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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 朝鮮半島エネルギー開発機構の設立に関する協定,(略称)KEDO設立協定

[場所] ワシントン
[年月日] 1995年3月9日
[出典] 外務省条約局,条約集(多数国間条約)平成7年,1503−1514頁.
[備考] 訳文
[全文]

平成七年三月  九日 ニュー・ヨークで作成

平成七年三月  九日 署名

平成七年三月  九日 効力発生

平成七年四月二十五日 告示

(外務省告示第二六三号)

日本国政府、大韓民国政府及びアメリカ合衆国政府は、

千九百九十四年十月二十一日にジュネーヴで署名されたアメリカ合衆国と朝鮮民主主義人民共和国との間の合意された枠組み(以下「合意された枠組み」という。)にいう北朝鮮の核問題の全般的解決という目的を確認し、

合意された枠組みにおいて、その実施の条件とされている不拡散その他の北朝鮮が履行しなければならない措置の決定的重要性を認識し、

朝鮮半島における平和及び安全の維持が最も重要であることに留意し、

国際連合憲章、核兵器の不拡散に関する条約及び国際原子力機関憲章に沿って、合意された枠組みの実施に必要な措置をとるために協力することを希望し、

関心を有する諸国の間の協力を調整し、合意された枠組みの実施に必要なプロジェクトの資金手当て及び実施を促進するために、合意された枠組みが企図する機構を設立する必要を確信して、

次のとおり協定した。

   第一条

朝鮮半島エネルギー開発機構(以下「機構」という。)は、以下に規定される条件に基づいて設立される。

   第二条

(a)機構の目的は、次のとおりとする。

 (1)機構と北朝鮮との間で締結される供給取決めに従って、それぞれ約千メガ・ワットの能力を有する韓国標準型原子力発電所様式の二基の原子炉から成る北朝鮮における軽水炉プロジェクトの資金手当て及び供与を行うこと。

 (2)第一基の軽水炉建設までの間において、北朝鮮の黒鉛減速炉からのエネルギーに代わる暫定的な代替エネルギーの供与を行うこと。

 (3)前記の目的を達成するために又は合意された枠組みの目的を実現するために必要と認められるその他の措置を実施すること。

(b)機構は、北朝鮮が合意された枠組みに定められた自らの義務を完全に履行することを確保することを目指して、その目的を達成する。

   第三条

前条の目的を達成するに当たり、機構は、次のことを行うことができる。

(a)機構の目的を促進するためのプロジェクトを評価し、実施すること。

(b)機構の加盟国その他の国又は団体から、機構の目的を促進するためのプロジェクトを賄うための資金を受領し、これらの資金を管理し支出し、及びこれらの資金につき生ずる利子を機構の目的のために保有すること。

(c)機構の加盟国その他の国又は団体から、機構の目的を促進するためのプロジェクトのための現物による拠出を受領すること。

(d)北朝鮮から、軽水炉プロジェクト並びに機構により供与されるその他の物品及び役務に係る支払として資金又は他の代償を受領すること。

(e)機構によって受領された又は機構のプロジェクトのために予定されている資金の取扱いのため、合意に基づいて、適当な金融機関との間で協力し及び協定、契約その他の取決めを締結すること。

(f)機構の目的を達成するために必要な財産、施設、設備又は物品を取得すること。

(g)機構の目的を達成し又は機構の任務を遂行するために、必要に応じ、国、国際機関又は他の適当な団体との間で、協定、契約その他の取決め(借款契約を含む。)を締結すること。

(h)機構の目的を促進する活動(原子力安全を促進するための活動を含む。)を行うに当たり、国、地方公共団体その他の公共団体、国家機関及び国際機関並びに民間団体との調整を行い及びこれらを援助すること。

(i)機構の収入、資金、勘定その他の資産を処分し、機構の金銭上の債務に従って収益を分配すること。その際、残余の資産又は当該資産から得られる収益は、機構の決定に基づいて、機構の各加盟国の拠出に従って公平な方法で分配される。

(j)この協定に沿って、機構の目的及び任務の促進に必要なその他の権限を行使すること。

   第四条

(a)機構の活動は、国際連合憲章、核兵器の不拡散に関する条約及び国際原子力機関憲章に沿って行われる。

(b)機構の活動は、北朝鮮が機構との間のすべての合意の内容を遵守すること及び北朝鮮が合意された枠組みに沿って行動することを条件として行われる。これらの条件が満たされない場合には、機構は、適切な措置をとることができる。

