データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 金泳三韓国大統領との共同記者会見における細川内閣総理大臣の冒頭発言

[場所] 
[年月日] 1993年11月7日
[出典] 細川演説集,49ー50頁.
[備考] 
[全文]

一,今般この慶州{キョンジュとルビ}にて,金泳三{キム・ヨンサムとルビ}大統領とお会いして,自由な雰囲気の下,率直かつ幅広い意見交換を行うことができたことを,誠に嬉しく思います。

二,金大統領も私も,時代の要請に応え,歴史的な改革を目指しております。私は金大統領が進められている改革に強い共感を覚えるとともに,その勇気と指導力に心から敬意を表したいと思います。

三,現在,国際社会にとって,冷戦後の新たな平和秩序を構築することが歴史的課題となっております。今回の会談においても,北朝鮮の核兵器開発問題に関する共通の認識を改めて確認しました。今後とも,両国は,アジア・太平洋地域を主とする国際社会において協力関係を推進することにより「国際社会の中の日韓関係」を構築していきたいと考えております。

四,日韓両国は,自由,民主主義,市場経済という基本的価値を共有する隣国であり,両国関係の発展は双方にとっての優先的な課題であります。私は,ここで先ず,過去の我が国の植民地支配により,朝鮮半島の人々が,学校における母国語教育の機会を奪われ,自分の姓名を日本式に改名させられる等,様々な形で耐え難い苦しみと悲しみを経験されたことに,心より深く反省とお詫びの気持ちを申し述べたいと思います。そして,このように過去を率直に直視し,歴史の教訓を常に生かしながら,金大統領とも協力して,日韓の貴重なバートナーシップを未来に向かって確固たるものにするよう努力を積み重ねていきたいと思います。

五,日韓両国は,幅広い協力を推進することが重要であります。今般,日韓双方の経済人が,新しい経済関係の構築のため努力されていることを高く評価し,両国政府としても可能な協力を行っていきたいと思います。また,何よりも両国民の相互理解を深める人的・文化的交流の促進が重要であり,特に,韓国人留学生の受入れを含む,青少年交流の拡大を図るため,積極的に努力していきたいと考えております。

六,今後とも,日韓の協力のあるべき姿について,両国民が率直に議論しあえる努囲気を高めていくことが重要です。今回の会談は,そのための重要な第一歩であったと考えます。