データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 盧泰愚韓国大統領による核不在宣言

[場所] ソウル
[年月日] 1991年12月18日
[出典] 朝鮮日報統韓研究所データベース
[備考] 翻訳 玄大松
[全文]

国民の皆様、

先週、南北韓は、凡そ半世紀に渡った韓半島の冷戦を終熄させ、平和の時代を開くための具体的な合意を成し遂げました。

第5次南北韓高位級会談で署名された合意書は、南と北が長い間の断絶と対立を清算し、相互信頼を土台にこの地に平和の秩序を構築し、交流・協力を通じて民族の平和と共同繁栄を成し遂げるために必要な措置を網羅しています。

我々は、南と北が平和裡に共存共栄の関係を築くことが、統一のために必ず経なければならない過程であるという信念で、これを追求してきました。

3カ月前、南北韓の国連同時加入と、これに続く今回の合意書の署名は、韓半島の問題解決と民族統一に向けた旅程に画期的な里程標を建てたことであります。

これから南と北は、平和と統一に向けて共に前進して行かなければなりません。

このために、これから南と北が、何をどのようにするべきかということは明らかです。

南と北は、合意書の内容を一つ一つ誠実に実践して行かなければなりません。

そのようにして、南北の全民族が希望する和解と平和、民族の共同繁栄を共に実現して行かなければなりません。

我々は、南北韓間の対決関係を、交流・協力する同伴者の関係に発展させることはもちろん、南北韓間の政治軍事的問題を解決するために、誠意と最善を尽くすつもりであります。

冷戦はわが民族に途方もない苦痛と悲劇をもたらしました。

分断と戦争、対決と反目の中でわが民族が払った犠牲と試練は、想像を絶するほど大きくて痛いものでした。

南と北は、これから、この暗い歴史を終わらせ、和解と協力の明るい時代を開く平和の章典を作りました。

私はこれが、7千万民族が一つの国をなして、栄光の民族史を創造するときを早める、画期的な転機になるものと確信します。

国民の皆様、

我々は、南北韓が成し遂げた合意を全民族の願い通りに具現して行くに先立ち、一日も早く解決しなければならない重要な課題を抱えています。

それは韓半島の核問題を解決することです。

私は北朝鮮の核兵器開発が、民族の生存と、この地の平和はもちろん、東北アジアと世界の安定を威嚇する危険なものであることを直視して、先月8日、『韓半島の非核化』を宣言しました。

我々は核兵器を製造、保有、貯蔵、配備、使用しないことはもちろん、経済的必要性が認められる核再処理施設の保有をも、あきらめるという決断を下したのです。

わが政府は、北朝鮮が核査察を避けられる如何なる名分も与えないために、米国政府と協議して駐韓米軍基地を含む南北韓の同時核査察を実施することも、先週、高位級会談で北朝鮮側に提案しました。

核保有強大国の軍事基地を査察に公開することは国際的にも極めて異例なことですが、韓半島核問題の平和的かつ円満な解決のために決断を下したのであります。

今回の高位級会談で南と北が、韓半島に核兵器があってはならないということで一致したことは幸いなことです。

これを土台にし、今月中に板門店で開かれる南北代表接触では、核問題に関して明確な解決がなされるべきです。

核問題の早急な解決のために、私はこの席を借りて、国民の皆様と北朝鮮、そして全世界に、明白な事実を一つ明らかにします。

私が皆様にお話しするこの時刻、わが国のどこにも、たった一つの核兵器も存在しません。

我々に関する限り、11月8日宣言した非核化政策は完全に実現されたということを明言します。

国民の皆様、

私はこの席で北朝鮮側に言います。

我々が非核化を具現して南北韓同時核査察を受け入れた状況で、北朝鮮が核兵器を開発したり査察を拒否したりするいかなる名分も理由もなくなりました。

これから北朝鮮は、国際原子力機関(IAEA)と核安全措置協定を早く締結、批准して、無条件に国際査察を受諾し、核再処理及び濃縮施設をあきらめなければなりません。

北朝鮮は南北合意書の精神に基づいて、核問題を一日も早く終わらせることによって、韓半島に真の平和が来ているという信頼を全民族と世界に植え付けるべきです。

核問題を放置して民族の和解と平和を実現することはできません。

世界各国と国際社会は、北朝鮮の核開発がこの地域の平和を威嚇し、世界的な核拡散を促進する危険性を孕んでいる重大事案とみて、これに対する対応策を講じています。

私は、北朝鮮当局もこの問題の核心を把握していると信じて、数日後開かれる板門店会談で、我らと全世界の正当な要求に相応する措置が取られることを期待します。

私は、今年中に南と北が韓半島の非核化を実現する合意に達して、来る新年と共に、和解と協力、平和と共同繁栄の新しい時代を力強く開けるようになることを願います。

有難うございました。