[文書名] 所得に対する租税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約 (略称)韓国との租税(所得)条約
平成十年十月八日 東京で署名
平成十一年六月九日 国会承認
平成十一年十月二十二日 承認の閣議決定
平成十一年十月二十三日 済州で承認の通知交換
平成十一年十月二十七日 公布及び告示
(条約第一四号及び外務省告示第四五五号)
平成十一年十一月二十二日 効力発生
前文
日本国政府及び大韓民国政府は、
所得に対する租税に関し、二重課税を回避し及び脱税を防止するための条約を締結することを希望して、次のとおり協定した。
第一条
人的範囲
この条約は、一方又は双方の締約国の居住者である者に適用する。
第二条
適用される租税
1 この条約は、次の租税について適用する。
(a)韓国においては、
(i)所得税
(ii)法人税
(iii)所得税又は法人税の課税標準に対し直接又は間接に課される地方振興特別税
(iv)住民税
(以下「韓国の租税」という。)
(b)日本国においては、
(i)所得税
(ii)法人税
(iii)住民税
(以下「日本国の租税」という。)
2 この条約は、1に掲げる租税に加えて又はこれに代わってこの条約の署名の日の後に課される租税であって1に掲げる租税と同一であるもの又は実質的に類似するもの(国税であるか地方税であるかを問わない。)についても、適用する。両締約国の権限のある当局は、それぞれの国の税法について行われた実質的な改正を、その改正後の妥当な期間内に、相互に通知する。
第三条
定義
1 この条約の適用上、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、
(a)「韓国」とは、大韓民国の領域(領海を含む。)及び大韓民国の領海の外側に隣接する区域であって大韓民国が水域、海底及びその下並びにそれらの天然資源に関して大韓民国の主権的権利を行使することのできる区域として、国際法に従い、大韓民国の法令により指定したもの又は今後指定することのあるものをいう。
(b)「日本国」とは、日本国の領域(領海を含む。)及び日本国の領海の外側に隣接する区域であって日本国が水域、海底及びその下並びにそれらの天然資源に関して日本国の主権的権利を行使することのできる区域として、国際法に従い、日本国の法令により指定したもの又は今後指定することのあるものをいう。
(c)「一方の締約国」及び「他方の締約国」とは、文脈により、日本国又は韓国をいう。
(d)「租税」とは、文脈により、日本国の租税又は韓国の租税をいう。
(e)「者」には、個人、法人及び法人以外の団体を含む。
(f)「法人」とは、法人格を有する団体又は租税に関し法人格を有する団体として取り扱われる団体をいう。
(g)「一方の締約国の企業」及び「他方の締約国の企業」とは、それぞれ一方の締約国の居住者が営む企業及び他方の締約国の居住者が営む企業をいう。
(h)「国際運輸」とは、一方の締約国の企業が運用する船舶又は航空機による運送(他方の締約国内の地点の間においてのみ運用される船舶又は航空機による運送を除く。)をいう。
(i)「国民」とは、いずれか一方の締約国の国籍を有するすべての個人並びにいずれか一方の締約国の法令に基づいて設立され又は組織されたすべての法人及び法人格を有しないがいずれか一方の締約国の租税に関し当該一方の締約国の法令に基づいて設立され又は組織された法人として取り扱われるすべての団体をいう。
(j)「権限のある当局」とは、
(i)韓国については、財政経済部長官又は権限を与えられたその代理者をいう。
(ii)日本国については、大蔵大臣又は権限を与えられたその代理者をいう。
2 一方の締約国によるこの条約の適用に際しては、この条約において定義されていない用語は、文脈により別に解釈すべき場合を除くほか、この条約の適用を受ける租税に関する当該一方の締約国の法令において当該用語がその適用の時点で有する意義を有するものとする。当該一方の締約国の適用される税法における当該用語の意義は、当該一方の締約国の他の法令における当該用語の意義に優先するものとする。
第四条
一方の締約国の居住者
1 この条約の適用上、「一方の締約国の居住者」とは、当該一方の締約国の法令の下において、住所、居所、本店又は主たる事務所の所在地その他これらに類する基準により当該一方の締約国において課税を受けるべきものとされる者をいう。ただし、この用語には、当該一方の締約国内に源泉のある所得のみについて当該一方の締約国において課税される者を含まない。
2 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する個人については、次のとおりその地位を決定する。
(a)当該個人は、その使用する恒久的住居が所在する締約国の居住者とみなす。その使用する恒久的住居を双方の締約国内に有する場合には、当該個人は、その人的及び経済的関係がより密接な締約国(重要な利害関係の中心がある国)の居住者とみなす。
(b)その重要な利害関係の中心がある締約国を決定することができない場合又はその使用する恒久的住居をいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、その有する常用の住居が所在する締約国の居住者とみなす。
(c)その常用の住居を双方の締約国内に有する場合又はこれをいずれの締約国内にも有しない場合には、当該個人は、自己が国民である締約国の居住者とみなす。
(d)当該個人が双方の締約国の国民である場合又はいずれの締約国の国民でもない場合には、両締約国の権限のある当局は、合意により当該事案を解決する。
3 1の規定により双方の締約国の居住者に該当する者で個人以外のものは、その者の本店又は主たる事務所が所在する締約国の居住者とみなす。
第五条
恒久的施設
