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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日韓条約に関する小酒井義男議員の参議院本会議における質疑

[場所] 東京
[年月日] 1965年10月16日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),622ー629頁.衆議院・参議院および各委員会議録「官報(号外)」.
[備考] 
[全文]

○議長(重宗雄三君) 日程第一,国務大臣の演説に関する件(第二日)。

 去る十三日の国務大臣の演説に対し,これより順次質疑を許します。小酒井義男君。

   〔小酒井義男君登壇,拍手〕

○小酒井義男君 私は,日本社会党を代表して,さきに行なわれた政府の所信表明演説に対して,若干の質問をいたします。

 五年前に岸内閣の手で日米安保条約が改定され,いま佐藤内閣によって日韓条約が調印されました。くしくも椎名外務大臣は,岸内閣の官房長官でありました。そしてわが国の政治は,外交も内政も,目に見えない体制の中で苦悶を続けておるのであります。第五十回臨時国会も,その一こまであるということができるのであります。また政府,自民党は,国民の待望する経済危機の打開,災害対策,人事院勧告の実施等,すべてをあと回しにして,日韓条約の批准を急いでおるのでありますが,われわれは,このような政府の態度に強く抗議をするとともに,佐藤総理の反省を求めるものであります。(拍手)

 質問の第一点は,佐藤総理が所信表明演説において,わが国の安全を確保し,アジアの平和を守るために,あらゆる努力を傾注してきたと言われたことであります。

 本年二月,アメリカが北ベトナム爆撃を開始してから,アメリカ軍が日本本土と沖縄とを,この作戦の基地として利用していることが,次第に明らかになってまいりました。これに対して,国民の間に,戦争に巻き込まれるのではないかという不安が高まり,アメリカ軍の基地使用を断わるべきだという声が強くなっております。ところが自民党政府は,アメリカ軍の北ベトナム爆撃は当然であるとして,これを支持し,さらに,ベトナム用特需の受注,LST乗り組み船員のあっせん等,アメリカ軍の作戦に協力を進めております。これでは,国民の心配は大きくなるばかりであり,総理の言われる,わが国の安全,アジアの平和ということにはならないと思うのであります。わが党は,国民の心配を代表して,政府がアメリカ軍の作戦に協力することを中止するよう,強く要求しております。

 そこで,総理に率直にお尋ねをしますが,アメリカ軍の作戦に対して,今後ともますます協力を続けるつもりなのか,それとも日本本土,沖縄の基地を使用することを断わるつもりかどうか。その二は,アメリカ軍の北ベトナム爆撃,南ベトナムへの派兵増強で,アメリカが軍事的勝利をおさめることができると考えていると思うかどうか。第三,ベトナム北爆を支持することが,わが国の安全を確保し,アジアの平和を守ることであると考えるなら,その理由を説明されたい。

