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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 韓国国家安全保障会議常任委員会声明文について

[場所] 
[年月日] 2005年3月17日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

1.本日、鄭東泳(チョン・ドンヨン)韓国国家安全保障会議常任委員長は、「国家安全保障会議常任委員会声明」を発表した。本件声明に示された韓国国民の過去の歴史をめぐる心情については、我が国政府として重く受け止めるものである。

2.1965年に国交正常化を実現して以来、日韓両国の先人達は、大変な努力をして様々な困難を乗り越え、現在の良好な両国関係を築いてきた。我々は、この友好の歴史をさらに積み上げて、未来志向の友好協力関係の一層の発展のために努力する責任を担っている。特に、本年は日韓国交正常化40周年であり、「日韓友情年2005」である。2002年のサッカー・ワールドカップの日韓共催で日韓が共有した成功の経験を今後も積み重ねていけるよう、両国の不断の努力が求められる。

3.我が国としては、韓国政府及び国民とともに努力して、95年の村山談話、98年の日韓共同宣言及び2003年の日韓共同声明を踏まえ、過去を直視し、反省すべきは反省しつつ、和解に基づいた未来志向的な日韓関係を発展させていく強い決意を持っている。日韓国交正常化40周年というこの重要な節目に、一層の交流と相互理解を進め、お互いの心のわだかまりを取り除き、隣人としての信頼関係の構築に最大限努力する考えである。

4.このような隣人としての信頼関係の構築を行うに際しては、我が国は、アジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えた歴史の事実を謙虚に受け止め、韓国国民の気持ちに深い理解と共感を持って臨む必要があり、互いに忍耐と寛容を持って、隣人として助け合う精神が重要である。

5.日韓両国は、広範な分野において極めて重要な利益と課題を共有している。両国は、北東アジア地域、そして国際社会の平和、安定、繁栄のために、ともに歩みともに進むパートナーとして、北朝鮮核問題や東アジア共同体の構築といった課題にともに取り組んで行かなければならない。

6.日韓間の財産・請求権の問題については、国交正常化の時点において解決済みであり、その上に立って形成されてきた両国関係の歴史の歯車を戻すことは賢明と言えない。この点について、韓国の良識を確信している。その上で、朝鮮半島出身者の遺骨の調査及び返還に関する取組を含め、政府として、できる限りの協力を進めていく考えである。

7.竹島問題については、かねてより両国の間に立場の相違があるが、この問題を巡って、両国間の感情的対立を招来することは、日韓両国のためにならず、各々の周知の立場は立場として、漁業問題を含め、日韓関係全体を考え、大局的な視点から対応していく必要があると考える。

8.歴史教科書問題については、教科書の検定は、学習指導要領及び検定基準に基づき、公正かつ適切に実施されるものと考えている。

9.最後に、日韓両国民には、「進もう未来へ、一緒に世界へ」を合言葉に、お互いに自制すべきところは自制し、敬意の念を持って、両国関係発展のために努力していくことを期待したい。