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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約 (略称)韓国との租税(所得)条約

[場所] 東京
[年月日] 1970年3月3日
[出典] 外務省条約局,条約集(昭和45年 二国間条約)359‐402頁
[備考] 目次は省略
[全文]

昭和四十五年三月三日 東京で署名

昭和四十五年五月十二日 国会承認

昭和四十五年九月二十五日 批准の閣議決定

昭和四十五年九月二十九日 ソウルで批准書交換公布及び告示

             (条約第二〇号)

昭和四十五年十月二十九日 効力発生

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約

前文

 日本国及び大韓民国は、

 所得に対する租税に関し、二重課税を回避し及び脱税を防止するための条約を締結することを希望して、

 次のとおり協定した。

 第一条

対象となる租税

(1)この条約の対象である租税は、次のものとする。

 (a)大韓民国においては、所得税及び法人税(以下「韓国の租税」という。)

 (b)日本国においては、所得税、法人税及び住民税(以下日本国の租税」という。)

(2)この条約は、(1)に掲げる租税と実質的に類似の性質を有する租税(国税であるか地方税であるかを問わない。)で、現行の租税に加えて又はこれに代わつてこの条約の署名の日の後に課されるものについても、また、適用する。

 第二条

定義

(1)この条約において、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、

 (a)「韓国」とは、大韓民国をいう。

 (b)「日本国」とは、地理的意味で用いる場合には、日本国の租税に関する法令が施行されているすべての領域をいう。

 (c)「一方の締約国」及び「他方の締約国」とは、文脈により、日本国又は韓国をいう。

 (d)「者」には、個人、法人及び法人以外の社団を含む。

 (e)「法人」とは、法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有する団体として取り扱われる団体をいう。

 (f)「租税」とは、文脈により、日本国の租税又は韓国の租税をいう。

 (g)「権限のある当局」とは、

  (i)韓国については、財務部長官又は権限を与えられたその代理者をいう。

  (ii)日本国については、大蔵大臣又は権限を与えられたその代理者をいう。

(2)一方の締約国がこの条約を適用する場合には、特に定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、この条約が適用される租税に関するその締約国の法令上有する意義を有するものとする。

 第三条

締約国の居住者及び法人

(1)この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の租税に関し当該一方の締約国の居住者とされる個人をいう。

(2)この条約の適用上、「一方の締約国の法人」とは、当該一方の締約国内に本店又は主たる事務所を有する法人をいう。

(3)(1)の規定によつて双方の締約国の居住者となる個人については、両締約国の権限のある当局は、合意により、この条約の適用上その個人が居住者であるとみなされる締約国を決定する。

 第四条

恒久的施設

(1)この条約の適用上、「恒久的施設」とは、事業を行なう一定の場所であつて一方の締約国の居住者又は法人がその事業の全部又は一部を行なつているものをいう。

(2)「事業を行なう一定の場所」には、次のものを含むが、これらに限らない。

 (a)事務所

 (b)店舗その他の販売所

 (c)工場

 (d)作業場

 (e)倉庫

 (f)鉱山、採石場その他天然資源を採取する場所

 (g)建築工事現場又は建設、据付け若しくは組立ての工事で、六箇月をこえる期間存続するもの

(3)(1)の規定にかかわらず、事業を行なう一定の場所であつて次の一又は二以上の活動のためにのみ使用されるものは、恒久的施設には含まれない。

 (a)居住者又は法人に属する物品又は商品を他の者が加工すること。

 (b)居住者又は法人のために物品又は商品を単に購入すること。

 (c)居住者又は法人に属する物品又は商品を単に保管すること。

 (d)居住者又は法人のために情報を収集すること。

 (e)広告、科学的調査、物品若しくは商品の展示、情報の提供又はこれらに類する活動で居住者若しくは法人の事業にとつて準備的若しくは補助的な性質を有するものを行なうこと。

(4)一方の締約国の居住者又は法人が(1)、(2)及び(3)の規定により他方の締約国内に恒久的施設を有しないものとされる場合においても、その居住者又は法人は、次の場合には、当該他方の締約国内に恒久的施設を有するものとされる。

 (a)その居住者又は法人が次の代理人を通じて当該他方の締約国内で事業を行なう場合

  (i)当該他方の締約国内で、その居住者又は法人の名において契約を締結する権限を有し、かつ、これを常習的に行使する代理人(その権限の行使がその居住者又は法人のために物品又は商品を購入することに限られるものを除く。)

  (ii)もつぱら又は主として、その居住者若しくは法人のため、又はこれらの者及びこれらの者に支配され若しくはこれらの者に対し支配力のある利害関係を有する他の者のため、当該他方の締約国内で常習的に注文を取得する代理人