(c)機構は、機構により行われるプロジェクトに関連して北朝鮮に移転される核物質、設備及び技術が、専ら当該プロジェクトのために及び平和的目的にのみ利用され、かつ、原子力の安全利用を確保する方法で利用されることの公式の保証を北朝鮮から得るものとする。

   第五条

(a)機構の原加盟国は、日本国、大韓民国及びアメリカ合衆国(以下「原加盟国」という。)とする。

(b)機構の目的を支持し、機構に対する資金、物品又は役務の供与等の援助を提供するその他の国も、また、理事会の承認を経て、第十四条(b)に定める手続に従って機構の加盟国(原加盟国と併せて、以下「加盟国」という。)となることができる。

   第六条

(a)機構の任務を遂行する権限は、理事会に帰属する。

(b)理事会は、各原加盟国の一人の代表により構成される。

(c)理事会は、理事会に参加する代表の中から、二年の任期で議長を選出する。

(d)理事会は、理事会の議長、事務局長又は理事会に参加する代表のいずれかの要請に基づき理事会の採択する手続規則に従って、必要に応じいつでも開催される。

(e)理事会の決定は、すべての原加盟国の代表の意見の一致により行われる。

(f)理事会は、機構の目的を達成するために必要な又は適当な規則を承認することができる。

(g)理事会は、機構の任務に関連するいかなる事項についても必要な措置をとることができる。

   第七条

(a)総会は、すべての加盟国の代表により構成される。

(b)総会は、第十二条にいう年次報告を検討するため、毎年開催される。

(c)総会の臨時会合は、理事会により付託された事項につき討議するため、理事会の指示に基づき開催される。

(d)総会は、勧告を含む報告書を理事会に提出し、その検討を求めることができる。

   第八条

(a)機構の職員は、事務局長をその長とする。事務局長は、この協定が効力を生じた後できる限り速やかに理事会により任命される。

(b)事務局長は、機構の首席の管理職員であるとともに、理事会の支配の下に置かれ、理事会の監督に服する。事務局長は、理事会により委任されたすべての権限を行使し、本部及び職員の組織及び監督、年次予算の作成、資金の調達並びに機構の目的を達成するための契約の承認、実施及び運用その他の機構の日常の業務を行う責任を有する。事務局長は、適当と認めるその他の職員に対しこれらの権限を委任することができる。事務局長は、理事会により承認されたすべての規則に従ってその任務を遂行する。

(c)事務局長は、二人の事務局次長により補佐される。これらの二人の事務局次長は、理事会により任命される。

(d)事務局長及び事務局次長は、二年の任期で任命され、再任されることができる。これらの者は、原加盟国の国民とする。事務局長及び事務局次長の給与を含む雇用条件は、理事会により決定される。事務局長及び事務局次長は、理事会の決定により、その任期の終了以前に罷免することができる。

(e)事務局長は、理事会により採択されたガイドライン及び承認された予算の範囲内で、機構のためにプロジェクトの承認を行い、契約を履行し、又はその他の金銭上の債務を負う権限を有する。ただし、機構の効果的かつ効率的な運営の必要に基づいて理事会により決定される特定の価額を超えるプロジェクト、契約又は金銭上の債務については、事務局長は、事前に理事会の承認を得るものとする。

(f)事務局長は、理事会の承認を条件として、職員の地位及び給与を含む雇用条件を設定する。事務局長は、理事会により承認される規則に従って、必要に応じ、資格を有する人員をそれらの地位に任命し、また、罷免する。事務局長は、最高水準の誠実、能率及び専門的能力を確保することの重要性に妥当な考慮を払いつつ、原加盟国の国民が公平に代表されるように職員の任命を行うことに努める。

(g)事務局長は、理事会及び総会に対し、機構の活動及び財務状況について報告を行う。事務局長は、理事会の行動を必要とすることがあり得るいかなる事項についても速やかに理事会に通報する。

(h)事務局長は、両事務局次長の助言を得て、この協定及び機構の目的に沿った規則を作成する。この規則は、実施に先立ち、理事会の承認を得るため理事会に提出される。

(i)事務局長及び職員は、その任務の遂行に当たって、いかなる政府からも又は機構外のいかなる他の当局からも指示を求め、又は受けてはならない。事務局長及び職員は、機構に対してのみ責任を負う国際的職員としての地位を損ずるおそれのあるいかなる行動も慎まなければならない。各加盟国は、事務局長及び職員の責任の専ら国際的な性質を尊重すること並びにこれらの者が責任を果たすに当たってこれらの者を左右しようとしないことを約束する。