 質問の第二点は,日韓条約,協定に関するものであります。

 佐藤総理は,政府所信表明演説の中で,「最も近い隣国たる韓国との間でさえ平和を達成できなくて,世界平和を語る資格はない」と言われました。第二次大戦が終わってから,日本は,サンフランシスコ平和条約,日ソ共同宣言などによって戦争のあと始末をつけてまいりましたが,韓国と同じ,すぐ隣の二つの重要な国との国交は,いまだ正常化しておらないのであります。その一つは中国であり,その一つは朝鮮であります。この二つの国は,日本が明治以来これを侵略し,中国についてはその一部である台湾を,朝鮮についてはその全体を,植民統治のもとに置きました。この侵略と植民統治によって朝鮮と中国の民衆にかけた迷惑は非常なものであります。この二つの国との国交を正常化し,過去の償いをすることは,日本人として当然果たさなければならない義務であります。かつて佐藤総理は,「沖縄が祖国日本に帰らない間は,日本にとって戦後は終わらない」と言われましたが,朝鮮と中国との国交が完全に樹立されない限り,日本にとっての戦後は終わらないのであります。政府は,韓国政府を全朝鮮を代表する唯一の合法政府という立場に立って,これとの国交を正常化しようとしているのでありますが,台湾政府を全中国を代表する唯一正統の政府と認めて,これとの間に平和条約を結び,これによって中華人民共和国との国交回復の道をみずからの手で閉ざしておるのであります。このたび,日本政府と韓国政府との間において調印された条約,協定について,管轄権の範囲,竹島の帰属,李ラインの問題に対する解釈の食い違いは,およそ国家間の取りきめとしての体をなしておらないのであります。韓国の国会における韓国政府の見解については,日本政府は,あれは韓国の国内向けであると言い,日本政府の見解については,あれは国内向けであると韓国の政府が言うのは,一片の漫画の材料にはなるかもわかりませんが,条約としての権威をなしておらないのであります。また,韓国においても,日韓条約,協定に対しては激しい反対の声があがっており,これを警察と軍隊の力でやっと押えつけ,国会では与党議員の単独議決によって批准が強行されたのであります。また,有償,無償すべてを含めて八億ドルという大金を朝鮮の南半分だけに出すのに,その南半分からは経済侵略であると激しく反対され,北朝鮮の政府は,日韓条約,協定を非難し,日本の植民統治に対する償いは必ず要求すると声明しているのであります。椎名外相は演説の中で,「日韓間に存在している諸懸案を解決するとともに,将来に向かって日韓両国民の幅広い協力関係を定めたものである」と言っておられますが,こういう無理をして日韓両国の友好親善の成果があがると思っておられますかどうか。国民が疑問を持つのは当然であります。

 そこで総理にお尋ねしたいことは,日本は朝鮮植民地統治でよいことをしたと思っておられるか,それとも迷惑をかけてすまなかったと思っておられるか。

 その二,韓国に対して請求権の支払いをすれば,それで全朝鮮との過去の問題は全部済んだと考えるのか。

 第三,総理は過般の記者会見において,「条約の解釈が食い違うことは間々あることだ」と言っておられましたが,どこにそんなことがあったか,例を示していただきたい。

 その四,竹島の帰属について,一括解決のできなかったものを,今後の交渉で解決ができると思っておられるのか。事実上,竹島は放棄したと同じではないか。

 また総理は,昨年十一月十日組閣後初めての記者会見において,「日韓交渉と中国問題は,佐藤内閣に課せられた重要問題である」と言われましたが,中国問題については,池田内閣時代よりも後退をしておるのではありませんか。総理の自主外交は看板だけではありませんか。

 その六,太平洋戦争が終わってから二十年になるのに,朝鮮と中国の民衆に対して,まだ過去の償いをしていないこと,国交の回復が実現していないことは,日本にとって戦後は終わっていないと考えられるかどうか。

 その七,韓国政府が反対するからという理由で,純然たる民間の会議に出席する北朝鮮代表の入国を認めないことは,これは世界の笑いものになることであります。IECあるいは,はりきゅう代表の参加をなぜ政府は認めることをしないのか。

 質問の第三点は,日韓条約と軍事的な関係についてであります。

 佐藤総理は,「日韓条約が軍事同盟に発展するおそれがあるとの,一部の議論のごときは,何ら根拠なくして,故意に国民の不安をかり立てる,常識では理解できない説であり,わが国憲法の精神から考えて,断じてあり得ないこと」と言われましたが,しかし,本年二月,国会において社会党議員から明らかにしましたように,三矢計画においては,わが国の自衛隊が,千島,樺太,北朝鮮を目標にして,これに出動することが想定されていることであります。これに対して佐藤総理は,三矢計画のような研究を行なうことは当然であると言明されております。もう一つは,日韓条約の当事国である韓国が,すでに南ベトナムに対して一万八千名の軍隊を派遣しており,その韓国との間に軍事提携を具体化するとの話し合いがなされているということであります。さらにもう一つ重要なことは,国連に協力をするという形ならば,わが国の自衛隊が海外に出動することは憲法に違反しないし,したがって,当然海外出兵を行なうべきであるという議論が,政府部内に一貫して存在しているという事実であります。この議論は,現在韓国にある米軍が国連の旗を掲げているだけに,重大な影響を持つのであります。