  (iii)その居住者又は法人に属する物品又は商品の在庫でその中から常習的に引渡しを行なうものを当該他方の締約国内に保有する代理人

 (b)その居住者又は法人が当該他方の締約国内で次の役務を提供する場合

  (i)建築、建設、据付け又は組立ての工事に関する契約に関連して六箇月をこえる期間提供される監督、技術的役務その他の職業的役務又はこれらに類する人的役務

  (ii)第十二条(4)に規定する芸能人の役務

(5)(4)の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者又は法人は、真正な仲立人、問屋、運送取扱人、保管人その他独立の地位を有する代理人でこれらの者としての業務を通常の方法で行なうものの役務を他方の締約国内で利用しているという理由のみでは、当該他方の締約国内に恒久的施設を有するものとされることはない。

(6)一方の締約国の法人が、(a)他方の締約国の法人若しくは(b)他方の締約国において恒久的施設を通じ若しくは通じないで事業を行なう法人を支配し、又はこれらに支配されているという事実のみによつては、いずれの一方の法人も、他方の法人の恒久的施設であることとはならない。

 第五条

一般原則

(1)一方の締約国の居住老又は法人に対しては、この条約に定める制限に従い、他方の締約国内の源泉から生じた所得についてのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。

(2)この条約中に適用される明文の規定がない所得に対しては、各締約国においてその法令に従い租税を課することができる。

(3)この条約の規定は、一方の締約国が租税の額を決定するにあたり、(a)当該一方の締約国の法令又は(b)両締約国間の他の協定によつて現在又は将来認められる非課税、免税、所得控除、税額控除その他の減免をいかなる態様においても制限するものと解してはならない。

(4)一方の締約国において施行されている法令は、これと反対の規定がこの条約に設けられている場合を除くほか、当該一方の締約国において引き続き所得に対する課税を規制する。

 第六条

産業上又は商業上の利得

(1)一方の締約国の居住者又は法人は、他方の締約国内に恒久的施設を有しない限り、その産業上又は商業上の利得につき当該他方の締約国において租税を免除される。

(2)一方の締約国の居住者又は法人が他方の締約国内に恒久的施設を有する場合には、その恒久的施設に対し、当該他方の締約国内の源泉から生じたその居住者又は法人の全所得につき当該他方の締約国において租税を課することができる。

(3)一方の締約国の居住者又は法人が他方の締約国内に有する恒久的施設の産業上又は商業上の利得の決定に際しては、経営費及び一般管理費を含む費用で合理的にその利得に関連するものは、いかなる場所で生じたかを問わず、経費に算入することを認められるものとする。

(4)(5)の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者若しくは法人の恒久的施設がその居住者若しくは法人のためにのみ行ない又はこれらの者が自己のために行なつた物品若しくは商品の単なる購入を理由としては、いかなる利得も、その恒久的施設が存在する他方の締約国内の源泉から生じたものとされることはない。

(5)この条の規定の適用上、居住者又は法人が一方の締約国において購入し又は製造した物品又は商品を他方の締約国において販売することによつて取得する産業上又は商業上の利得は、一部分はその物品又は商品が購入され又は製造された締約国内の源泉から、一部分はその物品又は商品が販売された締約国内の源泉から生じた所得として取り扱う。両締約国の政府又は権限のある当局は、前記の産業上又は商業上の利得の源泉の配分に関する細目につき、この条に定める課税上の原則と矛盾しない範囲内で協議し及び取りきめることができる。

 第七条

船舶、航空機に係わる利得

(1)第六条(2)の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者又は法人が次の国に登録されている船舶又は航空機を国際運輸に運用することにより取得する所得又は収入については、他方の締約国において租税を免除する。

 (a)いずれかの締約国

 (b)当該他方の締約国の居住者又は法人が当該他方の締約国に登録されている船舶又は航空機を運用することにより取得する所得又は収入に対する租税を免除する第三国

(2)(1)の規定は、一方の締約国の居住者又は法人で船舶又は航空機を国際運輸に運用するものがいかなる種類の共同計算、共同経営又は国際経営共同体に参加している場合についても、同様に、適用する。

(3)(1)の規定の適用上、「租税」には、文脈により、日本国の事業税又は韓国の営業税を含む。

(4)船舶又は航空機の運用から生ずる所得又は収入に対する課税の相互免除に関し日本国政府と大韓民国政府との間で千九百六十九年四月一日にソウルにおいて交換された公文により成立した取極は、この条約の規定が適用される日から効力を失う。

 第八条

特殊関係企業の所得

(1)一方の締約国の居住者又は法人で他方の締約国から所得を取得するものが他の者と関連を有する場合において、両者の間で独立の者の間の取決めと異なる取決めが作成され又は独立の者の間の条件と異なる条件が課されるときは、その取決め又は条件がなかつたならばその居住者又は法人の所得となつたはずである所得でその取決め又は条件のためにその居住者又は法人の所得とならなかつたものは、この条約の適用上その居住者又は法人の所得に算入して、当該他方の締約国において課税することができる。

