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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 盧泰愚韓国大統領の「朝鮮半島の非核化と平和構築のための宣言」

[場所] ソウル
[年月日] 1991年11月8日
[出典] 朝鮮日報統韓研究所データベース
[備考] 翻訳 玄大松
[全文]

私は、今日、朝鮮半島、そして東北アジアに対する恒久的な平和を構築するための、重要な決断を明らかにしようとします。

今日の世界は、さる半世紀間の暗鬱だった冷戦時代の遺産を清算して平和を具現するために、以前の時代には考えられなかった果敢な措置を取りつつあります。

昔の敵対勢力が手を結んで、人類共同の未来のために、友好と協力を約束しています。

一瞬の間に人類を破滅に導いてしまうこともできる大量破壊兵器に対しても画期的な措置がなされています。

米国とソ連が核兵器の廃棄と大幅な減縮を推進していますし、恐るべき無差別殺傷力を持った化学兵器の完全廃棄のための交渉も、ジュネーブで進行されています。

このように和解と協力の波が押し寄せる世界を見て、私たちが住んでいる朝鮮半島にも対決の危険が消え去ったかのように考える人もおります。

しかし、不幸にも、この世界で唯一朝鮮半島でだけ歴史の巨大な流れと相反する状況が続いています。

世界的に核兵器の廃棄と減縮がなされているこの時間にも、北朝鮮は核拡散防止条約加入国として当然履行しなければならない義務を拒否したまま、核兵器を製造しようとする努力をあきらめずにいます。

北朝鮮が化学・生物兵器を作って、保有していることも、よく知られた事実であります。

朝鮮半島には、同族相残の悲劇的な戦争があって、その後40年間も近く、軍事的対決と軍備競争が続けられてきました。

このような状況のなかで、北朝鮮の核兵器開発は、これまでの問題とは次元を異にする深刻な問題であります。

それは民族の生存、そのものを威嚇することであるだけでなく、それによって東北アジアと世界の平和が一瞬にして破壊されてしまう危険をも孕むことになります。

全世界が北朝鮮の核兵器開発に大きな憂慮を持って、それを阻止するために我らと共にあらゆる努力を傾けているのもそのためです。

私は、去る9月の国連総会演説を通じて、北朝鮮が「核安全措置協定」に署名して核兵器の開発をあきらめ、南北間に軍事的な信頼を構築するための措置に応じるならば、朝鮮半島の核問題に対して、北朝鮮と協議する意向があるということを明白にしました。

北朝鮮は、私たちのこのような積極的な提議に呼応しようとはせず、むしろより一層非現実的な主張だけを押し出して国際的な義務履行に背を向けています。

私は、朝鮮半島の核問題を先導的に解決し、また、この土に平和を定着させるために重大な決断を下して、これを実行する措置を取って行くことを決定しました。

私は、私たちの平和の意志に基づいて、朝鮮半島の非核化を実現して、化学・生物兵器をこの土から除去するために、私たちの政策を次の通り宣言します。

第一に、我々は核エネルギーを平和的目的のためにだけ使用し、核兵器を製造・保有・貯蔵・配備・使用しない。

第二に、我々は「核兵器の拡散防止に関する条約」とそれに伴い国際原子力機関と締結した「核安全措置協定」を遵守し、韓国内の核施設と核物質は徹底した国際査察を受けるようにし、核燃料再処理及び核濃縮施設を保有しない。

第三に、我々は核兵器と無差別殺傷兵器がない平和的な世界を指向して化学・生物兵器の全面的除去のための国際的努力に積極的に参加し、これに関する国際的合意を遵守する。

我々は、核と化学・生物兵器を持たないこのような政策を誠実に履行して行きます。もう、北朝鮮が国際査察を避けながら核兵器を開発しなければならない何らの理由も名分もなくなりました。

私はこの席で、北朝鮮も私のこの宣言に相応する措置を取ることを強力に促します。

北朝鮮は我らと共に核再処理及び濃縮施設の保有を確実に諦めるべきです。

北朝鮮が核安全措置協定に速やかに署名し、このような措置を取るならば、韓国・北朝鮮は高位級会談を通じて、核問題をはじめとするあらゆる軍事安保問題を協議・解決して行くことができるはずです。

朝鮮半島の諸問題は、あくまでも韓国・北朝鮮の当事者間の直接協議を通じて自主的に解決すべきです。

私は、北朝鮮が核開発の企みを一日も早く放棄して、核兵器がない朝鮮半島を実現することによって、この土に真の平和の時代が開けることを7千万同胞とともに心から願います。

今日、この政策を宣言するに先立ち、政府は、この政策が安保に及ぼす影響を綿密に検討したうえ、私たちの安保が揺れることはないという確信から、このような決断を下しました。

私は、北朝鮮がこの世界の現実を直視して、我らと共に民族的悲劇の素地をなくして、民族和合と平和統一を成し遂げる道へ進むことを期待します。