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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第3回日韓定期閣僚会議共同コミュニケ

[場所] 東京
[年月日] 1969年8月28日
[出典] 外交青書14号,395−399頁.
[備考] 
[全文]

 1.第3回日韓定期閣僚会議は,1969年8月26日から28日までの3日間,東京において開催された。

 2.会議には,日本側からは,愛知揆一外務大臣,福田赳夫大蔵大臣,長谷川四郎農林大臣,大平正芳通商産業大臣,原田憲運輸大臣および菅野和太郎経済企画庁長官が金山政英駐韓大使とともに出席し,吉国二郎国税庁長官および森本修水産庁長官も出席した。

 3.韓国側からは,金鶴烈副総理兼経済企画院長官,崔圭夏外務部長官,黄鍾律財務部長官,趙始衡農林部長官,金正濂商工部長官および姜瑞竜交通部長官が厳敏永駐日大使とともに出席し,李洛善国税庁長および金在植水産庁長も出席した。

 4.会議は,次の事項を議題として採択し,討議した。

(1)両国関係一般および国際情勢

(2)両国の経済情勢

(3)経済協力問題

(4)貿易問題

(5)農林水産問題

(6)交通運輸問題

 5.両国の閣僚は,終始,率直かつ友好的なふn囲気のうちに議事を進めた。

 会議は,まず全体会議において,国際情勢および両国関係を全般的に討議し,両国の経済情勢についてそれぞれ説明を行なつた後,国際情勢および両国関係,経済協力,財務,貿易,農林水産および交通運輸の各問題に関する個別会議を開催し,最後に再び全体会議を開催して総括を行なつた。

 6.両国の閣僚は,両国関係全般に関して検討した結果,両国政府が長期的な観点から互恵の原則と信義に立脚した両国間の善隣協調関係をいつそう発展させるため引き続き努力することに合意した。

 7.両国の閣僚は,国際情勢一般,特にアジア太平洋情勢に関して広く意見を交換し,沖繩繩問題にも言及した。

 8.両国の閣僚は,アジア太平洋情勢の検討にあたつて,地域内の一部に緊張が存続している事実に遺憾の意を表し,かかる緊張にもかかわらず,地域内の自由と民主主義を国是とする諸国が着実に経済的社会的発展を遂げつつあることに満足の意を表した。両国の閣僚は,これら諸国がかかる発展のために相互に協力し,アジア太平洋地域の緊張緩和のためさらに努力すべきであることに意見の一致をみた。

 9.両国の閣僚は,両国の安全と繁栄が極めて密接な関係にあること,およびアジアにおける平和と繁栄が両国共通の目標であることを認め,その目標の実現のために,両国が引き続き協調し,努力することを再確認した。

 10.韓国側は,北からの大韓民国に対する侵略的挑発行為が継続激化している最近の事態を説明し,また,大韓民国の政府および国民が朴大統領の指導の下に固く団結し,自由友邦国家の継続的な理解と支持を得て,一面国防一面建設の国家政策を成功裡に遂行している事実を説明した。日本側は,これに対し,大韓民国の政府と国民が,かかる事態に対処しつつ,自国の安全の確保と経済開発の分野でなし遂げた画期的な業績に対して敬意を表明した。

 11.両国の閣僚は,ヴィエトナム問題に関するパリ会談を含む最近の情勢に注目し,外部からの圧力と脅威なしに自らの将来を決定しうる自由と権利がヴィエトナム国民に保証されるような公正にしてかつ永続的な平和が可及的速かにもたらされるようにヴィエトナム問題が解決されることについて強い希望を表明した。

 12.両国の閣僚は,過去1年間におけるアジア太平洋理事会の活動とその成果に対し満足の意を表し,この機構を通ずる地域的協力体制のよりいつそのう発展と強化のため,両国が引き続いて協力することに合意した。

 13.両国の閣僚は,両国が引き続いて国際連合その他の国際的な機構および会議を通じて協力することが有益であること,特に韓国統一のための国際連合の諸般の努力に対し引き続いて協力することを再確認した。

 14.両国の閣僚は,1969年8月19日および20日の両日にかけて開催された両国法相会談が法的地位協定に基づく在日韓国人の永住資格の取得の促進に貢献したことを歓迎し,今後とも教育および生活の向上等を通じて彼等の福祉がいつそう増進されるために努力が払われるべきであることに意見の一致をみた。

 15.韓国側は,在日韓国人の信用組合の設立および公庫の代理業務の取扱い等について,日本側の好意的配慮を要望し,日本側は,信用組合の設立問題は都道府県知事の認可事項であるが,政府としては好意的に考慮している旨述べ,また,公庫の代理業務については,原則として差別しない考えであるが,公庫の性格等から考えて,実際上,種々問題があると述べた。