(2)(a)いずれか一方の者が他方の者の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加する場合又は

   (b)それら双方の者の経営、支配若しくは資本に第三者が直接若しくは間接に参加する場合

には、いずれの一方の者も、他方の者と関連を有するものとされる。

 第九条

配当

(1)一方の締約国の居住者又は法人が他方の締約国内の源泉から取得する配当に対し当該他方の締約国において課される租税の額は、その配当の総額の十二パーセントをこえないものとする。

(2)(1)の規定は、一方の締約国の居住者又は法人である配当の受領者が、その配当が生じた他方の締約国内に、その配当の支払の基因となつた株式又は持分と実質的に関連する恒久的施設を有する場合には、適用しない。この場合には、その配当が産業上又は商業上の利得であるものとして、第六条の規定を適用する。

(3)一方の締約国の法人が支払う配当は、当該一方の締約国内の源泉から生じた所得として取り扱う。

 第十条

利子

(1)一方の締約国の居住者又は法人が他方の締約国内の源泉から取得する利子に対し当該他方の締約国において課される租税の額は、その利子の総額の十二パーセントをこえないものとする。

(2)(1)の規定にかかわらず、一方の締約国の政府(地方公共団体を含む。)、中央銀行又はこれらのいずれか若しくは双方によつて所有されている機関(金融機関を含む。)が他方の締約国内の源泉から取得する利子については、当該他方の締約国において租税を免除する。

(3)(1)の規定は、一方の締約国の居住者又は法人である利子の受領者が、その利子が生じた他方の締約国内に、その利子を生じた債権と実質的に関連する恒久的施設を有する場合には、適用しない。この場合には、その利子が産業上又は商業上の利得であるものとして、第六条の規定を適用する。

(4)支払者が第八条に規定する関連を有する者に支払つた利子の金額が、その支払の基因となつた債務に対する公正かつ妥当な対価をこえる場合には、(1)の規定は、当該利子の金額のうちその公正かつ妥当な対価に相当する部分についてのみ適用するものとし、これをこえる部分に対しては、各締約国の法令に従い、かつ、この条約中に適用される規定があるときはこれに従つて、租税を課することができる。

(5)(a)(b)に定める場合を除くほか、一方の締約国(その地方公共団体を含む。)又はその居住者若しくは法人が支払う利子は、当該一方の締約国内の源泉から生じた所得として取り扱う。

   (b)一方の締約国の居住者又は法人が他方の締約国内又は両締約国外に有する恒久的施設の資金から直接支払う利子であつて、その恒久的施設が自己の用にのみ供するために受け入れた債務又はその恒久的施設が受け入れた金融業務上の預金に係るものは、その恒久的施設が存在する国の源泉から生じた所得として取り扱う。

 第十一条

無体財産権の使用料及び譲渡益

(1)(a)一方の締約国の居住者又は法人が他方の締約国内の源泉から取得する使用料に対し当該他方の締約国において課される租税の額は、その使用料の総額の十二パーセントをこえないものとする。

   (b)一方の締約国の居住者又は法人が、(3)(a)及び(3)(b)に規定する財産、権利又は情報を譲渡することにより他方の締約国内の源泉から取得する所得に対し当該他方の締約国において課される租税の額は、その所得の総額の十二パーセントをこえないものとする。

(2)(1)の規定は、一方の締約国の居住者又は法人である使用料又は所得の受領者が、その使用料又は所得が生じた他方の締約国内に、その使用料又は所得を生じた財産、権利又は情報と実質的に関連する恒久的施設を有する場合には、適用しない。この場合には、その使用料又は所得が産業上又は商業上の利得であるものとして、第六条の規定を適用する。

(3)この条の規定の適用上、「使用料」とは、次のものの使用又は使用の権利の対価として支払われる使用料、賃貸料その他の料金をいう。

 (a)文学上、美術上又は学術上の著作物の著作権、映画フィルム、ラジオ放送用又はテレビジョン放送用のフィルム又はテープ、特許権、意匠、模型、図面、秘密工程又は秘密方式、商標権その他これらに類する財産又は権利

 (b)産業上、商業上若しくは学術上の設備又は産業上、商業上若しくは学術上の知識、経験若しくは技能に関する情報

 (c)裸用船契約に基づいて賃貸される船舶又は航空機

(4)(1)、(2)及び(3)の規定は、鉱山、採石場その他天然資源を採取する場所の経営に関して支払われる使用料、賃貸料その他の料金については、適用しない。

(5)支払者が第八条に規定する関連を有する者に支払つた使用料又は所得の金額が、その支払の基因となつた財産、権利又は情報に対する公正かつ妥当な対価をこえる場合には、(1)の規定は、当該使用料又は所得の金額のうちその公正かつ妥当な対価に相当する部分についてのみ適用するものとし、これをこえる部分に対しては、各締約国の法令に従い、かつ、この条約中に適用される規定があるときはこれに従つて、租税を課することができる。

