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政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 環境の保護の分野における協力に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定 (略称)韓国との環境保護協力協定

[場所] ソウル
[年月日] 1993年6月29日
[出典] 外務省条約局,条約集(平成5年 二国間条約)1315‐1322頁
[備考] 訳文,目次は省略
[全文]

平成五年六月二十九日 ソウルで

平成五年六月二十九日 効力発生

平成六年一月七日 告示

         (外務省告示第三号)


 環境の保護の分野における協力に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定

前文

 日本国政府及び大韓民国政府は、

 地球環境の悪化が人類の生存に対して重大な脅威をもたらすことに留意し、

 そのような悪化を防止し、環境面で健全かつ持続可能な経済的及び社会的な発展を確保するための地域的及び地球的規模の努力が緊急に払われる必要があることを認識し、

 両政府間の協力がそれぞれの国における環境の保護に関する同種の問題に対処する上で相互の利益となり、かつ、そのような地域的及び地球的規模の努力を一層促進するであろうことを信じ、

 千九百八十五年十二月二十日に署名された科学技術の分野における協力に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定により科学技術の分野における両政府間の協力の枠組みが設定されていることに留意し、

 環境の保護の分野における両政府間の協力を強化することを希望して、

 次のとおり協定した。

 第一条

協力の維持及び促進

 両政府は、平等及び相互の利益に基づき環境の保護の分野における協力を維持し、かつ、促進する。

 第二条

協力活動の形態

 この協定に基づく協力活動は、次の形態により行うことができる。

(a)環境の保護に関連する研究及び開発に関する活動、政策、慣行及び法令並びに環境の保護に関連する技術についての情報及び資料の交換

(b)科学者、技術者その他の専門家の交流

(c)科学者、技術者その他の専門家による合同セミナー及び会合

(d)合意された協力計画(共同研究を含む。)の実施

(e)相互に合意されるその他の形態の協力

 第三条

合同委員会の設置

1 この協定に基づく協力活動を調整し及び促進するために、両政府の代表者から成る環境協力に関する合同委員会(以下「委員会」という。)を設置する。

2 委員会は、原則として年一回、日本国及び大韓民国において交互に会合する。

3 委員会は、次の任務を有する。

 (a)この協定の実施に関連するすべての事項を討議すること。

 (b)この協定の実施状況を検討すること。

 (c)この協定に基づく協力の増進を確保するための特定の措置を両政府に提案すること。

4 委員会の会合が開催されていない期間中のこの協定の実施に関する両政府間の連絡は、外交上の経路を通じて行う。

 第四条

協力活動の分野

 協力活動は、環境の保護及び改善に関連する相互に合意する次の分野において行うことができる。

(a)次のものを含む汚染の低減及び防止

 大気の汚染の防止(移動性及び固定性発生源からの排出の規制を含む。)、水質の汚濁の防止(都市及び工業の廃水の処理を含む。)、海洋の汚染の防止、土壌の汚染の防止(農業排水及び農薬の規制を含む。)、廃棄物の管理及び資源の回収、有害物質の規制及び処理、騒音の低減

(b)生態系及び生物の多様性の保全

(c)気候系に対する危険な人為的干渉の防止

(d)その他の環境の保護及び改善に関する分野で相互に合意されるもの

 第五条

協力活動の実施取極

 この協定に基づく特定の協力活動の細目及び手続を定める実施取極は、両政府又は両政府の機関のいずれか適当なものを当事者として行うことができる。

 第六条

便宜供与

 各政府は、他方の国の国民に対し、この協定に基づく協力活動の実施に必要な便宜を与える。

 第七条

協定の実施

 この協定は、それぞれの国において施行されている法令の範囲内で実施される。

 第八条

協力活動から生ずる非所有権的性格の情報及び工業所有権の処理

1 いずれの一方の政府も、この協定に基づく協力活動から生ずる非所有権的性格の科学的及び技術的情報を、通常の経路を通じ、かつ、参加機関の通常の手続に従い、一般の利用に供することができる。

2 この協定に基づく協力活動から生ずる特許権、意匠権その他の工業所有権の処理は、第五条にいう実施取極において規定される。

 第九条

この協定の他の取極への影響

 この協定のいかなる規定も、両政府間の協力に関する他の取極でこの協定の署名の日に存在するもの又はその後締結されるものに影響を及ぼすものと解してはならない。

 第十条

効力発生、有効期間、終了及び延長

1 この協定は、署名の日に効力を生じ、二年間効力を有する。

2 この協定は、更に各二年の期間自動的に延長される。ただし、一方の政府が、他方の政府に対していずれかの期間が満了する六箇月前までに書面によりこの協定を終了させる意思を通告する場合は、この限りでない。

3 この協定の終了は、第五条にいう実施取極に従って行われ、かつ、この協定の終了の時に履行を完了していないいかなる計画の履行にも影響を及ぼすものではない。

末文

 千九百九十三年六月二十九日にソウルで、英語により本書二通を作成した。

日本国政府のために

 武藤嘉文

大韓民国政府のために

 韓昇洲


(参考)

この協定は、日本国政府と韓国政府との間で環境の保護の分野における協力を維持し、かつ、促進するため、協力の分野、協力の形態、合同委員会の設置等を定めたものである。