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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第8回日韓定期閣僚会議共同コミュニケ

[場所] ソウル
[年月日] 1975年9月15日
[出典] 外交青書20号,100−102頁.
[備考] 
[全文]

1.第8回日韓定期閣僚会議は,1975年9月15日ソウルにおいて開催された。

  会議には,日本側からは,福田赴夫副総理兼経済企画庁長官,宮澤喜一外務大臣,安倍晋太郎農林大臣,河本敏夫通商産業大臣が西山昭駐韓大使とともに出席し,大蔵大臣に代わり吉田太郎一大蔵省財務官が出席した。

  韓国側からは,南悳祐副総理兼経済企画院長官,金東祚外務部長官,鄭韶永農水産部長官,張禮準商工部長官が金永善駐日大使とともに出席し,財務部長官に代わり南相晋財務部次官が出席した。

2.会議は,次の事項を議題として採択し,討議した。

 (1) 両国関係一般および国際情勢

 (2) 両国の経済情勢

 (3) 日韓経済関係

  (イ) 貿易

  (ロ) 経済協力

3.両国の閣僚は,現下の国際情勢一般およびアジア情勢について隔意なき意見を交換した。

 両国の閣僚は,日韓両国の善隣,友好,協力関係がアジアの平和と安定に大きく貢献するとの認識を共にした。

  両国の閣僚は,この地域における緊張緩和を促進し,平和を維持するため,両国が引き続き国連その他の国際的な場を通じて緊密に協力していくべきであることを再確認した。

4.韓国側閣僚は,朝鮮半島の緊張緩和と平和定着,更に平和的統一の達成のために,1970年以来一連の政策的努力を根気強く行つてきたこと,特に今年7月4日南北対話の無条件再開を促したことを説明し,今後とも忍耐と誠意をもつて南北対話の速やかなる再開のための努力を継続することを表明した。

  日本側閣僚は,このような韓国政府と国民の努力を高く評価し,朝鮮半島の緊張緩和と平和のために南北対話が速やかに再開され,統一が平和的な方法で達成されることを強く希望した。

5.両国の閣僚は,最近の日韓関係について検討し,意見を交換した。

  両国の閣僚は,その間両国間において困難な問題が発生したが,日韓双方の努力により両国間の友好関係が引き続き維持されてきたことを認め,両国の発展と繁栄が密接な関係にあることにてらし,広く国民的基盤に立脚した善隣友好関係を発展させるよう今後とも政治,経済のみならず学術,文化等を含むあらゆる分野において,交流と協力を更に一層密接に行うことについて意見の一致をみた。

  韓国側は,在日韓国人の福祉増進に関連した諸問題に関し,日本政府の格別な配慮を要望し,これに対し日本側は,好意的に検討することを約束した。

  また,両国の閣僚は,1974年1月30日に両国政府間で署名された日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の北部の境界画定に関する協定および日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定が,できる限り速やかに発効することが望ましいとの希望を表明した。

6.両国の閣僚は,両国の経済情勢に関して検討した。

  日本側は,日本政府が物価安定の定着を図りつつ,景気を着実に回復させていくことを最重要の課題として諸般の施策をとつていることを強調し,現在策定中の新経済計画において内外の新たな情勢変化に応じ,適切な成長,物価の安定,国際収支の均衡を維持し,国民福祉の充実と国際協調の推進を図る新たな方途を検討している旨説明した。

  韓国側は,韓国の第3次経済開発5カ年計画の推進経過およびこれを完成するための諸努力について言及し,特に1973年下半期以後の石油問題等による外部要因からの衝撃を除去するための1974年初め以来実施した一連の経済施策について説明した。

  また,韓国側は,第3次経済開発5カ年計画の成果を土台とした第4次経済開発5カ年計画については,成長,衡平,能率の基本理念に基づき,経済成長の自立構造を構築し,社会開発の拡大および社会的衡平を増進し,国民経済の能率向上と技術革新を期することに重点をおくと述べた。

7.両国の閣僚は,最近の国際的不況により世界貿易が停滞傾向にあることに対し,懸念を表明した。

  両国の閣僚は,日韓貿易の拡大均衡の必要性に留意し,今後の貿易関係の健全な発展を達成するため,相互に積極的な努力を傾注することにつき意見が一致した。また,両国の閣僚は,本年中に開催することが合意されている第12回日韓貿易会議で両国貿易の拡大について率直な意見の交換が行われることを希望する旨表明した。

8.両国の閣僚は,両国間の経済協力に関して意見を交換した。

  両国の閣僚は,過去10年間両国間の経済協力が拡大し,韓国の総対外経済協力のうち相当な部分を占めるにいたり,全般的な両国関係の増進に大きく寄与していることに満足の意を表し,両国の善隣友好および経済関係の強化に貢献するよう両国間経済協力が今後も行われることが望ましいことについて意見の一致をみた。

  両国の閣僚は,第3次経済開発5カ年計画の現状に関し,特に最近の国際経済情勢が同計画に与えている影響につき留意し,同計画の事業に対する政府ベースの協力に関し,引き続き農業開発をはじめとする経済,社会基盤施設の整備拡充に関する具体的案件に対し,政府間実務者レベルの協議を通じ所要の検討を行つた上適切な案件につき協力が行われることに意見の一致をみた。

  両国の閣僚は,先般開催された国際復興開発銀行主催の対韓国協議グループ会議において,韓国が,1970年代後半期間中に所要の経済成長を達成するためには,民間ベースの資金とあわせ引き続き長期低利の借款を含む外資を必要とすることが留意されたことに注目しつつ,今後韓国の第4次経済開発5カ年計画事業のうち政府ベースの協力を必要とする案件については,同計画が成立した後,政府間実務者レベルの協議を通じ検討の上適切な案件につき具体化していくことに意見の一致をみた。

  両国の閣僚は,両国間の科学,技術協力がこれまで順調に進行してきたことに留意し,今後もこの分野の協力を充実していくことに意見の一致をみた。

9.両国の閣僚は,両国間の民間経済交流の発展が両国国民の善隣友好および共同利益の増進に寄与しており,今後ともこの分野の交流が一層増大されることが望ましいことに意見の一致をみた。

10.両国の閣僚は,今回の会議が終始友好的な雰囲気の中で運営され,両国の相互理解と友好協力関係の増進のために極めて有益であつたことに対し満足の意を表明した。

  また,両国の閣僚は,第9回日韓定期閣僚会議を東京で開催すること,およびその細目は今後外交経路を通じて決定することに合意した。

  日本側閣僚は,このたびの第8回日韓定期閣僚会議にあたり韓国政府と同国民から示された歓迎に対し,深甚な謝意を表明した。