(6)(3)に規定する財産、権利又は情報の一方の締約国における使用又は使用の権利について支払われる使用料は、当該一方の締約国内の源泉から生じた所得として取り扱う。ただし、国際運輸に運用される船舶又は航空機の賃貸に係る使用料は、賃借人が居住者又は法人である締約国内の源泉から生じた所得として取り扱う。一方の締約国における使用のため(3)(a)及び(3)(b)に規定する財産、権利又は情報を譲渡することから生ずる所得は、当該一方の締約国内の源泉から生じた所得として取り扱う。

 第十二条

人的役務による所得

(1)第十三条、第十四条、第十五条及び第十六条の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者がその人的役務に関して受け取る報酬に対しては、その報酬が他方の締約国内の源泉から生じたものでない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。その報酬が当該他方の締約国内の源泉から生じたものである場合には、その報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。

(2)(a)個人が使用人として若しくは独立の資格においてその人的役務を提供し又は他の者の人的役務を提供することに関して受け取る所得及び法人がその使用人その他の者の人的役務を提供することに関して受け取る所得は、その人的役務が提供された締約国内の源泉から生じた所得として取り扱う。

   (b)(a)の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者又は法人が運用する船舶又は航空機において提供される人的役務に関する報酬は、その人的役務がその船舶又は航空機の正規の乗組員によつて提供される場合には、当該一方の締約国内の源泉から生じた所得として取り扱う。

   (c)(a)の規定にかかわらず、個人が法人の役員の資格で受け取る報酬は、その個人が役員である法人が一方の締約国の法人である場合には、当該一方の締約国内の源泉から生じた所得として取り扱う。

(3)(1)の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者は、次の場合には、他方の締約国内で提供した人的役務によつて取得する所得につき当該他方の締約国において租税を免除される。

   (a)(i)その居住者がその年を通じて合計百八十三日をこえない期間当該他方の締約国内に滞在し、

    (ii)その人的役務が当該一方の締約国の居住者又は法人の使用人の役務として提供され、かつ、

    (iii)その報酬が当該一方の締約国の居住者又は法人の利得で当該他方の締約国において租税を課されるものの算定にあたり報酬として控除されない場合

   (b)(i)その居住者がその年を通じて合計九十日をこえない期間当該他方の締約国内に滞在し、

    (ii)その居住者が自由職業に従事し、かつ、

    (iii)その自由職業について受け取る報酬が三千合衆国ドル又は日本円若しくは韓国ウォンによるその相当額をこえないものである場合

(4)(1)及び(3)の規定にかかわらず、演劇、映画、ラジオ又はテレビジョンの俳優、音楽家、運動家その他の芸能人がこれらの者としての人的役務によつて取得する所得については、その人的役務が行なわれる締約国において租税を免除する。ただし、その所得が当該締約国におけるその者の滞在中一日につき百合衆国ドル若しくは日本円若しくは韓国ウォンによるその相当額をこえる場合又はその所得が合計して三千合衆国ドル若しくは日本円若しくは韓国ウォンによるその相当額をこえる場合は、この限りでない。

 第十三条

教育者又は研究者の所得

(1)一方の締約国の政府又は当該一方の締約国に存在する大学その他の公認された教育機関の招請によりその教育機関において教育若しくは研究又はこれらの双方を行なうことを主たる目的として当該一方の締約国を訪れる個人で当該一方の締約国における滞在の当初に他方の締約国の居住者であるものは、当該一方の締約国に到着した日から二年をこえない期間、その教育又は研究によつて取得する所得につき当該一方の締約国において租税を免除される。

(2)この条の規定は、主として特定の者の私的利益のために行なわれる研究から生じた所得については、適用しない。

 第十四条

学生、事業修習者等に対する奨励金等

(1)一方の締約国を訪れた当初に他方の締約国の居住者である個人であつて、主として、

 (a)当該一方の締約国内の大学その他の公認された教育機関において勉学を行なうため、

 (b)職業上の若しくは専門家の資格に必要な訓練を受けるため、又は

 (c)政府若しくは宗教、慈善、学術、文芸若しくは教育の団体からの交付金、手当若しくは奨励金を受領する者として勉学若しくは研究を行なうため、

当該一方の締約国内に一時的に滞在するものは、次のものにつき当該一方の締約国において租税を免除される。

 (i)生計、教育、勉学、研究又は訓練のための海外からの送金

 (ii)(c)の交付金、手当又は奨励金

 (iii)当該一方の締約国において提供する人的役務によつて取得する所得であつて年間千八百合衆国ドル又は日本円若しくは韓国ウォンによるその相当額をこえないもの

(2)(1)の規定に基づく特典は、滞在の目的を達成するために合理的又は慣習的に必要とされる期間についてのみ与えられる。ただし、個人は、いかなる場合にも引き続き五年をこえる期間(1)の規定の特典を与えられることはない。

