[文書名] 所得に関する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約
(所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約に関する交換公文)
(日本側書簡)
(訳文)
書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日東京で署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約に言及し、かつ、日本国政府に代わつて次の了解を確認する光栄を有します。
1 条約第六条(3)の規定に関し、一方の締約国の居住者又は法人が他方の締約国内に有する恒久的施設(以下「恒久的施設という。)の産業上又は商業上の利得の決定に際してその恒久的施設への配賦を認められる経費は、次の方法によつて計算する。
(1)配賦の対象となる経費の項目
恒久的施設への配賦の対象となる経費の項目は、販売費、経営費及び一般管理費に属する費目であつてそれらの経費が支出された締約国の税法の規定により損金に算入することを認められているものとする。
(2)配賦の対象となる経費の額
恒久的施設への配賦の対象となる経費の額は、(a)その恒久的施設を有する当該一方の締約国の居住者若しくは法人の本店若しくは主たる事務所(当該他方の締約国内の者に対して販売を行なう支店を含む。)(以下「本店又は主たる事務所」という。)又は(b)その恒久的施設によつて支出された(1)の販売費、経営費及び一般管理費の額のうち、それらの経費が支出された締約国の税法の規定により損金に算入することを認められている部分の額とする。
(3)配賦経費額の計算
(a)本店又は主たる事務所によつて支出された経費の額のうち恒久的施設に配賦される経費の部分の額(以下「本店又は主たる事務所の経費の配賦額」という。)は、その本店又は主たる事務所が当該他方の締約国内の者と行なつた販売取引(非課税販売取引を除く。)に係る総収入金額が、その本店又は主たる事務所の全世界販売取引に係る総収入金額のうちに占める割合を、(1)及び(2)の規定に従つて計算された本店又は主たる事務所の経費の額に乗じて得られる額とする。
(b)恒久的施設によつて支出された経費(租税を除く。)の額のうちその恒久的施設に配賦される部分の額(以下「恒久的施設の配賦経費額」という。)は、当該他方の締約国内の者との取引(非課税取引を除く。)の総額が当該他方の締約国内の者との取引の総額のうちに占める割合を、(1)及び(2)の規定に従つて計算された恒久的施設の経費(租税を除く。)の額に乗じて得られる額とする。
恒久的施設によつて支出された経費としての租税の額のうちその恒久的施設に配賦される部分の額(以下「恒久的施設の配賦租税額」という。)は、当該他方の締約国内の者との取引(非課税取引を除く。)で租税が課され又はその利得に租税が課されるものの総額が、当該他方の締約国内の者との取引で租税が課され又はその利得に租税が課されるものの総頽のうちに占める割合を、(1)及び(2)の規定に従つて計算された租税の額に乗じて得られる額とする。
(c)(b)において、「租税」とは、文脈により、日本国の事業税又は韓国の営業税をいう。
2 条約第6条(5)の規定に関し、産業上又は商業上の利得の源泉の配分は、次の方法によつて行なう。
(1)購入及び販売からの所得
恒久的施設を有する一方の締約国の居住者又は法人が当該一方の締約国において物品又は商品を購入し、これらを他方の締約国において販売することによつて取得する所得については、当該他方の締約国への配分は、純所得の段階において、恒久的施設の配賦経費額に恒久的施設の配賦租税額を加えた額を、(i)恒久的施設の配賦経費額に恒久的施設の配賦租税額を加えた額と(ii)本店又は主たる事務所の経費の配賦額との合計額で除して得られる当該他方の締約国への配分比率に従つて行なう。
(2)製造及び販売からの所得
恒久的施設を有する一方の締約国の居住者又は法人が、プラント輸出のように当該一方の締約国において物品又は商品を直接製造し、これらを当該他方の締約国において販売することによつて取得する所得については、当該所得にその製造活動から生ずる所得が含まれている場合には、当該他方の締約国への配分は、純所得の段階において、恒久的施設の配賦経費額に恒久的施設の配賦租税額を加えた額を、(i)恒久的施設の配賦経費額に恒久的施設の配賦租税額を加えた額と(ii)本店又は主たる事務所の経費の配賦額と(iii)製造費用の額との合計額で除して得られる当該他方の締約国への配分比率に従つて行なう。
前記の製造費用の額は、当該居住者又は法人が当該物品又は商品の製造にあたつて支出した総製造原価の額の十五パーセントとみなす。
恒久的施設を有する一方の締約国の居住者又は法人が他方の締約国において物品又は商品を直接製造し、これらを当該一方の締約国において販売することによつて取得する所得については、当該他方の締約国への配分は、純所得の段階において、この(2)に規定する方式と同様の方式に従つて行なう。
(3)建築、建設、据付け又は組立てからの所得
恒久的施設を有する一方の締約国の居住者又は法人が他方の縮約国において建築、建設、据付け又は組立ての工事を行なうことによつて取得する所得については、両締約国の権限のある当局は、当該活動の実態を考慮して相互に協議するものとする。
本大臣は、閣下が大韓民国政府に代わつて前記の了解を確認されることを要請する光栄を有します。
本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十年三月三日に東京で
日本国外務大臣 愛知揆一
日本国駐在大韓民国特命全権大使 李厚洛閣下
(韓国側書簡)
(訳文)
書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(日本側書簡)
本使は、大韓民国政府に代わつて前記の了解を確認する光栄を有します。
本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十年三月三日に東京で
大韓民国特命全権大使 李厚洛
日本国外務大臣 愛知揆一閣下
(大韓民国の経済開発を促進するための特別の奨励措置に関する交換公文)
(韓国側書簡)
(訳文)
書簡をもつて啓上いたします。本使は、本日東京で署名された所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための大韓民国と日本国との間の条約第十八条(3)(b)の規定に言及し、かつ、同条約の署名の日に有効である千九百六十六年の大韓民国の外資導入法(法律第千八百二号)の次の各条に定める措置が前記の項にいう「韓国の経済開発を促進するための特別の奨励措置であつてこの条約の署名の日に実施されているもの」であることを両政府の間で合意することを大韓民国政府に代わつて提案する光栄を有します。
(i)第十五条(租税の免除及び軽減)−外国人投資企業又は外国投資家の所得に対する所得税又は法人税の免除又は軽減
(ii)第二十一条(租税の免除及び軽減)−現金借款契約、資本財導入契約又は技術導入契約によつて取得する所得に対する所得税又は法人税の免除又は軽減
本使は、さらに、この書簡及び日本国政府による前記の提案の受諾を確認する閣下の返簡が前記の条約第十八条(3)(b)の規定に基づく両政府間の合意を構成するものとみなすことを提案する光栄を有します。
本使は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十年三月三日に東京で
大韓民国特命全権大使 李厚洛
日本国外務大臣 愛知揆一閣下
(日本側書簡)
(訳文)
書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。
(韓国側書簡)
本大臣は、さらに、日本国政府が閣下の書簡に述べられた提案を受諾することを確認するとともに、同書簡及びこの返簡が前記の条約第十八条(3)(b)の規定に基づく両政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。
本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。
千九百七十年三月三日に東京で
日本国外務大臣 愛知揆一
日本国駐在大韓民国特命全権大使 李厚洛閣下