[文書名] 第11回米韓安全保障協議会共同声明
1.第11回米韓安全保障協議会は,1977年7月25,26日の韓国ソウルでの年次安全保障協議会における韓国及び米国の合意にもとづいて,1978年7月26,27日カリフォルニア,サンディエゴで開催された。
ハロルド・ブラウン国防長官,盧載鉉国防部長官,米統合参謀本部議長,デービッド・C・ジョーンズ将軍,韓国合同参謀本部議長・金鍾煥将軍及びその他両国政府の外務,国防省の幹部がこの会に参加した。
会に先立ち,盧長官一行は,国防長官の招待により,米国の各種軍事基地及び国防産業施設に対する,有益かつ建設的な訪問を行つた。
2.両長官は,アジア・太平洋地域の安全保障の情勢特に,韓国及び米国の安全保障を強調しつつ広範に意見を交換した。
双方は韓国に対する軍事的脅威について,共同で評価し,その脅威に対処するための,韓国と米国の連合防衛力について注意深く分析した。また,北朝鮮が近代兵器の増加と自らの軍事産業の拡大によつて,その攻撃的軍事能力を増強しつづけていることに留意し,両長官は北朝鮮の韓国に対する全般的な軍事的脅威は依然重大である旨合意した。
3.韓国の防衛体制について緊密に分析した後,両長官は,朝鮮半島における戦争再発を防止する為,韓国が防衛力を十分な水準に維持することが緊要であるとの結論に達した。双方は,韓国の防衛力の発達は,朝鮮半島における軍事的バランスを維持するために重要な役割を果すのみならず,北東アジア地域全体の平和と安定に対して明確な貢献を果すものである旨,留意した。
4.ブラウン長官は米国の韓国に対する防衛公約の保証と,米地上戦闘部隊の撤退計画の部分的修正は韓国に対する米国の防衛公約と朝鮮半島における米国の基本的な防衛戦略のいずれについても如何なる変化も意味しないとのカーター大統領の1978年4月21日の特別声明を再言するとともに,盧長官に対し1954年の米韓相互防衛条約は依然完全に有効であり,条約に従つて,武力攻撃に際し,韓国を防衛するため迅速かつ効果的な支援を行うとの米国の決意は強固なものである旨保証した。これに関連してブラウン長官は韓国が引続き米国の核の傘の下におかれていることを再確認した。
ブラウン長官は,北朝鮮もその他の国も米国の継続した強固な防衛公約について疑いや誤解を持つべきではない旨明らかにした。
5.両長官は米地上戦闘部隊の撤退は,その地域の平和と安定及び朝鮮半島における軍事バランスを保つやりかたで行われる旨合意した。
盧長官は,米国はバランスに重大な変化を及ぼす情勢について,韓国と緊密に協議し分析して,必要な場合には計画を修正する旨のブラウン長官の保証を歓迎した。
6.両長官は,韓国からの米地上戦闘部隊の第一陣撤退の実施について,両国政府間で緊密な協議が行われたこと,及びこの種協議が引続き行われるべきことに合意した旨明らかにした。又この第一陣撤退として3,400人が1978年末までに韓国から撤退することを確認した。
両長官は,計画された撤退に関連して,補完措置が撤退に先立つて又は並行して実施される旨合意した。これに関連してブラウン長官は,在韓米空軍部隊の増強と米韓連合軍司令部の創設はこの地域における他の米国の軍事的プレゼンスとあいまつて韓国に対する侵略を防衛し抑止するとの米国の強い決意をあらわすものである旨述べた。ブラウン長官は米国は朝鮮半島周辺に海軍部隊の展開を継続する旨再確認した。
7.ブラウン長官は,米国は議会との協議とその承認の下に,韓国の防衛力の増強特に韓国軍戦力増強計画に対する積極的な支援を継続するつもりである旨,再言した。
ブラウン長官は更に,米国は最新の戦闘即応態勢を維持するため,韓国に対し,戦争予備物資の増強を続ける旨,盧長官に対し確約した。盧長官は,戦争予備物資の適切な備蓄を確立するための物資の提供が韓国にとつて必要である旨,説明した。
8.韓国の防衛産業の発展に関連して,両長官は専門家の交換訪問を含む各種の手段を通じて,両国政府間の防衛産業の研究,開発分野における緊密な協力が行われていることを確認しつつ,韓国の防衛産業の発展と,それに関連した技術に対する双方の協力関係を発展させる方向で両国政府が緊密な努力を継続する旨合意した。
9.両長官はティームスピリット78のような連合軍事演習は米韓の適正な防衛態勢の効率性を評価するに極めて効果的な意味をもたらすものであるとの結論に達した。
双方は,この種演習を毎年継続する旨,合意した。
10.両長官は,韓国の防衛における作戦連用上の効率性を増大することを目的として,1978年中に設置されることになつている米韓連合軍司令部は両国間の軍事協力の新しい時代を画すものであるとの所感を表明しつつ,両国政府は,常に,その作戦運用上の状況を共同で検討し,連合軍司令部の効率性を継続して高めることについて合意した。
両代表は,連合軍司令部が創設された後,両国政府は,その軍事委員会における緊密な協力と調整を通じ,米韓連合軍司令部を強化する旨合意した。
11.両長官は,休戦態勢を維持するうえで,関係当事者間における唯一の既存の法的取り極めである休戦協定に替りうる他の取り極めがない限り,国連軍司令部は平和維持の機構としての働きを継続する旨,再確認した。
12.両長官は,韓国に対する如何なる武力攻撃も成功することはありえないし又朝鮮問題の解決は,朝鮮半島の緊張緩和のための,全ての関係国の相互努力を通じてのみ達成されるものである旨明らかにした。これに関連して双方は,南北朝鮮間の不可侵協定に関する韓国の提案を含めた,朝鮮半島における緊張緩和と平和の確率の為に両国政府が提案してきた重要な政策について留意した。双方は,又,北朝鮮が,1973年に北朝鮮によつて中断された南北対話の再開に応ずることにより,朝鮮半島の平和的解決に対する態度を明確にすべき旨,勧告した。
これに関連して,ブラウン長官は,南北朝鮮間の経済協力機構の創設に関する1978年6月23日の朴大統領の提案に対し,米国政府を代表して歓迎の意を表明するとともに,北朝鮮が,この建設的提案に肯定的に対応すべき旨求めた。ブラウン長官は,又,米国は韓国の参加なしには,北朝鮮との,朝鮮の将来についての如何なる交渉にも応じない旨,述べた。
13.双方は,年次安保協議会の重要性と成果について留意し,次回,年次安保協議会は韓国政府の招待により,1979年韓国において開催される旨,合意した。
14.盧長官は,彼とその代表団に対し,米政府からもたらされた好意と歓待,ならびに本協議会の成功に貢献した卓抜な配慮について,ブラウン長官に対し感謝の意を表明した。