1 この条約の適用上、「恒久的施設」とは、事業を行う一定の場所であって企業がその事業の全部又は一部を行っている場所をいう。
2 「恒久的施設」には、特に、次のものを含む。
(a)事業の管理の場所
(b)支店
(c)事務所
(d)工場
(e)作業場
(f)鉱山、石油又は天然ガスの坑井、採石場その他天然資源を採取する場所
3 建築工事現場若しくは建設若しくは据付けの工事又はこれらに関連する監督活動については、六箇月を超える期間存続する場合には、「恒久的施設」を構成するものとする。
4 1から3までの規定にかかわらず、「恒久的施設」には、次のことは、含まれないものとする。
(a)企業に属する物品又は商品の保管、展示又は引渡しのためにのみ施設を使用すること。
(b)企業に属する物品又は商品の在庫を保管、展示又は引渡しのためにのみ保有すること。
(c)企業に属する物品又は商品の在庫を他の企業による加工のためにのみ保有すること。
(d)企業のために物品若しくは商品を購入し又は情報を収集することのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。
(e)企業のためにその他の準備的又は補助的な性格の活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。
(f)(a)から(e)までに掲げる活動を組み合わせた活動を行うことのみを目的として、事業を行う一定の場所を保有すること。ただし、当該一定の場所におけるこのような組合せによる活動の全体が準備的又は補助的な性格のものである場合に限る。
5 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国内において他方の締約国の企業に代わって行動する者(6の規定が適用される独立の地位を有する代理人を除く。)が、当該一方の締約国内で、当該企業の名において契約を締結する権限を有し、かつ、この権限を反復して行使する場合には、当該企業は、その者が当該企業のために行うすべての活動について、当該一方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされる。ただし、その者の活動が4に掲げる活動(事業を行う一定の場所で行われたとしても、4の規定により当該一定の場所が「恒久的施設」とされない活動)のみである場合は、この限りでない。
6 企業は、通常の方法でその業務を行う仲立人、問屋その他の独立の地位を有する代理人を通じて一方の締約国内で事業活動を行っているという理由のみでは、当該一方の締約国内に「恒久的施設」を有するものとされない。
7 一方の締約国の居住者である法人が、他方の締約国の居住者である法人若しくは他方の締約国内において事業(「恒久的施設」を通じて行われるものであるかないかを問わない。)を行う法人を支配し、又はこれらに支配されているという事実のみによっては、いずれの一方の法人も、他方の法人の「恒久的施設」とはされない。
第六条
不動産から取得する所得
1 一方の締約国の居住者が他方の締約国内に存在する不動産から取得する所得(農業又は林業から生ずる所得を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 「不動産」の用語は、当該財産が存在する締約国の法令における不動産の意義を有するものとする。不動産には、いかなる場合にも、これに附属する財産、農業又は林業に用いられている家畜類及び設備、不動産に関する一般法の規定の適用がある権利、不動産用益権並びに鉱石、水その他の天然資源の採取又は採取の権利の対価として料金(金額が確定しているかいないかを問わない。)を受領する権利を含む、船舶及び航空機は、不動産とはみなさない。
3 1の規定は、不動産の直接使用、賃貸その他のすべての形式による使用から生ずる所得について適用する。
4 1及び3の規定は、企業の不動産から生ずる所得及び独立の人的役務を提供するために使用される不動産から生ずる所得についても、適用する。
第七条
恒久的施設の利得
1 一方の締約国の企業の利得に対しては、その企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行わない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、その企業の利得のうち当該恒久的施設に帰せられる部分に対してのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 3の規定に従うことを条件として、一方の締約国の企業が他方の締約国内にある恒久的施設を通じて当該他方の締約国内において事業を行う場合には、当該恒久的施設が、同一又は類似の条件で同一又は類似の活動を行い、かつ、当該恒久的施設を有する企業と全く独立の立場で取引を行う別個のかつ分離した企業であるとしたならば当該恒久的施設が取得したとみられる利得が、各締約国において当該恒久的施設に帰せられるものとする。
3 恒久的施設の利得を決定するに当たっては、経営費及び一般管理費を含む費用で当該恒久的施設のために生じたものは、当該恒久的施設が存在する締約国内において生じたものであるか他の場所において生じたものであるかを問わず、損金に算入することを認められる。
4 2の規定は、恒久的施設に帰せられるべき利得を企業の利得の総額の当該企業の各構成部分への配分によって決定する慣行が一方の締約国にある場合には、租税を課されるべき利得をその慣行とされている配分の方法によって当該一方の締約国が決定することを妨げるものではない。ただし、用いられる配分の方法は、当該配分の方法によって得た結果がこの条に定める原則に適合するようなものでなければならない。
5 恒久的施設が企業のために物品又は商品の単なる購入を行ったことを理由としては、いかなる利得も、当該恒久的施設に帰せられることはない。
