[文書名] 第7回日韓定期閣僚会議共同コミュニケ
1 第7回日韓定期閣僚会議は,1973年12月26日東京において開催された。
会議には日本側からは,大平正芳外務大臣,福田赳夫大蔵大臣,中曽根康弘通商産業大臣及び内田常雄経済企画庁長官が後宮虎郎駐韓大使とともに出席した。韓国側からは,太完善副総理兼経済企画院長官,金東祚外務部長官,南悳祐財務部長官及び張礼準商工部長官が尹河●{王(たま)偏に廷}駐日臨時代理大使とともに出席した。
2 会議は,次の事項を議題として採択し,討議した。
(1) 両国関係一般及び国際情勢
(2) 両国の経済情勢
(3) 日韓経済関係
(a) 日韓貿易
(b) 経済協力
(4) 国際貿易経済問題
3 両国の閣僚は,国際情勢一般,特にアジア情勢について意見を交換した。
韓国側は,1973年6月23日,朴大統領が宣言した平和統一外交政策が,南北対話を促進し,平和を朝鮮半島に定着させることにより究極的な祖国の平和統一を成し遂げようという韓国政府の決断を示すものであり,また,理念と体制を異にするすべての国に門戸を開放し,これらの国と友好的かつ正常な関係を樹立することにより国際緊張緩和に寄与せんとする現実的なものであることを強調した。日本側は,そのような韓国政府の方針を歓迎し,朝鮮半島の速やかな平和的統一は,アジアひいては世界の平和に大きく資するものであり,日本政府としても心から支持するものである旨述べるとともに,南北双方の努力により,南北対話が一層進展することを強く希望する旨述べた。
4 両国の閣僚は,アジア地域の繁栄と発展のための国際協力の重要性を認識し,両国が引き続き国連その他の国際的な機構及び会議を通じて協力することが有益であることを再確認した。
5 両国の閣僚は,最近の日韓関係について検討し,率直な意見を交換した。その結果,両国の関係は,一衣帯水の関係にある日韓両国が,友好善隣関係を維持発展させて行くことの重要性を再確認し,主権尊重,内政不干渉,互恵平等の諸原則に基づき,広く国民的基盤に立脚した公正な関係の発展のため一層努力を重ねるべきことに意見の一致をみた。両国の閣僚は,また,両国民の間の相互理解をさらに深める必要性を認め,このため,文化,学術等幅広い交流を促進することが望ましいことに意見の一致をみた。
6 両国の閣僚は,今後とも在日韓国人の福祉の増進につき,外交経路を通じ,また必要に応じその他の方法により,適切な話し合いを行うことに意見の一致をみた。
韓国側は,在日韓国人信用組合の昇格問題について日本側の好意的配慮を要請したのに対し,日本側は,種々問題はあるが検討する旨約した。
7 両国の閣僚は,両国の経済情勢について検討した。
日本側は,日本政府は物価の安定に政策上最大の優先度をおいて,財政金融両面における需要抑制策に加え諸般の物価対策を実施していることを強調し,日本経済の基本的課題は内外の新たな情勢に即応しつつ,物価の安定,国際収支の均衡及び資源の制約に配意した適正な成長を維持し,国民福祉の充実と国際協調の推進をはかることにある旨説明した。
韓国側は,韓国の第3次経済開発5カ年計画及び経済開発長期展望に言及し,インフレのない持続的な安定成長のもとの経済の自立と国民福祉の充実及び国際協調は韓国政府の基本目標でもあり,韓国政府はさらに,セマウル運動,重化学工業計画,1972年8月3日の措置等により,農漁村経済の開発,輸出の拡大,重化学工業の建設に重点を置いた経済政策を推進している旨説明した。
8 両国の閣僚は,日韓貿易が最近好調に推移し,拡大均衡の方向に進んでいることを歓迎し,両国が今後ともこのような貿易関係の健全な発展に一層努力することにつき意見が一致した。また両国の閣僚は,1973年6月14日及び15日の両日東京において第10回日韓貿易会議が開催され,日韓貿易の均衡の問題を含む両国貿易の拡大に関し率直な意見の交換が行われたことに留意した。
9 両国の閣僚は,両国間の経済協力について意見を交換し,この関連で,特に,最近の深刻な国際経済情勢が両国経済に与える影響に留意した。
韓国側は,第3次経済開発5カ年計画の現状を説明し,同計画の事業に関し,引続き,農業開発をはじめとする経済,社会基盤施設の整備,拡充に対する日本政府の協力を期待する旨述べた。
日本側は,韓国側の説明に理解を示し,具体的案件に対し,所要の検討を行つた上,適切なものにつき協力を行う旨述べた。
両国の閣僚は,第3次経済開発5カ年計画が終了する時期においては,日韓経済協力が政府ベースの協力から民間ベースの協力を主体とする段階に移るであろうことに意見の一致をみた。
10 両国の閣僚は,両国間の民間経済交流について検討した。
韓国側は,第3次経済開発5カ年計画のうち,特に重化学工業関連部門における民間経済交流を促進するため,日本政府が適切な支援を行うことを要請した。
日本側は,両国間の民間経済交流が今後とも両国国民の善隣友好及び共同利益増進のために行われることを期待する旨述べた。
11 両国の閣僚は,世界経済全体の拡大と繁栄が両国経済の発展にきわめて重要であることに意見が一致した。両国の閣僚は,先般東京で開催されたガット閣僚会議の成果を歓迎するとともに,貿易問題についての多数国間交渉により世界貿易の拡大がもたらされることにつき強い期待を表明し,両国は,両国間の緊密な関係にも留意しつつ,他の諸国と協調して,この交渉の成功のため協力すべきことにつき意見の一致をみた。
両国の閣僚は,また,国際通貨制度の改革のための話合いに言及し,この話合いの結果,国際経済関係の発展のための安定した基盤が速やかに作り出されることが望ましいことに意見が一致した。
12 両国の閣僚は,世界経済ひいては両国経済の発展のため,食糧,工業用原材料及びエネルギー資源の安定的供給が不可欠であるとの共通の認識から,これらの分野における国際協調の重要性を強調し,特に最近の石油問題については,速やかに事態が改善されることについての共通の願望を強く表明した。
また,両国の閣僚は,日本と韓国との間の緊密な経済及び貿易関係の見地から,現下の情勢から生ずる諸困難を克服するにあたり,可能な限りの協力を行うべきことに意見の一致をみた。
13 両国の閣僚は,今回の会議が終始友好的な雰囲気のうちに運営され,両国の相互理解と友好協力関係の増進のために極めて有益であつたことを認め,第8回日韓定期閣僚会議を来年両国政府が合意する時期にソウルで開催することに合意した。
14 韓国側は,このたびの第7回日韓定期閣僚会議に際して日本側から示された歓迎に対して深甚な謝意を表明した。