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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 核拡散防止条約(NPT)脱退北朝鮮政府声明

[場所] 平壌
[年月日] 1993年3月12日
[出典] 朝鮮日報統韓研究所データベース
[備考] 翻訳 玄大松
[全文]

今日、わが国には、民族の自主権と国家の安全が威嚇される厳しい事態が造成された。

米国と南朝鮮当局は、わが共和国に反対する核戦争演習であるチームスピリット合同軍事演習をついに再開したし、これと時期を合わせ、米国に追従している国際原子力機関書記局の一部階層と一部の成員国は、去る2月25日、国際原子力機関管理理事会会議で、核活動と何ら関連がない我々の軍事対象に対する特別査察を強要する決議を採択した。

これは、わが共和国の自主権に対する侵害であり、かつ内政に対する干渉であり、我々の社会主義を圧殺しようとする敵対行為である。

朝鮮政府は、朝鮮人民に反対する米国と南朝鮮当局者の無分別な核戦争策動を峻烈に糾弾し、国際原子力機関管理理事会会議の不当な決議を断固排撃する。

朝鮮政府は反核平和政策から出発して核拡散防止条約に加入したし、条約上の義務を誠実に履行してきた。

我々は、核拡散防止条約寄託諸国が朝鮮半島に核兵器を展開せず、我々に反対して核脅威をしないだろうということを前提に、国際原子力機関と保障措置協定を締結し、機関の査察を受け入れた。

しかし米国は、核兵器所有国として、南朝鮮から核兵器を撤収し、我々に対する核戦争の危険を除去すべき自らの義務を履行する代わりに、旧態依然として我々に対する核脅威を継続している。

米国は南朝鮮に核兵器をそのまま残しており、より現代的な核兵器と核装備とで自らの核貯蔵庫を絶えず補強している。

これは、米国と南朝鮮当局者の、戦術核兵器撤収と核不在宣言をはじめとする公約などが、わが人民と世界の人民を欺瞞するための一つの術策であったことを実証してくれている。

北と南との間に不可侵に関する合意がなされ、わが国が核拡散防止条約と保障措置協定に基づく自らの国際的義務を誠実に履行している今日に至っても、南朝鮮にある米国の核兵器、核基地に対する査察は行われておらず、このため米国の核脅威に対するわが人民の憂慮は依然として解消できずにいる。

米国は、わが人民と世界人民の強力な反対にもかかわらず、我々に対する国際原子力機関の査察が始まる前に、中止していたチームスピリット合同軍事演習を核査察が行われている時に再開することによって、核脅威をより一層露骨に増大させた。

チームスピリット合同軍事演習は、領土保全と自主権を尊重して核脅威を中止することに対する核拡散防止条約の理念と目的に、全的に背馳する。

我々を目標とする核戦争演習であるチームスピリット合同軍事演習が再開されたことによって、現在、朝鮮半島の情勢は、予測出来ない極めて危険な状況になりつつあり、わが国は準戦時状態に入った。

さらに厳重視せざるを得ないことは、国際原子力機関が我々の軍事対象に対する特別査察を強行する決議を通過させることによって、我々のいわゆる核問題を極大化し、我々に対する集団的な制裁と圧力を加えようとする米国の反共和国策動に加担していることだ。

現在国際原子力機関書記局の一部階層らは、我々の交戦相手である米国が捏造した情報資料に基づいて、核活動とは関連のない我々の主要軍事対象に対する査察を強行しようとしている。

この軍事対象に対する査察について言うならば、保障措置協定に基づく査察とは何の関連もないし、それは同機関の権能に属する問題でもない。

万が一、我々が機関の不当な査察をそのまま受け入れるならば、それはすなわち、我々の交戦相手である米国の偵察行為を合法化させるものに他ならず、我々のあらゆる軍事対象に対する全面的開放の始まりになるであろう。