6 1から5までの規定の適用上、恒久的施設に帰せられる利得は、毎年同一の方法によって決定する。ただし、別の方法を用いることにつき正当な理由がある場合は、この限りでない。
7 他の条で別個に取り扱われている種類の所得が企業の利得に含まれる場合には、当該他の条の規定は、この条の規定によって影響されることはない。
第八条
船舶又は航空機を国際運輸に運用することによって取得する利得
1 一方の締約国の企業が船舶又は航空機を国際運輸に運用することによって取得する利得に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。
2 一方の締約国の企業は、船舶又は航空機を国際運輸に運用することにつき、韓国の企業である場合には日本国における事業税、日本国の企業である場合には日本国における事業税に類似する税で韓国において今後課されることのあるものを免除される。
3 1及び2の規定は、共同計算、共同経営又は国際経営共同体に参加していることによって取得する利得についても、適用する。
第九条
特殊関係企業に係る利得
1(a)一方の締約国の企業が他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加している場合又は
(b)同一の者が一方の締約国の企業及び他方の締約国の企業の経営、支配若しくは資本に直接若しくは間接に参加している場合
であって、そのいずれの場合においても、商業上又は資金上の関係において、双方の企業の間に、独立の企業の間に設けられる条件と異なる条件が設けられ又は課されているときは、その条件がないとしたならば一方の企業の利得となったとみられる利得であってその条件のために当該一方の企業の利得とならなかったものに対しては、これを当該一方の企業の利得に算入して租税を課することができる。
2 一方の締約国において租税を課された当該一方の締約国の企業の利得を他方の締約国が1の規定により当該他方の締約国の企業の利得に算入して租税を課する場合において、両締約国の権限のある当局が、協議の上、その算入された利得の全部又は一部が、双方の企業の間に設けられた条件が独立の企業の間に設けられたであろう条件であったとしたならば当該他方の締約国の企業の利得となったとみられる利得であることに合意するときは、当該一方の締約国は、その合意された利得に対して当該一方の締約国において課された租税の額につき適当な調整を行う。この調整に当たっては、この条約の他の規定に妥当な考慮を払う。
3 1の規定にかかわらず、締約国は、1にいう条件がないとしたならば当該締約国の企業の利得として更正の対象となったとみられる利得に係る課税年度の終了時から十年を経過した後は、1にいう状況においても、当該締約国の当該企業の当該利得の更正をしてはならない。この3の規定は、不正に租税を免れた利得については、適用しない。
第十条
配当
1 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国の居住者に支払う配当に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 1の配当に対しては、これを支払う法人が居住者とされる締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該配当の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、次の額を超えないものとする。
(a)当該配当の受益者が、利得の分配に係る事業年度の終了の日に先立つ六箇月の期間を通じ、当該配当を支払う法人の議決権のある株式の少なくとも二十五パーセントを所有する法人である場合には、当該配当の額の五パーセント
(b)その他のすべての場合には、当該配当の額の十五パーセント
この2の規定は、当該配当を支払う法人のその配当に充てられる利得に対する課税に影響を及ぼすものではない。
3 この条において、「配当」とは、株式その他利得の分配を受ける権利(信用に係る債権を除く。)から生ずる所得及びその他の持分から生ずる所得であって分配を行う法人が居住者とされる締約国の法令上株式から生ずる所得と同様に取り扱われるものをいう。
4 1及び2の規定は、一方の締約国の居住者である配当の受益者が、当該配当を支払う法人が居住者とされる他方の締約国において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行い又は当該他方の締約国内にある固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条又は第十四条の規定を適用する。
5 一方の締約国の居住者である法人が他方の締約国から利得又は所得を取得する場合には、当該他方の締約国は、当該法人の支払う配当及び当該法人の留保所得については、これらの配当及び留保所得の全部又は一部が当該他方の締約国内において生じた利得又は所得から成るときにおいても、当該配当(当該他方の締約国の居住者に支払われる配当及び配当の支払の基因となった株式その他の持分が当該他方の締約国内にある恒久的施設又は固定的施設と実質的な関連を有するものである場合の配当を除く。)に対していかなる租税も課することができず、また、当該留保所得に対して租税を課することができない。
第十一条
利子
1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる利子に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 1の利子に対しては、当該利子が生じた締約国においても、当該締約国の法令に従って粗税を課することができる。その租税の額は、当該利子の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、当該利子の額の十パーセントを超えないものとする。