(3)一方の締約国を訪れた当初に他方の締約国の居住者である個人であつて、当該他方の締約国の居住者若しくは法人の使用人として又はその居住者若しくは法人との契約に基づき、その居住者又は法人以外の者から技術上、職業上又は事業上の経験を習得することを主たる目的として一年をこえない期間当該一方の締約国内に滞在するものは、その経験の習得に関連して提供する自己の人的役務に対するその期間の報酬につき当該一方の締約国において租税を免除される。ただし、海外から受け取る金額と当該一方の締約国内で支払われる金額との合計が年間五千合衆国ドル又は日本円若しくは韓国ウォンによるその相当額をこえない場合に限る。

(4)一方の締約国を訪れた当初に他方の締約国の居住者である個人であつて、当該一方の締約国の政府が主催する計画に参加する者として訓練、研究又は勉学を主たる目的として一年をこえない期間当該一方の締約国内に滞在するものは、その訓練、研究又は勉学に関連して提供する自己の人的役務に対するその期間の報酬につき当該一方の締約国において租税を免除される。ただし、海外から受け取る金額と当該一方の締約国内で支払われる金額との合計が年間五千合衆国ドル又は日本円若しくは韓国ウォンによるその相当額をこえない場合に限る。

 第十五条

退職年金及び保険年金

 一方の締約国の居住者に支払われる民間の退職年金及び保険年金に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。

 第十六条

公務遂行に係る報酬

(1)政府の職務の遂行として韓国政府又は韓国の地方公共団体に提供された人的役務に関し、同政府若しくは当該地方公共団体によつて個人に支払われ又は同政府若しくは当該地方公共団体が設立した基金から個人に支払われる給料、賃金又はこれらに類する報酬及び退職年金又はこれに類する給付については、日本国の租税を免除する。ただし、次の場合は、この限りでない。

 (a)その個人が、日本国の国民又は永住のため日本国に入国することを許可された者である場合

 (b)その個人が、日本国との平和条約の規定によつて千九百五十二年四月二十八日に日本国の国籍を失つた者で千九百四十五年九月二日以前から引き続き日本国に在留しているもの(千九百四十五年九月三日から千九百五十二年四月二十八日までの期間中に日本国において出生したその子を含む。)の在留に関する日本国の法律により、日本国における在留を認められている場合

(2)政府の職務の遂行として日本国政府又は日本国の地方公共団体に提供された人的役務に関し、同政府若しくは当該地方公共団体によつて個人に支払われ又は同政府若しくは当該地方公共団体が拠出した基金から個人に支払われる給料、賃金又はこれらに類する報酬及び退職年金又はこれに類する給付については、韓国の租税を免除する。ただし、次の場合は、この限りでない。

 (a)その個人が、韓国の国民である場合

 (b)その個人が、韓国の出入国管理法により、永住に類する資格で韓国に在留することを認められている場合

(3)この条の規定は、一方の締約国又はその地方公共団体が利得を得る目的で行なう営業又は事業に関連して提供された人的役務に対して支払われる給料、賃金又はこれらに類する報酬及び退職年金又はこれに類する給付については、適用しない。

 第十七条

特典を受ける権利

 第十二条、第十三条、第十四条及び第十六条の規定のうち二以上の規定に基づく特典を受ける資格のある個人は、自己にとつて最も有利な規定に基づく特典を受けることができる。もつとも、その個人は、いずれの課税年度又は課税期間においても、二以上の規定に基づく特典を受ける権利を有しない。

 第十八条

二重課税の排除方法

 二重課税は、次の方法によつて回避する。

(1)韓国は、韓国の居住者又は法人につき、日本国に納付された又は納付されるべき租税の対応額を韓国の租税から控除する。この対応額は、日本国に納付された又は納付されるべき額に基づくものとするが、日本国内の源泉から生じた所得が韓国の租税を課される全所得のうちに占める割合を韓国の租税の額に乗じて得た額をこえないものとする。

(2)日本国は、日本国の居住者又は法人につき、日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令の規定に従い、韓国に納付される租税の対応額を日本国の租税から控除する。

