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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本のKEDOへの協力再開にかかる官房長官発表

[場所] 
[年月日] 1998年10月21日
[出典] 外交青書42号,374−375頁.
[備考] 
[全文]

1.政府は,北朝鮮のミサイル発射を受けて,9月11日の官房長官発表において,北朝鮮に対し毅然とした厳しい対応を取るべく一連の措置を発表し,その中で,KEDOの進行を当面見合わせることとした。

2.今般,以下の諸点に鑑み,KEDOへの協力を再開することとし,具体的には,本21日,軽水炉プロジェクトの経費負担に関するKEDOの理事会決議に署名を行うこととした。

(1)第一に,KEDOは,北朝鮮の核兵器開発を阻むための最も現実的かつ効果的な枠組みである。わが国から見ても,KEDOと「合意された枠組み」(注)以外に北朝鮮の核兵器開発を阻むための現実的な選択肢はない。

 KEDOと「合意された枠組み」を崩壊させることによって,北朝鮮に対し,核兵器開発再開に向かう口実を与えてはならない。北朝鮮に対し,核兵器開発再開に向かう口実を与えてはならない。{前30文字ママ}北朝鮮は,9月末以降,「合意された枠組み」に基づく使用済み燃料棒の密封作業を再開している。わが国としても,このような動きを再び逆行させることなく,「合意された枠組み」の遵守を確保し,北朝鮮の核開発を封じていくことが,わが国自身の安全保障上極めて重要であると考える。

 (注)「合意された枠組み」は,米側が2基の軽水炉と,第1基目の軽水炉が完成するまでの間の代替エネルギーとして年50万トンの重油を供給する代わりに,北朝鮮側が黒鉛減速炉を凍結し,最終的には解体すること等を内容としている。

(2)第二に,北朝鮮によるミサイル発射を受けて,わが国がとった対応は一定の効果をあげつつある。9月1日の官房長官発表は北朝鮮に対する明確なメッセージであった。また,わが国は,米国,韓国等と緊密な連携を保っており,北朝鮮に対するわが国の懸念は,北朝鮮に対し直接伝達した他,米朝間の一般的協議,米朝テロ協議(9月28日)・米朝ミサイル協議(10月1〜2日)等の際にも米国を通じて,北朝鮮側に伝達されている。更に,わが国の立場については,国連安保理議長の口頭声明(9月15日),国際民間航空機関(ICAO)総会決議(10月2日),ミサイル輸出管理レジーム(MTCR)議長声明(10月9日)等に見られるとおり,国際社会の広汎な理解と支持が得られるに至っている。

(3)第三に,北朝鮮への対応に当たっては,引き続き,日韓米の連携が極めて重要である。米韓両国は,KEDOに関連する作業の進展に努めており,わが国に対し,KEDOの理事会決議に速やかに書名することの重要性につき理解を求めてきている。わが国としても,米韓両国との戦略的強調関係を維持・強化していくという観点から,KEDOの理担ぎへの署名を考える必要がある。

3.他方,今般,KEDOへの協力をわが国が再開する背景は以上述べたところに尽きるものであって,北朝鮮はこの点を誤解してはならず,政府としては,9月1日の官房長官発表に盛り込まれている北朝鮮に対するKEDO以外の措置は維持する方針である。わが国としては,ミサイル問題や核兵器開発疑惑問題をはじめ,二国間の諸課題に建設的に取り組むよう改めて北朝鮮側に呼びかけるものである。