 16.韓国側は,在日韓国人の家族送金規制を緩和するとともに帰国時持帰り金の枠を引き上げるよう要請したのに対し,日本側は,在日外国人の経常的所得の本国向け定期送金について従来の制限を廃止するとともに,帰国時持帰り金の枠についても従来の日本銀行自動許可枠一世帯当たり1万ドルを5万ドルに引き上げることとした旨発言した。

 17.両国の閣僚は,在日韓国人の「北送」および在樺太韓国人の帰還問題を討議し,第2回日韓定期閣僚会議の共同コミュニケに述べられたそれぞれの立場を確認した。

 18.韓国側は,総合製鉄所の建設につき,日本の対韓経済協力における最優先計画として,日本側の協力を要請した。日本側は,これに深い理解を示し,これに協力するため,本計画のより具体的かつ実際的調整のため,調査団を派遣することを約した。

 19.両国の閣僚は,民間実業人による合弁投資の積極的進出が両国間の経済関係の緊密化に資するものであることを確認した。

 20.両国の閣僚は,日本から供与される漁業協力,船舶輸出および一般プラントのための民間信用の問題について,従来同様,本年も引き続き実施して行くことに意見の一致をみた。

 21.二重課税防止協定に関し,両国の閣僚は,第2回日韓定期閣僚会議共同コミュニケで合意された課税原則に基づく協定の内容について合意に達し,同協定の発効に努力することに意見の一致をみた。

 22.韓国側は,在日韓国人に対する諸般の課税問題について適正を期するよう日本側の措置を要望し,日本側は,これに対して今後とも十分に配慮することを約束した。

 23.(1)両国の閣僚は,両国間貿易の不均衡を漸次是正することが両国経済関係において極めて重要な問題であるとの認識をさらに深め,今後ともあらゆる可能な方法によりその解決に努力すべきであることに合意した。

 (2)韓国側は,加工再輸入品の原材料分関税軽減制度の適用品目の追加につき日本側の特段の配慮を要請したのに対し,日本側は,1969年末までを目途に品目追加に関し,積極的に検討する旨約した。

 また,日本側は,韓国側の関税引下げ要請に関し,非食用海草の一部,はまぐり(生鮮,塩蔵),莞草敷物を含む若干の品目についてKR最終税率の繰上げ実施等の関税率の引下げを検討する旨約した。

 (3)日本側は,文化映画の輸入促進,工業所有権の保護,差し当たり韓国在住の日韓合弁法人が日本人から特許を受ける権利等の譲渡を受けた場合特許権等の享有を認めることについて要請したのに対し,韓国側は前向きに検討する旨約した。

 24.農林水産問題に関し,

 (1)韓国側は,農林水産物の輸出拡大の観点から,農水産物の開発輸出について両国民間資本の合弁投資,契約栽培,特にそのための技術協力等への日本側の積極的な協力を要請したのに対し,日本側は,国内産品の需給事情を考慮しつつ,一次産品の貿易拡大のために相互に適当と認める品目を選定し,当該品目の開発輸出に関する具体的方策を極力推進することに合意した。

 (2)韓国側は,現行ののりの輸入時期および取引方式は合理的でないことを指摘し,韓国のり生産漁民の利益を図るため,現行方式の改善を強く要請したのに対し,日本側は,現行ののりの輸入時期および取引方式を直ちに変更することはできないが,本問題は,両国ののりの生産流通の実態の進展に伴い漸進的に解決されるべきものである旨述べた。

 両国は,今後,本問題を両国の関係者の間において検討することに合意した。

 (3)韓国側は,1969年の輸入割当数量の残枠については本年の例外措置として輸入を認めるよう要請したのに対し,日本側は,残枠については,所定の期限までに極力輸出されるよう述べ,なお残枠を生じた場合には検討する旨述べた。

 25.両国の閣僚は,両国間の海運協定締結問題および船舶借款問題について極めて有意義な意見の交換を行なつた。

 26.両国の閣僚は,今回の会議が,両国の相互理解を深め,かつ,友好協力関係をいつそう確固とする上に極めて有益であつたことに意見の一致をみた。

 27.両国の閣僚は,第4回日韓定期閣僚会議を,来年,両国政府が合意する時期にソウルで開催することに合意した。

 28.韓国側閣僚は,このたびの第3回日韓定期閣僚会議に際して日本国政府と国民から示された歓待に対して謝意を表明した。