データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] OAPEC(アラブ石油輸出国機構)石油大臣会議声明

[場所] クウェート
[年月日] 1973年12月25日
[出典] 外交青書18号,173−174頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 アラブ石油大臣はクウェート市に会合し,ヤマニー・サウディアラビア石油鉱物資源大臣及びアヴドゥツサラーム・バラーイド・アルジェリア・エネルギー工業大臣より若干の西側諸国首都訪問の成果,両大臣が右訪問にて受けた印象及び右訪問後出て来た動き並びに以上の結果として両大臣が行つた提案を聴取した。

 諸大臣は,世界諸国の経済的崩壊の原因を生ぜしめることなくアラブ世界の領土の占領及びパレスチナ人民と呼ばれるアラブ人民の彼等の領土からの追放により,アラブ世界が受けた不正義の実情に世界の目を向けさせるためにとられた従来の諸決議による石油措置の真の意図を検討した。

 アラブ石油大臣は,10月17日以降に決議し発表した事及びこれらの措置は友好国に影響を及ぼさないこと並びにアラブ側に立つ者,敵側に立つ者及びその中間に立つ者の間に明確な差別を設けることを再び強調した。

 会議出席者は,日本副総理のアラブ諸国訪問その他の方法により明確となつた日本のアラブの大義に対する政策の変化及び悪化しつつある日本の経済状況に注目し,日本経済を擁護することを希望し,かつ日本がアラブの今回の態度を評価しアラブの大義に対し公正かつ正当な立場をとることを希望して,いかなる全般的削減措置の下にもおかないよう日本を特別に待遇することを決定した。

 会議出席者はベルギーの政治的立場を評価し,同国に対し石油供給の削減措置をとらないこととし,又,オランダ経由のベルギーへの石油の輸送につき,このすべての石油がいかなる横流しなくベルギーに到着するという保証を取付けた後認めることとした。

 会議出席者は友好諸国に対して,1973年9月のこれら諸国の輸入水準を越える場合であつても実際の必要量の石油を供給することを決定した。右については,このアラブ産油がこれらの諸国外に絶対横流しされたり,これら諸国が輸入せんとしていたいかなる非アラブ産油にとつて代ることがないことを条件とする。

 以上の点のすべてを実施するに当り,会議出席者は削減率を25%から15%とするため出席者各国の生産水準を,9月の水準を基礎に計算して10%上げること及び1月に予定されていた上積削減率を適用しないことを決定した。

 会議出席者は,米国の世論のかなりの部分がアラブの大義の実状とイスラエルの拡張主義に今や気づき始めている兆しが現われつつあるという漸進的変化を満足をもつて注目した。右は,米国上下両院の多数の議員がアラブ・イスラエル問題でとつている客観的かつ不偏なる立場に特に見られる。会議出席者は,公正なる平和的解決の探求に参加せんとする米国政府の希望が世界の全人類,特に米国国民とアラブ諸国民の相互関係にとり,有益な結果をもたらす実りあるものとなることを希望する。

 この点には注目しつつも,米国及びオランダに対する石油の全面的禁輸は継続する。

 各石油大臣は,彼等を代表する二大臣がその歴訪の第二部を終了した後,もしそれ以前に会合する必要がない場合は,その後リビア・アラブ共和国のトリポリにて会合する。