3 2の規定にかかわらず、一方の締約国内において生ずる利子であって、他方の締約国の政府、他方の締約国の地方公共団体、他方の締約国の中央銀行又は他方の締約国の政府若しくは中央銀行若しくはその双方が全面的に所有する金融機関が取得するものについては、当該一方の締約国において租税を免除する。
4 3の規定の適用上、「中央銀行」及び「政府若しくは中央銀行若しくはその双方が全面的に所有する金融機関」とは、次のものをいう。
(a)韓国については、
(i)韓国銀行
(ii)韓国輸出入銀行
(iii)韓国産業銀行
(iv)韓国政府若しくは韓国銀行又はその双方が資本の全部を所有するその他の金融機関で両締約国の政府が随時合意するもの
(b)日本国については、
(i)日本銀行
(ii)日本輸出入銀行
(iii)日本国政府若しくは日本銀行又はその双方が資本の全部を所有するその他の金融機関で両締約国の政府が随時合意するもの
5 この条において、「利子」とは、すべての種類の信用に係る債権(担保の有無及び債務者の利得の分配を受ける権利の有無を問わない。)から生じた所得、特に、公債、債券又は社債から生じた所得(公債、債券又は社債の割増金及び賞金を含む。)をいう。
6 1から3までの規定は、一方の締約国の居住者である利子の受益著が、当該利子の生じた他方の締約国において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行い又は当該他方の締約国内にある固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該利子の支払の基因となった債権が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条又は第十四条の規定を適用する。
7 利子は、その支払者が一方の締約国又は一方の締約国の地方公共団体若しくは居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。ただし、利子の支払者(締約国の居住者であるかないかを問わない。)が一方の締約国内に恒久的施設又は固定的施設を有する場合において、当該利子の支払の基因となった債務が当該恒久的施設又は固定的施設について生じ、かつ、当該利子が当該恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものであるときは、当該利子は、当該恒久的施設又は固定的施設の存在する当該一方の締約国内において生じたものとされる。
8 利子の支払者と受益者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、当該利子の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうち当該超過分に対し、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上、各締約国の法令に従って租税を課することができる。
第十二条
使用料
1 一方の締約国内において生じ、他方の締約国の居住者に支払われる使用料に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 1の使用料に対しては、当該使用料が生じた締約国においても、当該締約国の法令に従って租税を課することができる。その租税の額は、当該使用料の受益者が他方の締約国の居住者である場合には、当該使用料の額の十パーセントを超えないものとする。
3 この条において、「使用料」とは、文学上、芸術上若しくは学術上の著作物(ソフトウェア、映画フィルム及びラジオ放送用又はテレビジョン放送用のフィルム又はテープを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式若しくは秘密工程の使用若しくは使用の権利の対価として、産業上、商業上若しくは学術上の設備の使用若しくは使用の権利の対価として、又は産業上、商業上若しくは学術上の経験に関する情報の対価として受領するすべての種類の支払金及び船舶又は航空機の裸用船契約に基づいて受領する料金をいう。
4 使用料は、その支払者が一方の締約国又は一方の締約国の地方公共団体若しくは居住者である場合には、当該一方の締約国内において生じたものとされる。ただし、使用料の支払者(締約国の居住者であるかないかを問わない。)が一方の締約国内に恒久的施設又は固定的施設を有する場合において、当該使用料を支払う債務が当該恒久的施設又は固定的施設について生じ、かつ、当該使用料が当該恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものであるときは、当該使用料は、当該恒久的施設又は固定的施設の存在する当該一方の締約国内において生じたものとされる。
5 1、2及び4の規定は、文学上、芸術上若しくは学術上の著作物(ソフトウェア、映画フィルム及びラジオ放送用又はテレビジョン放送用のフィルム又はテープを含む。)の著作権、特許権、商標権、意匠、模型、図面、秘密方式又は秘密工程の譲渡から生ずる収入についても、同様に適用する。ただし、その収入に係る収益について次条4の規定が適用される場合は、この限りでない。
6 1,2及び5の規定は、一方の締約国の居住者である使用料又は収入の受益者が、当該使用料又は収入の生じた他方の締約国において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行い又は当該他方の締約国内にある固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該使用料又は収入の支払の基因となった権利又は財産が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、適用しない。この場合には、第七条又は第十四条の規定を適用する。