 そこで総理にお尋ねしますが,本院は,昭和二十九年六月二日,自衛隊法が議決されるに際して,次のような決議をしているのであります。「自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議」「本院は,自衛隊の創設に際し,現行憲法の条章と,わが国民の熾烈なる平和愛好精神に照し,海外出動はこれを行わないことを,茲に更めて確認する。」というものであります。総理は,この決議に御賛成か,あるいは賛成されませんか。

 その二は,いまでも自衛隊が千島,樺太,北鮮に出動する研究を行なうのは当然と考えておられるか。あるいは,そのような研究は禁止すべきだと考えておられるかどうか。

 その三は,自衛隊が国連の要請にこたえ海外に出動することは,憲法違反であると考えるかどうか。

 第四に,韓国にあるアメリカ軍が国連の旗のもとに,わが国の自衛隊の協力を求めてきた場合,政府はこれにこたえて,自衛隊を韓国に出動させるつもりかどうか。

 その五は,日韓条約が成立したら,日本と韓国との軍事提携を密にするつもりがあるかどうか。

 その六は,アメリカ政府から,わが国の自衛隊をベトナム戦争に協力させるよう要請されたことはなかったか。要請があれば,現に韓国が派兵しているように,これにこたえて,自衛隊をベトナムに派遣するつもりか,拒否するつもりか。

 質問の第四点は,沖縄に対する政府の方針についてであります。

 さきに佐藤総理は,戦後初めての沖縄訪問をされましたが,祖国復帰を要求する住民代表には会おうとせず,アメリカ軍基地に逃げ込むという事態が生じたのであります。総理は,所信表明演説において,しきりに,沖縄の祖国復帰を力説されましたが,この一つの行動こそ,総理の本心を如実に物語っているのであります。政府は,アメリカ政府と口うらを合わせ,極東に平和が訪れたら沖縄が帰るなどと述べて,沖縄の祖国復帰を要求する国民と対立することになるのであります。沖縄にアメリカ軍の核基地があり,そこが現在ベトナム作戦の基地となっているから,それが極東の緊張を逆に激化し,国民の不安を高めている原因ではありませんか。この事実を無視することができないから,総理自身が,B52が沖縄からベトナムへ渡洋爆撃に出動した際,日本は当惑していると言わざるを得なかったのであります。国民は総理に対して,百万言を費やして,沖縄祖国復帰の抽象的な文句を並べ立てられるより,一つの具体的な実行を要求しております。

 そこで,総理にお尋ねしたいことは,極東に平和が訪れたならば沖縄は日本に帰るというなら,それでは,いつ極東に平和が訪れるのか,もしその時期がいつになるかわからないというのなら,いつかわからないときまで,祖国復帰を待てと言われるのでしょうか。

 その二は,沖縄に米軍基地があり,それが核武装していること自体が,極東の国際緊張を激化させているとは考えませんか。もし,沖縄基地が極東の平和を保障するというなら,なぜB52の渡洋爆撃に当惑されたのですか。

 その三,日本本土と沖縄との自由往来をアメリカ側に強く要求されるかどうか。

 その四,主席公選を実現するため,アメリカ側と外交交渉を行なうべきであると思うが,その意思を持っておられるかどうか。

 その五,沖縄の生活水準を本土並みに引き上げるために,アメリカ側がこれを拒否しても,これを説得して,財政援助を行なう決意があるかどうか。

 その六,衆参両院に沖縄対策委員会を設置することに賛成されるかどうか。

   (後略)

