データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 南北朝鮮共同声明における福田赳夫外相談

[場所] 
[年月日] 1972年7月4日
[出典] 日本外交主要文書・年表(3),587−588頁.外務省情報文化局「外務省公表集・昭和47年」,5−6頁.
[備考] 
[全文]

 今回韓国と北朝鮮の両首脳部の間で非常に周到な準備の上直接対話の道が開かれ、コミュニケに見られるが如く、朝鮮半島に於ける南北の関係が改善の方向に向っていると云うことは、日本政府としては同半島の緊張の緩和、ひいてはアジア全体の緊張緩和に資するところが大きいと信じ、我々としては心から、これを歓迎する。我々としては韓国政府首脳部がこの度の会談に臨んだ決意と勇断に対しては心から敬意を表する。南北の指導的立場にある人達が直接にヒザを交えて話し合う機会を持つに至ったことは、それ自身歴史的に意義を有すると思われる。南北双方の悲願である民族統一の実現には尚幾多の解決を要する問題があり、民族統一への道は必ずしも平坦ではないかもしれないが、双方が統一について自主的且つ平和的に解決することを合意したことは極めて重要であると思う。我々としてはこの南北会談の詳細な内容について今後とも韓国及び各方面からの情報を集め、南北間のかかる対話の発展が今後のアジア情勢に及ぼす影響も充分見究めながらわが国の朝鮮半島に対する政策に遺漏なきを期したいと考えている。韓国側の提案で昨年来南北の赤十字会談が開始され、予備会談、実務者会談が重ねられて来たが、今回の共同声明によってその一日も早い成功について双方が協力することが合意されたわけで、これは人道的観点からも歓迎すべきことであり、わが国としてもこの会談が速やかに所期の成果を収めることを強く希望する次第である。わが国としてはこの朝鮮半島に於ける南北会談の開始については相当前広に連絡を受けており、その時より当会談の成功を心から希望していた次第である。