   第九条

(a)理事会は、機構により実施されている又は機構による実施が提案されている特定のプロジェクトについて、適当な場合には、事務局長及び理事会に助言を与える諮問委員会を設置する。諮問委員会は、軽水炉プロジェクト、暫定的な代替エネルギーの供与のためのプロジェクト及び理事会の決定するその他のプロジェクトについて設置される。

(b)各諮問委員会には、原加盟国の代表及び当該諮間委員会の設置されたプロジェクトを支援するその他の加盟国の代表が含まれる。

(c)諮問委員会は、自ら決定する時に会合する。

(d)事務局長は、諮問委員会に対しそれぞれのプロジェクトに関係する事項につき常に十分な情報を提供する。理事会及び事務局長は、諮問委員会の勧告に妥当な考慮を払う。

   第十条

(a)各会計年度の予算は、事務局長により作成され、理事会により承認される。機構の会計年度は、一月一日から十二月三十一日までとする。

(b)各加盟国は、適当と認める資金を供与し又は利用可能にすることにより、機構に対して任意の拠出を行うことができる。そのような拠出は、機構に対して直接に又は機構の契約者への支払により行うことができる。拠出は、現金の預託、条件付発効証書、信用状若しくは約束手形により又は機構と拠出者との間で合意されるその他の法的手段により、また、機構と拠出者との間で合意される通貨により行われる。

(c)機構は、適当と認めるその他の公私の資金源から拠出を求めることができる。

(d)機構は、加盟国その他の資金源から資金を受領するための勘定(特定のプロジェクト及び機構の運営のために留保される資金のための独立した勘定を含む。)を設ける。これらの勘定から生ずる利子又は配当は、機構の活動のために再投資される。余剰の資金は、第三条(i)に規定するところに従って、分配される。

   第十一条

(a)加盟国は、機構又は機構の契約者に対して、機構の目的を達成することに資する物品、役務、設備及び施設を利用可能にすることができる。

(b)機構は、適当と認めるその他の公私の供給源から、機構の目的を達成することに資する物品、役務、設備及び施設を受け入れることができる。

(c)事務局長は、直接的なものであるか間接的なものであるかを問わず、機構に対する現物による拠出の価額評価につき責任を有する。加盟国は、現物による拠出の定期的な報告を提供すること及びこのような拠出の価額を確認するために必要な記録の利用を認めることを含め、価額評価の過程において事務局長に協力する。

(d)現物による拠出の価額に関し紛争が生じた場合には、理事会は、これを検討し裁定を行う。

   第十二条

事務局長は、理事会の承認を得るため、機構の活動に関する年次報告を理事会に提出する。年次報告には、軽水炉プロジェクトその他のプロジェクトの現状の記述、計画された活動と完了した活動との比較及び機構の勘定の監査報告が含まれる。事務局長は、理事会による承認の後加盟国に年次報告を配布する。事務局長は、理事会により必要とされるその他の報告書を理事会に提出する。

   第十三条

(a)機構は、機構の目的及び任務を遂行するために、法律上の能力を有し、特に、次の能力を有する。(1)契約を締結すること、(2)不動産を賃貸借すること、(3)動産を取得し及び処分すること、並びに(4)訴えを提起すること。加盟国は、これらの法律上の能力を、機構が機構の目的及び任務を遂行するために必要がある場合に、自国の法令に従って、機構に対し与えることができる。

(b)いずれの加盟国も、加盟国としての地位又は参加を理由に、機構の行為、不作為又は義務につき責任を負うものではない。

(c)加盟国により機構に対して提供された情報は、専ら機構の目的のために使用され、当該加盟国の明示の同意がない場合には公表されてはならない。

(d)加盟国の領域におけるこの協定の実施は、当該加盟国の法令(予算を含む。)に従って行われる。

   第十四条

(a)この協定は、原加盟国の署名により効力を生ずる。

(b)第五条(b)の規定に従い理事会により加盟国としての地位を承認された国は、この協定の受諾書を事務局長に提出することにより加盟国となることができる。受諾書は、事務局長による受領の日に効力を生ずる。

(c)この協定は、原加盟国の書面による合意により改正することができる。

(d)この協定は、原加盟国の書面による合意により終了させ又は停止することができる。

   第十五条

加盟国は、事務局長に対して書面による脱退の通告を行うことにより、いつでもこの協定から脱退することができる。脱退は、事務局長による脱退の通告の受領の後九十日で効力を生ずる。

千九百九十五年三月九日にニュー・ヨークで、英語により本書三通を作成した。

日本国政府のために

  遠藤哲也

大韓民国政府のために

  崔東鎮

アメリカ合衆国政府のために

  ロバート・L・ガルーチ