  〔国務大臣佐藤榮作君登壇,拍手〕

○国務大臣(佐藤榮作君) お答えいたします。

 ベトナム問題についていろいろ御意見をまじえてのお尋ねでございます。わが国における米軍基地,いわゆる安保条約によって提供しております基地を,直接,戦闘作戦行動基地に使ったということはございません。したがいまして,この点は明確にしておいていただきたいと思うのでありまして,わが国がこれに協力しているというような言い方をされますが,私どもは,日米安保条約のこの条章,そのワク内において協力するのは,これは条約を守る本来の筋から申しまして当然のことであります。これは御承知のように,わが国の憲法九十八条にも,条約は忠実に守らなければならぬということを規定しております。憲法を守るという立場でも同様であります。ただ,沖縄の基地についての御意見でございますが,これは御承知のように,私ども施政権を持っていないところでございますので,この点については,ただいまのようなお話がございましても,施政権者の自由と申しますか,そういう立場でその基地を使っておる,かように解すべきだと思います。ただ,かつて,B52が沖縄から発進いたしまして,私は当惑しておるということばを使いました。これについてお尋ねがありましたが,当時の事情は,グアム島における基地が台風で使用できないと,その理由で沖縄に参りまして,その沖縄から発進したと−かような理由で南ベトナムを爆撃したということ,これで私自身が当惑したのでございます。私は,アメリカ自身が当然の権利として沖縄をそのまま使っておるなら,これは明確でありますけれども,当時,台風のため,わが国の板付基地に退避すると,かような話があったものが,板付基地に退避しないで,そうしてこれが沖縄に行って,沖縄から南ベトナムへ行った。その原因,その理由が−こちらへ来るだろうと,かように考えたものが向こうへ行ったということで,もし板付へ来たら,それがまた南ベトナムへ行ったんではないかと,こういうふうにも解釈される。こういう意味で,その点は非常にまずかったと私は思うのであります。

 また,南ベトナムのああいう状況,北爆等で米軍が軍事的勝利をおさめ得ると判断しておるかどうかということでありますが,この点につきましては,アメリカ政府もしばしば申しておりますように,これはお互いに話し合って,そうして平静に帰すべき−平和状態を招来すべきものだと,かように私は思います。無条件話し合いを提案しておる。このことは御承知のとおりでございます。最近はだんだんと,ジュネーブ決議の原則,それに返るという考え方に双方が近づきつつある,かように私は見受けますので,ぜひともそのジュネーブ決議の原則を守ると,こういうことで話し合いを進める。そうして平和を招来することが何より必要なことだ,大事なことだと,かように思います。私どもは,ベトナムがただいまのように戦火に苦しんでおる,こういう状態が続くことは,これはアジアの平和,同時にまた,わが国の安全にも多大の関係を持つことでありますので,一日も早く平和が招来することを心から願っておる次第であります。私は,沖縄自身が,先ほどのようなことがありましても,直接戦火に巻き込まれる,かような心配は現在においては全然ないと,かように確信いたしておりますので,この点では国民に対して非常な不安を与えないように,お互い気をつけてまいりたいものだと,かように思います。

 また,第二のお尋ねは,日韓交渉についてのお話でございますが,日韓交渉は,所信表明でも明確にいたしましたように,私は何と申しましても,隣の国同士が仲よくしていく,これが最も大事なことだと思います。アジアにおきます日本が,アジアにおける国々と,いまのような,交渉が十分できておらない,大韓民国はもちろんのこと,ただいま言われるように,北鮮あるいは中共に対して政経分離の形で,経済的な交渉だけを持っておる,こういうような今日の状態がいつまでも続くのだと,かようには私は考えたくないのであります。こういう意味で,しばしば申し上げておりますように,わが国の考え方はいずれの国とも仲よくしていくのだ,これが基礎的な考え方であります。ただ,いずれの国とも仲よくはしてまいりますが,相手方にもわが国の立場を十分理解してもらいたい,このためには,お互いに独立を尊重すること,お互いに内政干渉をしないということ,このことが最も大事だと思います。この基本的原則ができなくて,お互いに仲よくしていくことは,これはできないのであります。私はその点が,共産党やあるいは社会党の方々が,もしも話が十分できずに,おれたちは中共や北鮮に対して話ができるのだ,かようにお考えになっていらっしゃるならば,どうか私がいま申した,これはどこの国とも仲よくするのだ,その場合には必ずお互いに独立を尊重していこうじゃないか。また内政に干渉しないことにしようじゃないか,このことを十分わかるようにお話をいただきたいのであります。(拍手,発言する者多し)私は,この点につきまして,最近の北鮮やあるいは中共が他の場所におきまして発言しておる事柄は,ただいま私の申し上げる私の希望に必ずしも沿っておるようには思わないのであります。まことに遺憾に思う次第であります。