国が分裂しており、米国の核脅威を常時受けている我々の特殊な条件下で、軍事基地を敵方に開放するということは、とうてい想像することもできないことである。

今日は一つの軍事基地に対する開放を要求し、明日には別の軍事基地開放を強要する式で、一つ一つ食い込んでいくのが米国の常套手法である。

米国は、我々が軍事基地に対する特別査察を拒否すれば特別査察不履行という烙印を付け、我々の問題を国連安全保障理事会に持ち込み我々に対する集団的な制裁を加えようとしている。

まさにこれが予め描いている米国のシナリオである。

万が一、我々が米国とその追従者たちのこうした陰謀を阻止できなければ、全民族を対決と戦争へと追い込み、大国の犧牲物となる結果を招くだけだ。

国際原子力機関書記局の一部階層らは、公正性と厳重中立に基づいて核拡散防止条約の履行を監視しなければならない本来の姿勢から離脱することによって、米国の反共和国策動に加担した責任から決して免れられない。

同機関書記局の一部階層らが南朝鮮にある米国の核兵器と核基地に対する我々の査察要求は無視しながらも、米国が強要する我々の軍事基地査察にあれほど執拗になっていることは、明らかに我々の交戦相手である米国の肩を持つ行為である。

さらに、日本と南朝鮮の核武装化策動は黙認しながらも、我々にはありもしない核兵器開発を云々し圧力を加えている同機関の二重基準適用に対して、我々は激怒を禁じえない。

わが共和国政府が核拡散防止条約に加入したのは、我々に対する米国の核脅威を除去しようとしたためであって、決して我々の自主権と安全を誰の籠絡物にしようとしたためではなかった。

米国とその追従勢力の無分別な策動によって、我々が同機関の査察を受ければ受けるほど、我々に対する核脅威はより一層増大し、朝鮮半島の平和と安全は保障されることはおろか、かえって破壊される事態が起こっている。

これらのすべての事実は、米国と我々の敵対勢力、そして国際原子力機関書記局の一部階層らが、核拡散防止条約を、非核国家であるわが国の自主権と安全を威嚇して我々の社会主義制度を圧殺するのに悪用していることを明白に示している。

今日、造成されたこのような非正常な事態の下で、我々は、核拡散防止条約上の義務をこれ以上果たすことが出来なくなった。

朝鮮政府は、国の最高利益を守護するための措置としてやむを得ず核拡散防止条約から脱退するということを宣布する。

核拡散防止条約からの脱退は、わが共和国に対する米国の核戦争策動と、国際原子力機関書記局内の一部階層の不当な処置に対する当然な自衛的措置である。

我々のこうした原則的立場は、米国が我々に対する核脅威を中止し、国際原子力機関書記局が独自性と公正性の原則に帰るときまで変わらないだろう。

米国は、冷戦時代の古い考え方を捨てて、核戦争演習であるチームスピリット合同軍事演習をすぐ中止すべきであり、国際原子力機関を操縦して非核国家を謀害圧殺しようとする策動を止めなければならない。

米国をはじめとする我々の敵対視国と国際原子力機関書記局の一部階層が、特別査察や、如何なる措置をもって我々を威嚇するとしても、我々は少しも驚かない。

我々にはそのような強盗的論理や強権行為が通じない。

如何なる軍事的脅威と政治思想的攻勢も、如何なる封鎖も、我々人民の前進を遮ることはできない。

核エネルギーを平和的目的に利用しようとするわが共和国政府の政策は変わることがないし、わが人民は、今後も朝鮮半島の非核化を実現するために、全力を尽くすつもりである。

我々はこの機会に、国際的正義を重んずる国際原子力機関の多数の成員国と何人かの管理理事が、わが共和国の正当な立場に支持と同情を示してくれたことに対し謝意を表す。

我々が、米国の強要した国際原子力機関管理理事会会議の不当な決議に反対排撃することは、わが国の自主権を守ることであると同時に、発展途上国の共同の利益を守護するためである。

朝鮮政府と朝鮮人民は、平和と正義を重んじる世界の全ての国の政府と人民が、朝鮮半島に造成された厳しい事態に深い注意を払い、わが共和国政府の自衛的措置に、支持と連帯を寄せてくれることを確信する。

1993.3.12

平壌