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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第10回日韓定期閣僚会議共同コミュニケ

[場所] ソウル
[年月日] 1978年9月4日
[出典] 外交青書23号,393−396頁.
[備考] 
[全文]

1.第10回日韓定期閣僚会議は1978年9月3日及び4日の両日,ソウルにおいて開催された。

  会議には,日本側からは,園田直外務大臣,村山達雄大蔵大臣,中川一郎農林水産大臣,河本敏夫通商産業大臣及び前田治一郎経済企画政務次官が須之部量三駐韓大使とともに出席した。

  韓国側からは,朴東鎮外務部長官,金竜煥財務部長官,張徳鎮農水産部長官,崔●{王に玉}圭商工部長官,張礼準動力資源部長官及び徐錫俊経済企画院次官が金永善駐日大使とともに出席した。

2.会議は,次の事項を議題として採択し,討議した。

 (1) 国際情勢及び両国関係一般

 (2) 両国の経済情勢及び日韓経済関係

 (3) その他

3.両国の閣僚は,最近の国際情勢一般特にアジア情勢について隔意なき意見交換を行つた。

  両国の閣僚は,アジア地域における平和と安定を一層促進することの重要性を認識するとともに,日韓両国が善隣友好協力関係を維持発展させることは,この地域の平和と安定に大きく貢献するものであることにつき認識を共にした。

  また,両国の閣僚は,両国がこの地域における平和と安定を一層促進するため国際的な場において引続き緊密に協力していくことを再確認した。

  日本側閣僚は,先般署名された日中平和友好条約は,両締約国間に長期にわたる安定的な平和友好関係を確立することとなり,ひいてはアジアの平和と安定にも貢献するものとなろうとの見解を表明し,また,朝鮮半島に関しては,従来の基本的政策が同条約の締結により特に何らかの変更がもたらされるものではない旨述べた。韓国側閣僚は,日本側閣僚の説明に留意し,同条約が東アジアの平和と安定に寄与することを希望した。

4.両国の閣僚は,朝鮮半島における平和の維持が東アジアの平和に寄与するところが大であるとの見解を表明した。

  韓国側閣僚は,朝鮮半島情勢に関連し,同地域の緊張緩和と平和定着,更に平和的統一達成のために,1970年以来一連の政策的努力を根気強く行なつて来たこと,特に本年6月23日南北対話の無条件再開を呼びかけるとともに,朝鮮半島の平和的統一基盤構築を目的として南北間の経済協力の促進のための協議機構の設置等を提案した朴大統領の特別談話に言及し,今後とも引続き平和的統一達成のために忍耐と誠意をもつて現実的且つ合理的な努力を行なうことを表明した。

  日本側閣僚は,このような韓国政府と国民の努力を高く評価し,朝鮮半島の緊張緩和と平和定着のために南北対話が速やかに再開され,朝鮮半島の統一が平和的な方法で達成されることを強く希望した。

  韓国側閣僚は,在韓米地上軍撤退問題,米国の対韓防衛公約問題等に関連して,韓米両国が最近開かれた定期安保協議会等の場において緊密な協議を行つていることを説明した。

  日本側閣僚は,在韓米地上軍撤退問題に関し,韓米両国が密接な協議を行つていることに関心をもつて留意し,同問題は今後ともこの地域の平和と安定が損われないような形で取り進められることが重要であるとの考え方を改めて表明した。

5.両国の閣僚は,最近の日韓関係について検討し,意見を交換した。

  両国の閣僚は,両国間の友好関係が順調に発展していること,特に「日韓大陸棚協定」が本年6月22日に発効したことにつき深い満足の意を表明した。両国の閣僚は,エネルギー源を確保するため共同開発の円滑な実施をはかると共に,これを通じ両国の相互信頼と善隣友好協力関係がより一層増進されることにつき強い期待を表明した。

  両国の閣僚は,両国の発展と繁栄が相互に密接な関係にあることにかんがみ,広く国民的基盤に立脚した善隣友好協力関係が発展することが望ましいことを認識し,今後とも政治,経済のみならず,学術,教育,文化等を含むあらゆる分野において,交流と協力を一層緊密に進めることの必要性について意見の一致をみた。