 今回の日韓条約で北鮮の問題はどうなるのか,こういうようなお話だし,あるいは管轄権の問題についてのお尋ねがございましたが,これはだんだん明確になっておりますが,今回の日韓条約では,北鮮の問題については全然触れておりません。したがいまして,北鮮の現実の問題として,日本がいままでとっておりますケース・バイ・ケースで入国を考えたり,あるいは貿易を実際にいたしたりしておる,この点は在来から変わりはないのであります。今回のIECの参加の問題につきまして入国を拒否したとかいうようなお話がございますが,これも,ただいま申し上げますように,ケース・バイ・ケースでこれをきめてまいるのでありまして,私は,今回IECに参加を許すことは今日の日韓の状況から見ましてどうも適当でない,かように考えましたので,この点が希望に沿うことができなかったのであります。

 また,竹島,李ラインの問題等につきましてもいろいろお尋ねがありましたが,いずれ,これらについては委員会等で明確になることだと思いますが,御承知のように,竹島はわが国も固有の領土権を主張しております。韓国も独島ということでこれの領有を主張しております。明らかに両者の意見が違っておる。こういう事柄を平和的に交渉してまとめていこうというのが,今回の交換公文であります。したがいまして,この日韓交渉の条約その他の批准ができまして,友好関係ができたその暁において,私どもはこういう問題を真剣に両者の間で取りきめてまいりたいと思います。

 また,李ラインの問題につきましては,御承知のように,もうすでに調印できましてから拿捕等の事態は起こっておりません。したがいまして,これも安全操業ができるという,このことが第一の,何よりのたよりでございますから,いわゆる李ラインがあるとかないとか,かような議論よりも,実際問題として処理される−いままでのような,安全操業ができなかった,これが今回は安全操業ができたということで,御了承をいただきたいと思います。

 また,韓国国会の反対がいろいろ問題にされておるようでありますが,韓国国会も,御承知のように,最近では平常に帰しつつあるということでありますので,これは,他国の内政を,とやかく,あまり言わないことが望ましいことではないかと思います。私は,韓国内においての,この日韓条約についての世論調査の一つの材料を持っておりますが,その材料によると,積極的反対はわずかに九%程度だ,また,これの賛成は,実に七◯%に近いということであります。これは世論調査の結果であります。これらのことも考えてみまして,ただいまの事態の両国間の条約,これは,ぜひとも批准するということに進めていきたいものだと思います。

 請求権の問題についてもお話がありましたが,この請求権の問題は,ただいま経済協力という形におきまして両者において十分話がついておるのでありまして,今後は両国が,経済協力,そのもとにおいて韓国も繁栄していく,私どもも繁栄していく,両国がその繁栄の道をたどる,こういうことで相提携していく,互恵平等の原則に立つということでありますので,この点は,過去の請求権の問題はもう消えたと,かように御了承いただきたいと思います。

 また,過去の日韓間の問題について,総理はいかに考えるかというお話でございますが,ちょうどこれにつきましては,椎名外務大臣が韓国を訪問いたしました際に,過去の不幸な事態について十分反省しているということを申しておりますが,私も同様の感を持っておるのでございますので,この点は,かように御理解をいただきたいと思います。

 第三は,防衛問題についてであります。

 防衛問題については,昭和二十九年六月二日の自衛隊の海外派兵は行なわないとの決議がございました。私も,この決議を尊重する,かような立場であることには変わりはございません。ことに,わが国の憲法が,国際紛争は武力によって解決しないのだと,武力使用を禁止しておりますし,また,自衛隊法自身も,自衛隊はわが国の防衛のためにその職責を果たすのだと,かような考え方が明確になっております。したがいまして,この二つの法律から,ただいまお尋ねになりましたような,自衛隊は,国連の要請に応じて海外に出て行くというようなことはありませんし,また,韓国における米軍が国連の名のもとに要請をいたしましても,これまた出動するようなことはございません。