7 使用料又は収入の支払の基因となった使用、権利又は情報について考慮した場合において、使用料又は収入の支払者と受益著との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、当該使用料又は収入の額が、その関係がないとしたならば支払者及び受益者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、支払われた額のうち当該超過分に対し、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上、各締約国の法令に従って租税を課することができる。
第十三条
譲渡収益
1 一方の締約国の居住者が第六条に規定する不動産で他方の締約国内に存在するものの譲渡によって取得する収益に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の発行した株式の譲渡によって取得する収益に対しては、次のことを条件として、当該他方の締約国において租税を課することができる。
(a)譲渡者が保有し又は所有する株式(当該譲渡者の特殊関係者が保有し又は所有する株式で当該譲渡者が保有し又は所有するものと合算されるものを含む。)の数が、当該譲渡が行われた課税年度中のいずれかの時点において当該法人の発行済株式の少なくとも二十五パーセントであること。
(b)譲渡者及びその特殊関係者が当該譲渡が行われた課税年度中に譲渡した株式の総数が、当該法人の発行済株式の少なくとも五パーセントであること。
3 2の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の発行した株式の譲渡によって取得する収益に対しては、当該法人の財産が当該他方の締約国内に存在する不動産から主として構成される場合には、当該他方の締約国において租税を課することができる。
4 2及び3の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設の事業用資産の一部を成す財産(不動産を除く。)の譲渡又は一方の締約国の居住者が独立の人的役務を提供するため他方の締約国内においてその用に供している固定的施設に係る財産(不動産を除く。)の譲渡から生ずる収益(単独に若しくは企業全体として行われる当該恒久的施設の譲渡又は当該固定的施設の譲渡から生ずる収益を含む。)に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
5 一方の締約国の居住者が国際運輪に運用する船舶又は航空機及びこれらの船舶又は航空機の運用に係る財産(不動産を除く。)の譲渡によって取得する収益に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。
6 1から5まで及び前条5に規定する財産以外の財産の譲渡から生ずる収益に対しては、譲渡者が居住者である締約国においてのみ租税を課することができる。
第十四条
自由職業の所得
1 一方の締約国の居住者が自由職業その他の独立の性格を有する活動について取得する所得に対しては、次の(a)又は(b)に該当する場合を除くほか、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。
(a)その者が自己の活動を行うため通常その用に供している固定的施設を他方の締約国内に有する場合
(b)その者が当該暦年を通じて合計百八十三日以上の期間当該他方の締約国内に滞在する場合
その者がそのような固定的施設を有する場合又は前記の期間当該他方の締約国内に滞在する場合には、当該所得に対しては、当該固定的施設に帰せられる部分又は前記の期間を通じ当該他方の締約国内において取得した部分についてのみ、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 「自由職業」には、特に、学術上、文学上、芸術上及び教育上の独立の活動並びに医師、弁護士、技術士、建築士、歯科医師及び公認会計士の独立の活動を含む。
第十五条
勤務から生ずる報酬
1 次条及び第十八条から第二十一条までの規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の居住者がその勤務について取得する給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、勤務が他方の締約国内において行われない限り、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。勤務が他方の締約国内において行われる場合には、当該勤務から生ずる報酬に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
2 1の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者が他方の締約国内において行う勤務について取得する報酬に対しては、次の(a)から(c)までに掲げることを条件として、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。
(a)報酬の受領者が当該暦年を通じて合計百八十三日を超えない期間当該他方の締約国内に滞在すること。
(b)報酬が当該他方の締約国の居住者でない雇用者又はこれに代わる者から支払われるものであること。
(c)報酬が雇用者の当該他方の締約国内に有する恒久的施設又は固定的施設によって負担されるものでないこと。
3 1及び2の規定にかかわらず、一方の締約国の企業が国際運輸に運用する船舶又は航空機内において行われる勤務に係る報酬に対しては、当該一方の締約国において租税を課することができる。