(3)(2)の控除の適用上、次の場合に納付されたはずである韓国の租税は、納税者によつて納付されたものとみなす。

 (a)韓国の租税が、第九条(1)、第十条(1)及び第十一条(1)の規定に従い韓国において軽減されなかつたとした場合

 (b)韓国の租税が、韓国の経済開発を促進するための特別の奨励措置であつてこの条約の署名の日に実施されているもの又は現行の措置の修正若しくはこれへの追加として韓国の租税に関する法令に将来導入されることがあるものに従い、韓国において軽減され又は免除されなかつたとした場合。ただし、両締約国の政府が前記の措置により納税者に与えられる特典の範囲について合意を行なうことを条件とする。

 第十九条

内国民待遇

(1)一方の締約国の国民は、他方の締約国において、同様の状況にある当該他方の締約国の国民が課されており又は課されることがある租税又はこれに関連する要件以外の又はこれらよりも重い租税又はこれに関連する要件を課されることはない。

(2)一方の締約国の居住者又は法人が他方の締約国内に有する恒久的施設に対する租税は、当該他方の締約国において、同様の状況にある当該他方の締約国の居住者又は法人に対して課される租税よりも不利に課されることはない。

 この規定は、一方の締約国に対し、家族の状況又は家族を扶養するための負担を理由として自国の居住者に対して認める租税上の人的控除、救済及び軽減を他方の締約国の居住者に対して認めることを義務づけるものと解してはならない。

(3)一方の締約国の法人で資本の全部又は一部が他方の締約国の一又は二以上の居住者又は法人によつて直接又は間接に所有され又は支配されているものは、当該一方の締約国において、当該一方の締約国の類似の他の法人が課されており又は課されることがある租税又はこれに関連する要件以外の又はこれらよりも重い租税又はこれに関連する要件を課されることはない。

(4)この条において「租税」とは、すべての種類の国税又は地方税をいう。

 第二十条

両国当局間の通信及び協議

(1)両締約国の権限のある当局は、この条約を実施するため、直接相互に通信することができる。

(2)両締約国の権限のある当局は、この条約の解釈又は適用に関して困難又は疑義が生じた場合には、合意によつてできる限りすみやかにその問題を解決するように努めるものとする。

(3)両締約国の権限のある当局は、また、必要に応じ日本国の事業税及び韓国の営業税に関して相互に協議することができる。

 第二十一条

情報の交換

(1)一方の締約国の権限のある当局は、この条約の実施又はこの条約の対象である租税に関する詐欺若しくは脱税の防止に関連する情報を他方の締約国の権限のある当局と交換するものとする。

(2)このようにして交換された情報は、秘密として取り扱わなければならない。ただし、この条約の対象である租税の賦課若しくは徴収又は当該租税に関する執行若しくは訴えに関与する者(裁判所及び行政機関を含む。)に対しては、これを開示することができる。

(3)情報を要請された締約国の権限のある当局は、次の場合には、情報を交換しないものとする。

 (a)その情報が、その締約国の租税に関する法令及び行政上の手続の下において入手することができないものである場合

 (b)その情報が、営業上、事業上、産業上又は職業上の秘密を明らかにするようなものである場合

(4)両締約国の権限のある当局は、第一条(1)に掲げる租税に関する法令の改正及び同条(2)に規定する租税の採用につき、その改正又は新たな法令の文書を少なくとも年一回送付することにより、相互に通知する。

 第二十二条

徴収共助

(1)各締約国は、この条約に基づき他方の締約国において認められる免税又は税率の軽減がこのような特典を受ける権利を有しない者によつて享受されることのないようにするため、当該他方の締約国において課される租税を徴収するように努めるものとする。その徴収を行なう締約国は、このようにして徴収した金額につき当該他方の締約国に対して責任を負う。

(2)この条の規定は、いかなる場合においても、租税の徴収に努める締約国の法規及び慣行に抵触し又はその締約国の公の秩序に反するような行政上の措置をとる義務をいずれの一方の締約国にも課するものと解してはならない。

 第二十三条

不服申立て及び両国当局間の協議

 納税者は、他方の締約国の措置によつてこの条約の規定に反する課税を受け又は受けるに至ると認める場合には、自己が居住者又は法人である一方の締約国の権限のある当局に対し、その事案について申立てをすることができる。納税者の申立てを受けた当該一方の締約国の権限のある当局は、その申立てに理由があると認める場合には、この条約の規定に適合しない課税を回避するため、当該他方の締約国の権限のある当局と合意に達するように努めるものとする。

