁止水域並びに底びき網漁業についての東経百二十八度,東経百二十八度三十分,北緯三十三度九分十五秒及び北緯二十五度の各線で囲まれた水域と大韓民国政府が現在設定している底びき網漁業及びトロール漁業についての漁業禁止水域とに関し,両国政府は,それぞれ相手国のこれらの水域において当該漁業に自国の漁船が従事しないようにするため必要な措置を執る。

(b)大韓民国政府が前記の大韓民国の漁業禁止水域内の黄海の部分において大韓民国の五十トン未満の漁船による底びき網漁業及び同水域内の日本海の部分において大韓民国のえび底びき網漁業に関して実施している制度は,例外的に認められる。

(c)一方の国の監視船上にある権限を有する公務員が(a)に掲げるその国の水域において他方の国の漁船が操業していることを発見した場合には,その事実につき当該漁船の注意を喚起するとともに,すみやかにその旨を当該他方の国の監視船上にある権限を有する公務員に通報することができる。当該他方の国の政府は,当該漁船の取締り及びこれに対する管轄権の行使に当たつて,その通報を尊重することとし,その結果執られた措置を当該一方の国の政府に対し通報する。

9 無害通航に関し,

 領海及び漁業に関する水域における無害通航(漁船は漁具を格納した場合に限る。)は,国際法規によるものであることが確認される。

10 海難救助及び緊急避難に関し,

 両国政府は,両国の漁船の海難救助及び緊急避難に関し,できる限りすみやかに取極を行なうものとする。その取極が両国政府の間で行なわれる前においても,両国政府は,両国の漁船の海難救助及び緊急避難について国際慣行に従つてできる限り適切な救助及び保護を与えるものとする。

 千九百六十五年六月二十二日に東京で

           E・S・

           T・W・L・