第十六条
役員の報酬
一方の締約国の居住者が他方の締約国の居住者である法人の役員の資格で取得する役員報酬その他これに類する支払金に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
第十七条
芸能人等の所得
1(a)第十四条及び第十五条の規定にかかわらず、一方の締約国の居住者である個人が演劇、映画、ラジオ若しくはテレビジョンの俳優、音楽家その他の芸能人又は運動家として他方の締約国内で行う個人的活動によって取得する所得に対しては、当該他方の締約国において租税を課することができる。
(b)もっとも、そのような活動が両締約国の政府間で合意された文化交流のための特別の計画に基づき当該一方の締約国の居住者である個人によって行われる場合には、当該所得については、当該他方の締約国において租税を免除する。
2(a)一方の締約国内で行う芸能人又は運動家としての個人的活動に関する所得が当該芸能人又は運動家以外の他方の締約国の居住者である者に帰属する場合には、当該所得に対しては、第七条、第十四条及び第十五条の規定にかかわらず、当該芸能人又は運動家の活動が行われる当該一方の締約国において租税を課することができる。
(b)もっとも、そのような所得が両締約国の政府間で合意された文化交流のための特別の計画に基づき他方の締約国の居住者である個人によって行われる活動から生じ、かつ、当該他方の締約国の居住者である他の者に帰属する場合には、当該所得については、当該一方の締約国において租税を免除する。
第十八条
退職年金
次条2の規定が適用される場合を除くほか、過去の勤務につき一方の締約国の居住者に支払われる退職年金その他これに類する報酬に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。
第十九条
政府の職務の遂行に係る報酬
1(a)政府の職務の遂行として一方の締約国又は一方の締約国の地方公共団体に対し提供される役務につき、個人に対し当該一方の締約国又は当該一方の締約国の地方公共団体によって支払われる給料、賃金その他これらに類する報酬(退職年金を除く。)に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。
(b)もっとも、当該役務が他方の締約国内において提供され、かつ、当該個人が次の(i)又は(ii)に該当する当該他方の締約国の居住者である場合には、その給料、賃金その他これらに類する報酬に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。
(i)当該他方の締約国の国民
(ii)専ら当該役務を提供するため当該他方の締約国の居住者となった者でないもの
2(a)一方の締約国又は一方の締約国の地方公共団体に対し提供される役務につき、個人に対し、当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方公共団体によって支払われ、又は当該一方の締約国若しくは当該一方の締約国の地方公共団体が拠出した基金から支払われる退職年金に対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。
(b)もっとも、当該個人が他方の締約国の居住者であり、かつ、当該他方の締約国の国民である場合には、その退職年金に対しては、当該他方の締約国においてのみ租税を課することができる。
3 一方の締約国又は一方の締約国の地方公共団体の行う事業に関連して提供される役務につき支払われる給料、賃金その他これらに類する報酬及び退職年金については、第十五条から前条までの規定を適用する。
第二十条
学生又は事業修習者への給付
1 専ら教育又は訓練を受けるため一方の締約国内に滞在する学生又は事業修習者であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又はその滞在の直前に他方の締約国の居住者であったものがその生計、教育又は訓練のために受け取る給付については、当該一方の締約国の租税を免除する。ただし、当該給付が当該一方の締約国外から支払われるものである場合に限る。
2 1に規定する学生は、交付金、奨学金及び勤務による報酬であって現に滞在している一方の締約国に源泉のあるものについても、当該交付金、奨学金及び勤務による報酬の額の合計が年間二万合衆国ドル又は日本円若しくは韓国ウォンによるその相当額を超えない場合には、当該一方の締約国において租税を免除される。ただし、その者は、いかなる場合にも、継続する五年を超える期間当該免除を受けることはできない。
3 1に規定する事業修習者は一年を超えない期間現に滞在している一方の締約国において訓練に関連する実務上の経験を習得するために行う勤務から取得する報酬についても、当該報酬の額が年間一万合衆国ドル又は日本円若しくは韓国ウォンによるその相当額を超えない場合には、当該一方の締約国において租税を免除される。
第二十一条
教育又は研究に係る報酬
1 一方の締約国内にある大学、学校その他の公認された教育機関において教育又は研究を行うため当該一方の締約国を訪れ、二年を超えない期間滞在する個人であって、現に他方の締約国の居住者であるもの又は訪れる直前に他方の締約国の居住者であったものは、その教育又は研究に係る報酬でその者が当該他方の締約国において租税を課されるものにつき、当該一方の締約国において租税を免除される。
2 1の規定は、主として特定の者の私的利益のために行われる研究から生ずる所得については、適用しない。
第二十二条
その他の所得
1 一方の締約国の居住者の所得(源泉地を問わない。)で前各条に規定がないものに対しては、当該一方の締約国においてのみ租税を課することができる。