 第二十四条

外交官及び領事官の特権

 この条約の規定は、国際法の一般原則又は特別の協定の規定に基づく外交官又は領事官の租税上の特権に影響を及ぼすものではない。

 第二十五条

批准、効力発生及び適用範囲

(1)この条約は、批准されなければならない。批准書は、できる限りすみやかにソウルで交換されるものとする。

(2)この条約は、批准書の交換の日の後三十日目の日に効力を生じ、かつ、次のものについて適用する。

 (a)韓国においては、

 この条約が効力を生ずる年の一月一日以後に開始する各課税年度、各課税期間又は各事業年度において生ずる所得又は収入

 (b)日本国においては、

 この条約が効力を生ずる年の一月一日以後に開始する各課税年度において生ずる所得又は収入

 第二十六条

条約の終了及び適用範囲

 この条約は、無期限に効力を有する。ただし、いずれの一方の締約国も、この条約の効力発生の日から五年の期間が満了した後の各年の六月三十日以前に、外交上の経路を通じ他方の締約国に対して書面による終了の通告を行なうことができるものとし、この場合には、この条約は、次のものについて適用を終止する。

 (a)韓国においては、

 その通告が行なわれた年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度、各課税期間又は各事業年度において生ずる所得又は収入

 (b)日本国においては、

 その通告が行なわれた年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度において生ずる所得又は収入

末文

 以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けて、この条約に署名した。

 千九百七十年三月三日に東京で、英語により本書二通を作成した。

日本国のために

 愛知揆一

大韓民国のために

 李厚洛


所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約に関する交換公文

  (日本側書簡)

(訳文)

日本側書簡

 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日東京で署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約に言及し、かつ、日本国政府に代わつて次の了解を確認する光栄を有します。

配賦経費の計算

1 条約第六条(3)の規定に関し、他方の締約国の居住者又は法人が他方の締約国内に有する恒久的施設(以下「恒久的施設」という。)の産業上又は商業上の利得の決定に際してその恒久的施設への配賦を認められる経費は、次の方法によつて計算する。

 (1)配賦の対象となる経費の項目

 恒久的施設への配賦の対象となる経費の項目は、販売費、経営費及び一般管理費に属する費目であつてそれらの経費が支出された締約国の税法の規定により損金に算入することを認められているものとする。

 (2)配賦の対象となる経費の額

 恒久的施設への配賦の対象となる経費の額は、(a)その恒久的施設を有する当該一方の締約国の居住者若しくは法人の本店若しくは主たる事務所(当該他方の締約国内の者に対して販売を行なう支店を含む。)(以下「本店又は主たる事務所」という。)又は(b)その恒久的施設によつて支出された(1)の販売費、経営費及び硝般管理費の類のうち、それらの経費が支出された締約国の税法の規定により損金に算入することを認められている部分の額とする。

(3)配賦経費額の計算

 (a)本店又は主たる事務所によつて支出された経費の額のうち恒久的施設に配賦される経費の部分の額(以下「本店又は主たる事務所の経費の配賦額」という。)は、その本店又は主たる事務所が当該他方の締約国内の者と行なつた販売取引(非課税販売取引を除く。)に係る総収入金額が、その本店又は主たる事務所の全世界販売取引に係る総収入金額のうちに占める割合を、(1)及び(2)の規定に従つて計算された本店又は主たる事務所の経費の額に乗じて得られる額とする。

 (b)恒久的施設によつて支出された経費(租税を除く。)の額のうちその恒久的施設に配賦される部分の額(以下「恒久的施設の配賦経費額」という。)は、当該他方の締約国内の者との取引(非課税取引を除く。)の総額が当該他方の締約国内の者との取引の総額のうちに占める割合を、(1)及び(2)の規定に従つて計算された恒久的施設の経費(租税を除く。)の額に乗じて得られる額とする。

 恒久的施設によつて支出された経費としての租税の額のうちその恒久的施設に配賦される部分の額(以下「恒久的施設の配賦租税領」という。)は、当該他方の締約国内の者との取引(非課税取引を除く。)で租税が課され又はその利得に租税が課されるものの総額が、当該他方の締約国内の者との取引で租税が課され又はその利得に租税が課されるものの総額のうちに占める割合を、(1)及び(2)の規定に従つて計算された租税の額に乗じて得られる額とする。

 (c)(b)において、「租税」とは、文脈により、日本国の事業税又は韓国の営業税をいう。

産業上又は商業上の利得の源泉配分

2 条約第6条(5)の規定に関し、産業上又は商業上の利得の源泉の配分は、次の方法によつて行なう。

(1)購入及び販売からの所得

 恒久的施設を有する一方の締約国の居住者又は法人が当該一方の締約国において物品又は商品を購入し、これらを他方の締約国において販売することによつて取得する所得については、当該他方の締約国への配分は、純所得の段階において、恒久的施設の配賦経費額に恒久的施設の配賦租税額を加えた額を、(i)恒久的施設の配賦経費額に恒久的施設の配賦租税額を加えた額と(ii)本店又は主たる事務所の経費の配賦額との合計額で除して得られる当該他方の締約国への配分比率に従つて行なう。