 また,千島,樺太,北鮮等におけるいわゆる三矢研究なるものについて言及されました。私は,こういう事柄も,いろいろ誤解を受けるから,海外派兵のできない今日において,かようなことを研究するにいたしましても不適当なことであったのではないかと,かように思います。しかしながら,最も大事なことは,こういう事柄が現実的にいかに扱われるかということだと思います。現実に私どもは憲法をどこまでも守っていきますので,いわゆる頭のトレーニングの問題ではなく,そういう実際的な問題の処理にあたりまして,われわれが憲法を守るか守らないかということが問題なんで,これは憲法を順守する,ここに私どもの立場があるのでございます。この点を御理解いただきたいと思います。

 また,日韓関係の条約を締結するにあたりまして,軍事提携についての話し合いがあったのではないかと,かようなお話でございますが,これは過去十四年間の交渉を通じまして,どの時期におきましても,さような問題は全然ございません。したがいまして,この点は,いかにも,あったのではないか,また,あるのではないか,かように盛んに言われますが,絶対にないのだと,これを国民の皆さまにも理解していただきたい。これは韓国自身も同じようなことを申しておりますから,この点でも食い違っておらないので,ほんとうに御安心だろうと思います。

 また,米国政府からわが国に対して,ベトナム戦争に自衛隊を協力さすかどうかという,かような要請を受けたことはございません。また,かような要請がございましても,先ほど来申しますように,憲法に反するような事柄は明確に拒否する考えでございます。

 次は,沖縄問題でありますが,沖縄問題につきましては,私が参りまして,そうして,この目で,このはだで,沖縄の九十万同胞が祖国復帰を念願しておることを感じてまいったのであります。私どもは,いままでも機会あるごとに,この施設{前1文字ママとルビ}権の返還,祖国復帰の一日も早く実現することを願ってまいりました。ただいまお話がございますように,アジアが平和になるそのときには返すとジョンソン大統領が言っておるが,一体その時期はいつか,その平和が実現するまではこれが返らないのか,こういうお尋ねでございますが,私は今後あらゆる機会を通じまして,この努力を続けてまいるつもりでありますし,ただいまの問題も,平和の時期は必ずや−だんだん国際情勢も変化しつつある際でありますから,絶望的な考え方をされることには私は不賛成でありまして,むしろ期待を持ち,希望を持って,そういう努力をすべきであると,かように考えております。

 次に,沖縄と本土との自由往来についてのお尋ねもあったかと思いますが,これらもいろいろ交渉いたしておりまして,漸次,その範囲も拡大される,時間も簡単になりつつあるように思います。

 沖縄の主席公選を推進することにつきましても,最近,五人委員会の諸君が見えて,私もこれにも会って,いろいろお話をしておりますが,私どもは,この沖縄の返還,あるいは施政権の返還,あるいは祖国復帰,これはどこまでも日米友好関係のもとにおいて,相互信頼のもとに,これを実現したい。この関係を基礎にして,ただいまのような話をしていくつもりでございますので,これも国民の皆さまの御支援,御協力をいただきたいと思います。いわゆる施政権返還が実現するまで,また,返還を期待しつつ,一日も早く沖縄と本土との間の格差をなくするように,あらゆる努力をするつもりであります。来年度の予算編成にあたりましても,大幅に私どもが財政的な援助をするのも,ただいま申し上げるように,沖縄の生活水準を本土並みに引き上げていく,かような考え方でございます。

 沖縄対策特別委員会を国会に設置したらどうかというお尋ねでありますが,私は,ただいままで内閣委員会その他においても,たいへん懇切丁寧に御審議をいただいておりますので,ただいま直ちに,かようなことをしなければならない,かようにまでは積極的に考えません。いましばらく現状のままでよろしいのではないか,かように思いますが,問題は,どこまでも国会自身の問題でございますので,ただいまのお尋ねは,総理というよりも,自民党総裁としての私に対するお尋ねかと思いますが,私はさように考えておるのであります。

  (後略)

 編注 質問,答弁ともに経済政策については省略した。