  両国の閣僚は,両国の青少年の交流が両国の相互理解の増進に重要であることにつき認識を共にし,両国の将来をになう青少年の交流を今後とも一層拡大するよう努力することにつき意見の一致をみた。

  韓国側閣僚は,在日韓国人の福祉増進に関連した諸問題に関し,日本政府の格別な配慮を要望し,これに対し日本側閣僚は,引き続き好意的に検討することを約束した。

6.両国の閣僚は,最近の海洋秩序が大きく変りつつあることに留意し,新しい海洋秩序の成立のための国際的な努力において両国が緊密に協調していくこと,及びかかる新しい海洋秩序をふまえつつ,両国間の円滑な漁業関係のため両国が密接に協力していくことが望ましいことに意見の一致をみた。

7.両国の閣僚は,両国の経済情勢に関して検討した。

  日本側閣僚は,日本政府が物価の安定に配慮しつつ,内需中心の需要拡大を通じ7%の1978年度実質経済成長の目標の達成をはかるべく,財政金融両面にわたる各般の景気対策を実施してきていることを指摘し,さらに今般,最近の経済情勢をふまえ,9月2日の経済対策閣僚会議で総合経済対策を決定したところであり,もつて世界経済の健全な発展にも貢献する所存である旨説明した。

  韓国側閣僚は,1977年の韓国経済が物価,国際収支及び経済成長において,安定と成長を維持したことを説明し,1978年にはかかる安定と成長を一層助長すべく,国民貯蓄の増大,物価の安定等の安定基盤の構築,産業の国際競争力強化を通ずる貿易の拡大及び社会開発等に施策の重点を置いていることを説明した。

8.両国の閣僚は,世界経済の安定的発展を確保するとの観点に立つて,自由な国際貿易の維持発展のために努力することが必要であることに意見の一致をみた。

  両国の閣僚は,日韓両国の貿易不均衡の推移に留意するとともに,日韓貿易の均衡的拡大の必要性につき認識しつつ,両国の利益の増進に資するべく今後の貿易関係の健全な発展の実現のため相互に積極的な努力を傾注することにつき意見の一致をみた。

  また,両国の閣僚は,第15回日韓貿易会議を本年中に開催することとし,同会議において両国貿易の発展について率直な意見の交換が行われることを希望する旨表明した。

9.両国の閣僚は,両国間の経済協力に関して意見を交換した。

  両国の閣僚は,両国間のこれまでの経済協力が全般的な両国関係の増進に寄与したことに満足の意を表するとともに,日韓経済協力関係の順調な維持,発展が今後とも両国の善隣友好関係の促進,経済関係の強化及びアジアの平和と繁栄に貢献するものであるとの期待の意を表明した。

  両国の閣僚は,韓国経済の着実かつ継続的な発展に伴い,日韓経済協力が民間ベース主体に移行しつつあることにつき共通の認識を深めるとともに,政府ベースの協力については,経済,社会基盤施設の整備拡充等,韓国の均衡ある経済,社会発展の為開発が必要とされる分野を中心に,政府間実務者レベルの協議を通じ検討の上,適切な案件につき具体化していくことを再確認した。

10.両国の閣僚は,両国間の科学技術協力がこれまで順調に進行してきたことに留意し,今後も開発が必要とされる分野を中心に協力を進めていくことについて意見の一致をみた。

11.両国の閣僚は,両国間の民間経済交流について意見を交換した。

  両国の閣僚は,民間経済交流の順調な発展に留意しつつ,両国国民の善隣友好及び共同利益の増進に資する見地から今後ともこの分野の交流が一層増大されることが望ましいことについて意見の一致をみた。

12.両国の閣僚は,これまで日韓定期閣僚会議が両国間の善隣友好協力関係増進に多大な寄与をして来たことを高く評価し,今回の会議も終始友好的な雰囲気の中で運営され,両国の相互理解と友好協力関係の増進のために極めて有益であつたことに対し満足の意を表明した。

  また,両国の閣僚は,第11回日韓定期閣僚会議を来年東京で開催すること,及びその細目は今後外交経路を通じて決定することに合意した。

  日本側閣僚は,第10回日韓定期閣僚会議に際し,韓国政府と同国民から示された歓迎に対し,深甚な謝意を表明した。