[文書名] 金泳三大統領主催晩餐会における橋本内閣総理大臣の挨拶
この度の私の訪韓にあたり、種々のご配慮をいただき、このように暖かくお迎え下さいました金泳三(キム・ヨンサム)大統領を始め、関係の皆様に心よりお礼申し上げます。
雄大な漢羅山(ハンラサン)を中心に、豊かな自然と温暖な気候に恵まれ、更には古代にまで遡る神話に包まれたこの美しい島は、韓国の皆様の愛する憩いの土地であると伺っております。亜熱帯風の美しい自然と、古来よりの人々の伝統的な生活、そして繊細に整備された先端的な観光地としての姿とが見事に融合している様子を、本日車窓より眺めつつ感銘を受けたところでございます。また一方でこの済州島は、この地域の国際政治においても、歴史的な舞台としての重要な役割を担いつつあります。ロシア、中国、米国の各首脳に続き、日本の総理として初めてこの地を訪問できましたことを、大変光栄に思っております。これから行われます金泳三大統領との会談におきまして、幅広い問題につき、忌憚のない意見交換を行うことによって、地域の平和と安定に貢献し得る、日韓の友好協力の一ぺージを、この島の歴史に記すことができればと祈念するものであります。
さて、この済州島には、我が国よりも年間二十万名近くの観光客が訪れており、また済州島の各大学には日本語学科が設置され、日本語が熱心に学ばれていると承知しております。我が国との地理的な近さのみならず、人的交流等の面でも密接な関係にある済州島には、一九九一年に日本大使館駐在官事務所が設置されましたが、この度、明年一月の総領事館への昇格が決定いたしました。これを契機に、我が国との更なる緊密な関係が築かれることを期待しております。この場を借りまして、ご協力への感謝を申し上げますとともに、在済州島日本国総領事館へのご指導、ご鞭燵のほどをお願い申し上げます。
それではまず、私がかねてより、政治に携わる者として「兄」と仰ぐ金泳三大統領のご健勝、そしてこの美しい済州島の発展と大韓民国の更なる発展、並びに日韓友好協力関係の一層の強化を祈念しつつ、ともに盃をあげたいと存じます。