データベース『世界と日本』(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本外交の基本姿勢に関する安倍晋三総理大臣の国会答弁

[場所] 東京
[年月日] 2006年10月2日
[出典] 国会会議録検索システム,第百六十五回国会 衆議院 本会議 第4号
[備考] 
[全文]

 日本外交の基本姿勢についてお尋ねがありました。

 私は、日本の外交、安全保障の基盤である日米の同盟関係が世界とアジアのための日米同盟であることをより明確にし、その基盤に基づき、アジアの強固な連帯のために積極的に貢献する外交へと転換してまいります。

 その際、先般の北朝鮮のミサイル発射に対する制裁決議を日本が主導して提案したように、日本の国益をしっかりと確保し、同時に、地域や世界のために日本は何をすべきか、世界は何を目指すべきかを積極的に主張し、リーダーシップを発揮していく所存です。

 アジア外交についてお尋ねがありました。

 アジアの平和と繁栄を維持強化するため、アジア全域の連帯の強化に主導力を発揮します。そのために、大事な隣国である中国、韓国と、あらゆるレベルと分野で相互理解と率直な対話や協力を積み重ね、双方の努力を通じて未来志向の関係を築いていきます。同時に、インドや豪州等の基本的価値を共有する民主主義国、さらにASEAN諸国との連携を一層強化していきます。

 拉致問題に関する政府の方針についてお尋ねがありました。

 拉致問題の解決なくして北朝鮮との国交正常化はあり得ません。政府としては、対話と圧力の方針のもと、引き続き、拉致被害者が全員生存しているとの前提に立って、すべての拉致被害者の生還を強く求めていきます。そのため、今般、私を本部長として設置された拉致問題対策本部を中心として、政府一体となって拉致問題解決に向けた総合的な対策を推進していきます。

 日ロ関係についてお尋ねがありました。

 小泉前総理のもとで、日ロ行動計画に基づき両国関係の進展に努めてきました。引き続き、日ロ両国間で幅広い分野における関係を前進させ、信頼関係に基づくパートナーシップの構築に努めていきます。そのためにも、最大の懸案である北方領土問題の解決に向け、粘り強く取り組んでまいります。

 過去に日本がアジアでとった行為についてのお尋ねがありました。

 さきの大戦をめぐる政府としての認識については、平成七年八月十五日及び平成十七年八月十五日の内閣総理大臣談話等により示されてきているとおり、我が国は、かつて植民地支配と侵略によって、多くの国々、とりわけアジア諸国の人々に対して多大の損害と苦痛を与えたというものであります。

 いわゆるA級戦犯の国家指導者としての責任についてお尋ねがありました。

 さきの大戦に対する責任の主体については、さまざまな議論があることもあり、政府として具体的に断定することは適当ではないと考えます。

 いずれにせよ、我が国は、サンフランシスコ平和条約第十一条により極東国際軍事裁判所の裁判を受諾しており、国と国との関係において、この裁判について異議を述べる立場にはないと考えています。

 私の靖国神社参拝についてのお尋ねがありました。

 靖国神社参拝につきましては、国のために戦ってとうとい命を犠牲にした方々に対して、手を合わせ、御冥福をお祈りし、尊崇の念を表する気持ちは持ち続けていきたいと思っております。

 私がこれまで、行くか行かないか、あるいは参拝したかしていないかについて宣明するつもりはないと申し上げてきたことは、私が個人としてまさに考えるところであります。