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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日朝関係に関する竹下登総理大臣の国会答弁

[場所] 東京
[年月日] 1989年3月30日
[出典] 国会会議録検索システム,第百十四回国会 衆議院 予算委員会議録 第九号
[備考] 
[全文]

村山(富)委員* まず、質問の冒頭に、政府の朝鮮半島政策について質問をいたします。

 アジアにおける緊張緩和と平和軍縮の課題にとって、朝鮮半島情勢は決定的に重要な問題であります。ニューデタントの時代を迎えた国際情勢の流れを、朝鮮半島を含む東北アジアに確実に定着させることが緊急の課題であります。そのためにも、政府は、日本と朝鮮民主主義人民共和国との間の関係正常化に向けて、今こそ思い切った政策を打ち出すべきであると思います。

 日本と朝鮮半島との関係における原点は、かつての三十六年間の植民地支配に対する反省と贖罪であります。日本政府は、朝鮮民主主義人民共和国が誕生してから四十年以上を経た今日まで、共和国とそこに住む朝鮮民族に対して一言の謝罪をしておりません。こうして朝鮮民主主義人民共和国に対する植民地支配の清算が全く行われなかったもとでの両国政府は、現在もなお非正常なままであり、共和国に対する敵視政策を非難されてきたさまざまな非友好的な政策が今日なお堅持されております。

 日本政府は、今日までの対朝鮮政策を根本的に是正し、改善に向けての基本姿勢を明示すべきであります。現在、日朝関係を改善する上で求められていることは、外交テクニックや接触の方法などではありません。基本姿勢を正し、その上で日朝間の懸案事項の打開に向けて具体的な対応と措置に取り組むべきであります。この際、総理の見解を求めます。

竹下内閣総理大臣 お答えをいたします。

 既に累次の機会に明らかにしておりますとおり、日本政府及び日本国民は、過去における我が国の行為が近隣諸国の国民に多大の苦痛と損害を与えてきたことを深く自覚して、このようなことを二度と繰り返してはならないとの反省と決意の上に立って平和国家としての道を今日まで歩んできたわけでございます。そのような自覚と反省は、歴史的にも地理的にも我が国と最も近接しております朝鮮半島との関係においても、とりわけ銘記さるべきものであると考えております。

 朝鮮半島をめぐる情勢が新たな局面を迎えておりますこの機会に、改めて、同地域のすべての人々に対し、そのような過去の関係についての深い反省と遺憾の意を表明したい、このように思います。

 日朝関係について申しますならば、そのような過去の不幸な時期の後も今日に至るまで疎遠であったことは事実でございます。政府としては、朝鮮半島問題は南北両当事者の話し合いにより解決さるべきであるとの基本的立場に立ちつつ、新たな決意を持って対朝鮮半島外交を進めていきたいと考えておるところでありまして、朝鮮民主主義人民共和国との間においても、朝鮮半島をめぐる新たな情勢に配慮しつつ、さきに述べました認識に立脚して関係改善を進めていきたい、このように希望しておるところでございます。

 政府は、そのような観点から、昨年来、日朝間の諸懸案のすべての側面について、前提条件なく話し合いをしたいとの希望を表明しているところでございますが、先方よりの前向きの反応を得て、できる限り早期に対話が実現し、双方が誠意を持って話し合いを行うことができることを期待をいたしておるというところでございます。

{* 村山(富)委員は村山富市代議士}