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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 朝ロ共同宣言

[場所] 平壌
[年月日] 2000年7月19日
[出典] 朝鮮日報統韓研究所データベース
[備考] 翻訳 玄大松
[全文]

朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長である金正日同志の招請によって、ロシア連邦大統領であるウラジーミル・プーチン閣下が、2000年7月19日から20日まで、朝鮮民主主義人民共和国を訪問した。

平壌で行われた朝鮮民主主義人民共和国とロシア連邦首脳の出会いと会談は、両国間の親善関係の歴史において画期的なことであった。

両国の指導者は、双務関係問題と相互関心事となる国際問題に関して虚心胆慨に意見交換を行い、会談結果に基づいて、次のように宣言する。

1.2000年2月9日、朝鮮民主主義人民共和国とロシア連邦との間の親善、善隣及び協調に関する条約の調印は、伝統的な親善関係と善隣、相互信頼、多方面的な協調を強化し、国連憲章の目的と原則を尊重して、国際的安全と安定を成し遂げ、東北アジアと全世界において平等かつ互恵的な協調を発展させようとする相互の念願を示した。朝鮮民主主義人民共和国とロシアとの間の協調と密接な相互協力を一層発展させることは、両国人民の根本利益と多極世界を創設し、平等と相互尊重、互恵的な協調の原則に基づいた、新しく、公正で、合理的な国際秩序を樹立しようとする趨勢に符合する。このような国際秩序は、政治、軍事、経済、社会文化などの分野において、各国の信頼できる安全を保障するためのものである。

2.朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、あらゆる侵略と戦争政策に反対し、軍縮、世界の安定と安全を保障するために積極的に努力しようとする確固たる意志を表明する。

朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、朝鮮民主主義人民共和国、またはロシアに対する侵略の危険が造成されたり、平和と安全に脅威を与える情況が造成されて、協議と相互協力が必要な場合には、速やかに接触する用意を表明する。朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、他方の自主権、独立、領土保全に反する条約と協定を第三国と締結しないこと、また如何なる行動や措置、同盟にも参加しないという義務を確認する。

3.朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、南北共同宣言に基づいて朝鮮の統一問題を朝鮮民族同士で互いに力を合わせ自主的に解決しようとする努力を歓迎するとともに、この過程に対する外部の干渉を許してはならないということで見解の一致を見て、関係諸国がこれを支持することが重要であると見なす。ロシアはこれに関連した北南の朝鮮人同士の合意に対する支持を確認した。

4.朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、普遍的で恒久的な性格を帯びている国連憲章の目的と原則を尊重する、ということを確認した。朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、国連を一層、強化、更新して世界問題において、その中心的な役割を強化する上で協力する。朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、国連憲章を蹂躙する力の使用、または力の使用の脅威が国際関係体系の根本に挑戦する、許されざる行動であるという見解を基礎としている。朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、国連ミレニアム・サミットと総会が成功裏に開催されるよう緊密に相互協力する。また、この目的を達成するためにあらゆる加盟国が建設的な寄与をするよう訴える。

5.朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、各国が自国の政治、経済、社会発展の道を選択できる自主的権利を持っているということを確認するとともに人道主義干渉などの美名の下に、他国の内政に干渉することに反対し、自己の独立と自主権、領土保全を守るための双方の努力を支持する。

6.朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、戦略的及び地域的安定を強化するとともに、国際関係において、力の使用要素をより弱化することを主張する。戦略的安定の礎石であり、戦略攻撃武器をさらに削減するための基礎である1972年の弾道弾迎撃ミサイル制限条約を維持強化しながら、第2次戦略兵器削減条約(START−II)が速やかに効力を発生して完全に履行されるようにし、第3次戦略兵器削減条約(START−III)が1日も早く締結されるようにすることは最重要な意義を持つ。朝鮮民主主義人民共和国は、これに関連したロシアの努力に全面的な支持を表明した。朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、現在の国際的現実に対する分析の結果は、一部国家が1972年の弾道弾迎撃ミサイル制限条約の修正計画を合理化するために、いわゆるミサイル脅威を口実にすることは完全に根拠がない、ということを確証すると見なす。これに関連して朝鮮民主主義人民共和国は、わが国のミサイル綱領が誰も威嚇せず、純粋に平和的性格を帯びていることを確言する。朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、アジア太平洋地域にブロック型の閉鎖的な全域ミサイル防衛システムを配備することが、地域的安定と安全を著しく破壊することもあり得ると見なす。

7.朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、あらゆる形態の国際テロと分立主義、宗教極端主義、そして多国籍犯罪活動が主権国家の安全と世界の平和全般に脅威を造成する、と確信する。従って、双方は、民間航空と海上航行の安全に反する非法的な行為と麻薬、武器、文化的及び歴史的財産の非法的な取引を含んだ組織的犯罪及びテロとの闘争で相互協力する。

8.朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、21世紀が世界の全ての人民にとって繁栄の世紀になるべきであり、このために主権国家が自らの経済的土台を強化すると同時に、強固な経済成長を保障するための平等かつ互恵的な国際的協調を拡大すべきであると主張する。

9.朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、東北アジアが平和と善隣、安定と平等な国際的協調の地帯になることに利害関係があるということを確認し、これに関連した両国間の協調関係が変わらず重要である、ということを強調した。双方は、ASEAN地域フォーラムの果たす役割を高く評価し、同フォーラムの事業に相応の寄与をする意向を表明した。

10.朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、双務的な貿易、経済及び科学技術的連携を積極的に発展させ、それに有利な法的、財政的及び経済的条件を整えようとする意向を表明した。このために双方は、国内法と国際法の公認された諸原則と規範に符合するように経済分野の協定を締結する。金属、動力、運輸、林業、原油、ガス工業、軽工業など多様な分野での大規模協調計画の作成事業を積極化することを、政府間の貿易、経済及び科学技術協調委員会の朝鮮側とロシア側の委員長に委任した。そして、共同で建設した企業所の再建に特別な関心を払うことにした。

11.朝鮮民主主義人民共和国とロシアは、両国の立法機関、国家政権機関、そして社会団体との間の連携を深め安全と国防、科学と教育、文化と保健、社会保障、法律、環境保護、観光、体育及びその他の分野で協調を実現する。

ロシア連邦大統領ウラジーミル・プーチン閣下は、平壌で暖かい歓待を受けたことに対し謝意を表し、朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長金正日同志が都合の良い時期にロシアを訪問するよう招請し、招請は快く受諾された。

2000年7月19日

平壌

朝鮮民主主義人民共和国国防委員会委員長 金正日

ロシア連邦大統領 ウラジーミル・プーチン