2 1の規定は、一方の締約国の居住者である所得(第六条2に規定する不動産から生ずる所得を除く。)の受領者が、他方の締約国において当該他方の締約国内にある恒久的施設を通じて事業を行い又は当該他方の締約国内にある固定的施設を通じて独立の人的役務を提供する場合において、当該所得の支払の基因となった権利又は財産が当該恒久的施設又は当該固定的施設と実質的な関連を有するものであるときは、当該所得については、適用しない。この場合には、第七条又は第十四条の規定を適用する。
3 1に規定する所得を取得する一方の締約国の居住者と他の者との間又はその双方と第三者との間の特別の関係により、当該所得の額が、その関係がないとしたならば当該居住者及び当該他の者が合意したとみられる額を超えるときは、この条の規定は、その合意したとみられる額についてのみ適用する。この場合には、当該所得の額のうち当該超過分に対し、この条約の他の規定に妥当な考慮を払った上、各締約国の法令に従って租税を課することができる。
第二十三条
二重課税の排除の方法
1 韓国以外の国において納付される租税を韓国の租税から控除することに関する韓国の法令に従い、
(a)韓国の居住者がこの条約の規定に従って日本国において租税を課される所得を日本国において取得する場合には、当該所得について納付される日本国の租税の額は、当該居住者に対して課される韓国の租税の額から控除する。ただし、控除の額は、その控除が行われる前に算定された韓国の租税の額のうち当該所得に対応する部分を超えないものとする。
(b)日本国において取得される所得が、日本国の居住者である法人により、その発行済株式の少なくとも二十パーセントを配当の決議の日に先立つ継続する六箇月以上の期間を通じて所有する韓国の居住者である法人に対して支払われる配当である場合には、韓国の租税からの控除を行うに当たり、その支払われた配当に係る利得について当該法人により納付される日本国の租税を考慮に入れるものとする。
2 日本国以外の国において納付される租税を日本国の租税から控除することに関する日本国の法令に従い、
(a)日本国の居住者がこの条約の規定に従って韓国において租税を課される所得を韓国において取得する場合には、当該所得について納付される韓国の租税の額は、当該居住者に対して課される日本国の租税の額から控除する。ただし、控除の額は、日本国の租税の額のうち当該所得に対応する部分を超えないものとする。
(b)韓国において取得される所得が、韓国の居住者である法人により、その議決権のある株式又はその発行済株式の少なくとも二十五パーセントを利得の分配に係る事業年度の終了の日に先立つ六箇月の期間を通じて所有する日本国の居住者である法人に対して支払われる配当である場合には、日本国の租税からの控除を行うに当たり、当該配当を支払う法人によりその所得について納付される韓国の租税を考慮に入れるものとする。
3 2に規定する控除の適用上、韓国の経済開発を促進するための特別の奨励措置であってこの条約の署名の日に実施されているもの又はその修正若しくは追加として韓国の租税に関する法令にその後に導入されることがあるものに従った韓国の租税の軽減又は免除が行われなかったとしたならば韓国の法令に基づき及びこの条約の規定に従って韓国の租税として納付されたであろう額は、納税者によって納付されたものとみなす。ただし、両締約国の政府が前記の措置により納税者に与えられる特典の範囲について合意を行うことを条件とする。
4 3の規定は、二千三年十二月三十一日よりも後に開始する各課税年度において日本国の居住者が取得する所得については、効力を失う。
第二十四条
無差別取扱い
1 一方の締約国の国民は、他方の締約国において、特に居住者であるかないかに関し、同様の状況にある当該他方の締約国の国民に課されており若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外の又はこれらよりも重い租税若しくはこれに関連する要件を課されることはない。この1の規定は、第一条の規定にかかわらず、締約国の居住者でない者にも、適用する。
2 一方の締約国の企業が他方の締約国内に有する恒久的施設に対する租税は、当該他方の締約国において、同様の活動を行う当該他方の締約国の企業に対して課される租税よりも不利に課されることはない。
この2の規定は、一方の締約国に対し、家族の状況又は家族を扶養するための負担を理由として自国の居住者に認める租税上の人的控除、救済及び軽減を他方の締約国の居住者に認めることを義務付けるものと解してはならない。
3 第九条1、第十一条8、第十二条7又は第二十二条3の規定が適用される場合を除くほか、一方の締約国の企業が他方の締約国の居住者に支払った利子、使用料その他の支払金については、当該企業の課税対象利得の決定に当たって、当該一方の締約国の居住者に支払われたとした場合における条件と同様の条件で控除するものとする。
4 一方の締約国の企業であってその資本の全部又は一部が他方の締約国の「又は二以上の居住者により直接又は間接に所有され又は支配されているものは、当該一方の締約国において、当該一方の締約国の類似の他の企業に課されており若しくは課されることがある租税若しくはこれに関連する要件以外の又はこれらよりも重い租税若しくはこれに関連する要件を課されることはない。
5 この条の規定は、第二条の規定にかかわらず、すべての種類の税に適用する。
第二十五条
不服申立て及び両国の権限のある当局間の協議
1 いずれか一方の又は双方の締約国の措置によりこの条約の規定に適合しない課税を受けたと又は受けることになると認める者は、当該事案について、当該いずれか一方の又は双方の締約国の法令に定める救済手段とは別に、自己が居住者である締約国の権限のある当局に対して又は当該事案が前条1の規定の適用に関するものである場合には自己が国民である締約国の権限のある当局に対して、申立てをすることができる。当該申立ては、この条約の規定に適合しない課税に係る当該措置の最初の通知の日から三年以内に、しなければならない。