(2)製造及び販売からの所得

 恒久的施設を有する一方の締約国の居住者又は法人が、プラント輸出のように当該一方の締約国において物品又は商品を直接製造し、これらを当該他方の締約国において販売することによつて取得する所得については、当該所得にその製造活動から生ずる所得が含まれている場合には、当該他方の締約国への配分は、純所得の段階において、恒久的施設の配賦経費額に恒久的施設の配賦租税額を加えた額を、(i)恒久的施設の配賦経費額に恒久的施設の配賦租税額を加えた額と(ii)本店又は主たる事務所の経費の配賦額と(iii)製造費用の額との合計額で除して得られる当該他方の締約国への配分比率に従つて行なう。

 前記の製造費用の額は、当該居住者又は法人が当該物品又は商品の製造にあたつて支出した総製造原価の額の十五パーセントとみなす。

 恒久的施設を有する一方の締約国の居住者又は法人が他方の締約国において物品又は商品を直接製造し、これらを当該一方の締約国において販売することによつて取得する所得については、当該他方の締約国への配分は、純所得の段階において、この(2)に規定する方式と同様の方式に従つて行なう。

(3)建築、建設、据付け又は組立てからの所得

 恒久的施設を有する一方の締約国の居住者又は法人が他方の締約国において建築、建設、据付け又は組立ての工事を行なうことによつて取得する所得については、両締約国の権限のある当局は、当該活動の実態を考慮して相互に協議するものとする。

 本大臣は、閣下が大韓民国政府に代わつて前記の了解を確認されることを要請する光栄を有します。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

 千九百七十年三月三日に東京で

  日本国外務大臣 愛知揆一

日本国駐在大韓民国特命全権大使 李厚洛閣下


  (韓国側書簡)

(訳文)

韓国側書簡

 書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

(日本側書簡)

 本使は、大韓民国政府に代わつて前記の了解を確認する光栄を有します。

 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

 千九百七十年三月三日に東京で

  大韓民国特命全権大使 李厚洛

日本国外務大臣 愛知揆一閣下


(大韓民国の経済開発を促進するための特別の奨励措置に関する交換公文)

  (韓国側書簡)

(訳文)

韓国側書簡

韓国の経済開発を促進するための特別の奨励措置

 書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日東京で署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための大韓民国と日本国との間の条約第十八条(3)(b)の規定に言及し、かつ、同条約の署名の日に有効である千九百六十六年の大韓民国の外資導入法(法律第千八百二号)の次の各条に定める措置が前記の項にいう「韓国の経済開発を促進するための特別の奨励措置であつてこの条約の署名の日に実施されているもの」であることを両政府の間で合意することを大韓民国政府に代わつて提案する光栄を有します。

 (i)第十五条(租税の免除及び軽減)−外国人投資企業又は外国投資家の所得に対する所得税又は法人税の免除又は軽減

 (ii)第二十一条(租税の免除及び軽減)−現金借款契約、資本財導入契約又は技術導入契約によつて取得する所得に対する所得税又は法人税の免除又は軽減

 本使は、さらに、この書簡及び日本国政府による前記の提案の受諾を確認する閣下の返簡が前記の条約第十八条(3)(b)の規定に基づく両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。

 本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

 千九百七十年三月三日に東京で

  大韓民国特命全権大使 李厚洛

日本国外務大臣 愛知揆一閣下


  (日本側書簡)

(訳文)

日本側書簡

 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。


(韓国側書簡)

 本大臣は、さらに、日本国政府が閣下の書簡に述べられた提案を受諾することを確認するとともに、同書簡及びこの返簡が削記の条約第十八条(3)(b)の規定に基づく両政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

 千九百七十年三月三日に東京で

  日本国外務大臣 愛知揆一

日本国駐在大韓民国特命全権大使 李厚洛閣下


(訳文)

 議定書

前文

 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約に署名するにあたつて、下名は、次のとおり協定した。

請求権・経済協力協定に基づく取引きに関する営業税の免除

1 日本国の居住者又は法人は、千九百六十五年六月二十二日に東京で署名された財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定第一条1(a)又は1(b)の規定に基づいて前記の条約の効力発生の日以後に契約される生産物又は役務の供与によつて取得する収入につき、大韓民国の営業税を免除される。

資本材{前1文字ママ}導入契約に関する営業税の免除

2 日本国の居住者又は法人は、千九百六十七年十二月三十一日以前に締結された契約であつて大韓民国の外資導入法に定める資本財導入契約に該当するものに基づいて行なわれた取引により取得する収入につき、大韓民国の営業税を免除される。

効力発生

3 この議定書は、前記の条約の効力発生の日に効力を生ずる。

末文

 千九百七十年三月三日に東京で、英語により本書二通を作成した。

日本国のために

 愛知揆一

大韓民国のために

 李厚洛