[文書名] 日韓基本条約の関係諸協定,日韓請求権並びに経済協力協定(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定),議定書,第一議定書
財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(以下「協定」という。)に署名するに当たり、下名は、各自の政府から正当な委任を受け、協定第一条1(a)の規定の実施に関し、協定の不可分の一部と認められる次の規定を協定した。
第一条
日本国が供与する生産物及び役務を定める年度実施計画(以下「実施計画」という。)は、大韓民国政府により作成され、両締約国政府間の協議により決定されるものとする。
第二条
1 日本国が供与する生産物は、資本財及び両政府が合意するその他の生産物とする。
2 日本国の生産物及び日本人の役務の供与は、日本国と大韓民国との間の通常の貿易が著しく阻害されないように、かつ、外国為替上の追加の負担が日本国に課されないように、実施されるものとする。
第三条
1 第五条1の使節団又は大韓民国政府の認可を受けた者は、実施計画に従い生産物及び役務を取得するため、日本国民又はその支配する日本国の法人と直接に契約を締結するものとする。
2 1の契約(その変更を含む。)は、(i)協定第一条1(a)及びこの議定書の規定、(ii)両政府が協定第一条1(a)及びこの議定書の実施のため行なう取極の規定並びに(iii)その時に適用される実施計画に合致しなければならない。これらの契約は、前記の基準に合致するものであるかどうかについて認証を得るため、日本国政府に送付されるものとする。この認証は、原則として十四日以内に行なわれるものとする。定められた期間内に認証が得られなかつたときは、その契約は、協定第一条2の合同委員会に付託され、合同委員会の勧告に従つて処理されるものとする。その勧告は、合同委員会がその契約を受領した後三十日以内に行なわれるものとする。この項に定めるところに従つて認証を得た契約は、以下「契約」という。
3 すべての契約は、その契約から又はこれに関連して生ずる紛争が一方の契約当事者の要請により、両政府間で行なわれることがある取極に従つて商事仲裁委員会に解決のため付託される旨の規定を含まなければならない。両政府は、正当になされたすべての仲裁判断を最終的なものとし、かつ、執行することができるようにするため必要な措置を執るものとする。
4 1の規定にかかわらず、生産物及び役務の供与は、契約によることができないと認められる場合は、契約なしで、両政府間の合意により行なうことができる。
第四条
1 日本国政府は、第五条1の使節団又は大韓民国政府の認可を受けた者が契約により負う債務並びに前条4の規定による生産物及び役務の供与の費用に充てるための支払を、第七条の規定に基づいて定める手続によつて、行なうものとする。この支払は、日本円で行なうものとする。
2 日本国は、1の規定に基づく支払を行なうことにより、その支払を行なつた時に、その支払に係る生産物及び役務を、協定第一条1(a)の規定に従い、大韓民国に供与したものとみなされる。
第五条
1 大韓民国政府は、同政府の使節団(以下「使節団」という。)を日本国内に設置する。
2 使節団は、協定第一条1(a)及びこの議定書の実施を任務とし、その任務には次の事項を含むものとする。
(a)大韓民国政府が作成した実施計画の日{前1文字ママ日本国政府への提出
(b)大韓民国政府のための契約の締結及び実施
(c)(b)の契約及び大韓民国政府の認可を受けた者の締結する契約の認証を受けるための日本国政府への送付
3 使節団の任務の効果的な遂行のため必要であり、かつ、もつぱらその目的に使用される使節団の日本国における事務所は、東京及び両政府間で合意することがある他の場所に設置する。
4 使節団の事務所の構内及び記録は、不可侵とする。使節団は、暗号を使用することができる。使節団に属し、かつ、直接その任務の遂行のため使用される不動産は、不動産取得税及び固定資産税を免除される。使節団の任務の遂行から生ずることがある使節団の所得は、日本国における課税を免除される。使節団が公用のため輸入する財産は、関税その他輸入について又は輸入に関連して課される課徴金を免除される。
5 使節団は、他の外国使節団に通常与えられる行政上の援助で使節団の任務の効果的な遂行のため必要とされるものを日本国政府から与えられるものとする。
6 大韓民国の国民である使節団の長、使節団の上級職員二人及び3の規定に従つて設置される事務所の長は、国際法及び国際慣習に基づいて一般的に認められる外交上の特権及び免除を与えられる。使節団の任務の効果的な遂行のため必要があると認められたときは、前記の上級職員の数は、両政府間の合意により増加することができる。
7 大韓民国の国民であり、かつ、通常日本国内に居住していない使節団のその他の職員は、自己の職務の遂行について受ける報酬に対する日本国における課税を免除され、かつ、日本国の法令の定めるところにより、自用の財産に対する関税その他輸入について又は輸入に関連して課される課徴金を免除される。
8 契約から若しくはこれに関連して生ずる紛争が仲裁により解決されなかつたとき、又は当該仲裁判断が履行されなかつたとき、その問題は、最後の解決手段として、契約地の管轄裁判所に提起することができる。この場合において、必要とされる訴訟手続上の目的のためにのみ、使節団の法務部長の職にある者は、2(b)の契約に関し訴え、又は訴えられることができるものとし、そのために使節団における自己の事務所において訴状その他の訴訟書類の送達を受けることができるものとする。ただし、訴訟費用の担保を供する義務を免除される。使節団は、4及び6に定めるところにより不可侵及び免除を与えられてはいるが、前記の場合において管轄裁判所が行なつた最終の裁判を、使節団を拘束するものとして受諾するものとする。
9 最終の裁判の執行に当たり、使節団に属し、かつ、その任務の遂行のため使用される土地及び建物並びにその中にある動産は、いかなる場合にも強制執行を受けることはない。
第六条
1 両政府は、生産物及び役務の供与が円滑かつ効果的に行なわれるため必要な措置を執るものとする。
2 生産物又は役務の供与に関連して大韓民国内において必要とされる日本国民は、その作業の遂行のため大韓民国への入国、同国からの出国及び同国における滞在に必要な便宜を与えられるものとする。
3 日本国の国民及び法人は、生産物又は役務の供与から生ずる所得につき、大韓民国における課税を免除される。
4 日本国により供与される生産物は、大韓民国の領域から再輸出されてはならない。
5 いずれの一方の締約国の政府も、日本国により供与される生産物の運送及び保険に関し、公正かつ自由な競争を妨げることがある他方の締約国の国民及び法人に対する差別的措置を、直接又は間接に執らないものとする。
6 この条の規定は、協定第一条(b)に定める貸付けによる生産物及び役務の調達についても適用されるものとする。
第七条
この議定書の実施に関する手続その他の細目は、両政府間で協議により合意するものとする。
以上の証拠として、下名は、この議定書に署名した。
千九百六十五年六月二十二日に東京で、ひとしく正文である日本語及び韓国語により本書二通を作成した。
日本国のために
椎名悦三郎
高杉晋一
大韓民国のために
李 東 元
金 東 祚