2 権限のある当局は、1の申立てを正当と認めるが、満足すべき解決を与えることができない場合には、この条約の規定に適合しない課税を回避するため、他方の締約国の権限のある当局との合意によって当該事案を解決するよう努める。成立したすべての合意は、両締約国の法令上のいかなる期間制限にもかかわらず、実施されなければならない。
3 両締約国の権限のある当局は、この条約の解釈又は適用に関して生ずる困難又は疑義を合意によって解決するよう努める。両締約国の権限のある当局は、また、この条約に定めのない場合における二重課税を除去するため、相互に協議することができる。
4 両締約国の権限のある当局は、2及び3の合意に達するため、直接相互に通信することができる。
第二十六条
情報の交換
1 両締約国の権限のある当局は、この条約若しくはこの条約が適用される租税に関する両締約国の法令(当該法令に基づく課税がこの条約の規定に反しない場合に限る。)を実施し又はこれらの租税に関する脱税を防止するため必要な情報を交換する。情報の交換は、第一条の規定による制限を受けない。一方の締約国が受領した情報は、当該一方の締約国がその法令に基づいて得た情報と同様に秘密として取り扱うものとし、この条約が適用される租税の賦課若しくは徴収、これらの租税に関する執行若しくは訴追又はこれらの租税に関する不服申立てについての決定に関与する者又は当局(裁判所及び行政機関を含む。)に対してのみ開示することができる。これらの者又は当局は、当該情報をこれらの目的のためにのみ使用することができる。これらの者又は当局は、当該情報を公開の法廷における審理又は司法上の決定において開示することができる。
2 1の規定は、いかなる場合にも、一方の締約国に対し、次のことを行う義務を課するものと解してはならない。
(a)当該一方の締約国又は他方の締約国の法令及び行政上の慣行に抵触する行政上の措置をとること。
(b)当該一方の締約国又は他方の締約国の法令の下において又は行政の通常の運営において入手することができない情報を提供すること。
(c)営業上、事業上、産業上、商業上若しくは職業上の秘密若しくは取引の過程を明らかにするような情報又は公開することが公の秩序に反することになる情報を提供すること。
第二十七条
徴収共助
1 各締約国は、この条約に基づいて他方の締約国の認める租税の免除又は税率の軽減が、このような特典を受ける権利を有しない者によって享受されることのないようにするため、当該他方の締約国が課する租税を徴収するよう努める。その徴収を行う締約国は、このようにして徴収された金額につき当該他方の締約国に対して責任を負う。
2 1の規定は、いかなる場合にも、1の租税を徴収するよう努めるいずれの締約国に対しても、当該締約国の法令及び行政上の慣行に抵触し又は公の秩序に反することになる行政上の措置をとる義務を課するものと解してはならない。
第二十八条
外交官又は領事官の特権との関係
この条約のいかなる規定も、国際法の一般原則又は特別の協定に基づく外交使節団又は領事機関の構成員の租税上の特権に影響を及ぼすものではない。
第二十九条
効力の発生
1 この条約は、両締約国のそれぞれの国内法上の手続に従って承認されなければならない。この条約は、その承認を通知する公文の交換の日の後三十日目の日に効力を生ずる。
2 この条約は、次のものについて適用する。
(a)韓国においては、
(i)源泉徴収される租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に支払われる額について源泉徴収される額。
(ii)その他の租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の税
(b)日本国においては、
(i)源泉徴収される租税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に租税を課される額
(ii)源泉徴収されない所得に対する租税及び事業税に関しては、この条約が効力を生ずる年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得
3 千九百七十年三月三日に東京で署名された所得に対する組税に関する二重課税の回避及び脱税の防止のための日本国と大韓民国との間の条約は、2の規定に従ってこの条約が適用される所得又は租税につき、終了し、かつ、適用されなくなる。
第三十条
有効期間
この条約は、無期限に効力を有する。ただし、いずれの一方の締約国も、この条約の効力発生の日から五年の期間が満了した後に開始する各暦年の六月三十日以前に、外交上の経路を通じて他方の締約国に対し書面による終了の通告を行うことができる。この場合には、この条約は、次のものについて効力を失う。
(a)韓国においては、
(i)源泉徴収される租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に支払われる額について源泉徴収される額
(ii)その他の租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の税
(b)日本国においては、
(i)源泉徴収される租税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に租税を課される額
(ii)源泉徴収されない所得に対する租税及び事業税に関しては、終了の通告が行われた年の翌年の一月一日以後に開始する各課税年度の所得
末文
以上の証拠として、下名は、各自の政府から正当に委任を受けてこの条約に署名した。
千九百九十八年十月八日に東京で、英語により本書二通を作成した。
日本国政府のために
高村正彦
大韓民国政府のために
洪淳瑛