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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 北朝鮮の米国及び韓国との三者会談提案文書,ソウル当局に送る書簡

[場所] 平壌
[年月日] 1984年1月10日
[出典] 外交青書28号,522ー531頁.
[備考] 
[全文]

 我々は1月10日,現情勢に関して祖国の自主的平和統一を促進するための新たな措置を取ることについての問題を討議し,この書簡をソウル当局に送る。

 祖国が分裂してから約40年になろうとしており,休戦が実現してからすでに30年以上の歳月が流れた。

 これまで我が民族は一様に平和統一を渇望してきた。

 しかし今日,我が国には全民族の念願に反し緊張状態がこれまでになく激化し、いつまでも戦争がぼっ発し得る極めて危険な情勢が生じている。

 心痛むことは,民族内部の不信と反目は日増しに激化し,民俗統一の展望はますます暗くなっている。はなはだしきに至っては南の地は核前哨基地にまで化した。

 いま朝鮮半島で再び戦争が起これば,この戦争は過去のような通常の戦争ではなく核戦争になるということは火を見るより明らかである。

 我が民族が核の惨禍の犠牲となり,平和統一の可能性を完全に失うことになるこの重大な事態の発展を何人も手をこまねいて傍観してはならない。

 我々は何としても民族最大の宿願である国の平和統一を我々の世代に実現すべ

きであり,この崇高な目的のために全民族が力を合わせて難局打開の道を求めるべきである。

 現情勢において国の平和統一を実現するためにはなによりもまず,北と南の間の先鋭化している軍事的対峙状態を解消し,緊張状態を緩和することが必要である。

 現在のように北と南が互いに大砲を据え,銃剣を向き合わせている条件の下では到底,対話と平和統一の環境を造り出すことはできない。

 我が国で北と南の間の軍事的対峙状態を解消し,緊張状態を緩和するためにはまず,米国との間の問題を解決すべきである。

 それは米国が朝鮮休戦協定の締約の一方となっているばかりでなく,南朝鮮に自己の軍隊を駐留させ,すべての軍事統帥権を掌握しているからである。

 したがって,我が方は今回この問題について米国と会談することを新たに提起した。

 それと共に我が方は,我が方と米国の間のこの会談に,我が国に生じた緊張状態と直接関連している他の一方であるソウル当局も同等の資格で参加することができるものと考える。

 我が方は,三者会談を行うならば我が国における軍事的対峙状態を解消し,緊張状態を緩和するあらゆる側面で十分な保証をもって,解決されることができるものと考える。

 三者会談では,北と南の間の緊張状態を解消し,強固な平和を保障するための対策として朝鮮休戦協定の締約双方である我が方と米国との間に休戦協定に代わる平和協定を締結する問題を討議することができ,また北と南の間の不可侵宣言を採択する問題を討議することができるであろう。

 我が方と米国との間の平和協定には主に米軍と核兵器をはじめとする軍備装備を撤収させ,強固な平和を保障する条件に関する問題を含ませることができるし、北と南の間の不可侵宣言には南北が互いに相手側に反対する兵力行使をせず,軍備を縮小させる問題を含ませることができると考える。

 三者会談ではその他米国とソウル当局が提起する諸問題も討議することができるであろう。

 三者会談でこのような問題が解決され,緊張緩和の保証が与えられ,祖国統一の前提が整った後,北と南の間の対話を開き,統一問題を協議することができるものと我々は考える。

 北と南の対話では,すでに双方が7・4南北共同声明で合意し,民族に対してその履行を確約した祖国統一の三大原則に準拠して国の統一問題を自主的,平和的に民族の団結した力によって解決することに関する問題を協議すべきであろう。

 国の自主的平和統一のためには北と南の当局を含め各党,各派,各界各層人土を網羅する全民族大会のような政治協商会議が招集されるべきであり,ここで北と南にある制度をそのままにして,二つの地域がそれぞれ自治制を実施する中立的な連邦国家を創立する問題を討議することができるであろう。

 もし,ソウル当局に統一国家創設に関する他の合理的な案があるならばそれも合わせて討議することができよう。

 三者会談に関する我が方の新たな提案は我が国において実質的に緊張状態を除去し,平和を確固として保証し,平和統一に有利な局面を開くための画期的かつ転換的な発起である。

 三者会談は板門店かその他の便利な第三国で行うことができよう。

 我々は緊張緩和と祖国統一の新たな序章となる三者会談が一日も早く招集されるべきであると考え,ソウル当局が我が方の提議に深い注意をめぐらし,肯定的な呼応を示すことを期待する。

   朝鮮民主主義人民共和国中央人民委員会・最高人民会議常設会議合同会議