データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] エネルギー・ワシントン会議のコミュニケ

[場所] ワシントンDC
[年月日] 1974年2月13日
[出典] 外交青書18号,146−149頁.
[備考] 仮訳
[全文]

要約

1 ベルギー,カナダ,デンマーク,フランス,ドイツ連邦共和国,アイルランド,イタリア,日本,ルクセンブルグ,オランダ,ノールウェー,連合王国,アメリカ合衆国の外務大臣は,1974年2月11日から13日までワシントンにおいて会合した。ヨーロッパ共同体としては,理事会議長および委員会委員長が代表して出席した。

 大蔵大臣,エネルギー問題,経済問題,科学技術問題担当大臣もまたこの会合に出席した。この会合にはOECD事務総長も出席した。閣僚は,国際エネルギー事情およびその影響につき検討し,建設的かつ包括的な解決を要するこの挑戦に対応する行動の方向づけを行つた。この目的のため閣僚は,効果的な国際協力をもたらす具体的な措置につき合意した。

 閣僚は世界のエネルギー問題の解決は,産油国および他の消費国との協議のもとに探究されるべきことを確認した。

現状分析

2 閣僚は,過去約30年にわたる生産性および生活水準の向上は,かなり安定した価格におけるエネルギー供給の増大が容易に行われたことにより大いに促進されたことに留意した。閣僚は,増大する需要に対応するという問題は,現在の事態以前から存在していたことおよび世界経済のエネルギー供給増大の必要性は,積極的な長期的解決を要請することを認めた。

3 閣僚は,現在のエネルギー情勢はこれらの根本的な諸要因の激化および政治的変動の結果であるとの結論に達した。

4 閣僚は石油価格の大幅上昇によつて惹起された諸問題を検討し,世界の国際収支構造の見通しの急激かつ,重大な変更に関する最近の国際通貨基金20カ国委員会のローマ会合において証明された深刻な懸念に同感を示した。

5 閣僚は現在の石油価格は世界の貿易,金融構造に前例のない状況をもたらしたことにつき意見の一致をみた。

 閣僚はいかなる消費国もこのような状況から超然としていることを望み得ないこと,また,通貨または通商上の措置のみによつては石油価格の支払の影響に対処することは期待し得ないことを認めた。閣僚は現在の情勢はもしそれが継続すれば所得および雇用の深刻な悪化に導き,インフレ圧力を強めすべての国民福祉を危険にさらすと考える。閣僚は金融上の措置はそれだけでは現在の情勢に対する圧迫に対処することができないと信ずる。

6 閣僚はかかる状況が開発途上国にもたらす波及効果に特別の関心を表明し,この問題を解決するための国際社会全体の努力の必要性を認めた。

 現在の価格のもとでは,開発途上国にとつて追加的なエネルギー・コストはこれらの諸国の経済発展の見通しに深刻な打撃を与えることになろう。

一般的結論

7 閣僚は貿易,通貨,あるいはエネルギーのいずれの分野にせよ国家政策の推進に際しては,一方において各国の利益と他方において世界経済制度の維持との調和をはかる努力がなされるべきであることを確認した。産油国を含むすべての関係国の間の調和のとれた国際協力は需給情勢改善の促進,現状がもたらす,好ましからざる経済的波及効果の改善,およびより衡平かつ安定した国際エネルギー関係のための基盤整備に役だつであろう。

8 閣僚は,これらの諸点を総合して考慮すれば,すべての分野における国際協力を大幅に増大させなければならないと感じた。今次会議の参加国はいずれも他の消費国および産油国と緊密に協力して,この目的のため,最大限の貢献を行う強い意向を表明した。

9 閣僚は協調的措置により,世界エネルギー情勢のすべての局面に対処するための総合的行動計画の必要性につき合意した。これを行うにあたり閣僚はOECDにおける作業を基礎とすることに合意した。閣僚は,適当な場合には,これらの努力に他の諸国が参加するよう招請する場合があり得ることを認識した。

 国際協力のこのような行動計画は次のような分野において国家政策を協調させつつ手段および努力を分かつことを含む。

 −−エネルギーの保全と需要の抑制

 −−緊急時および厳しい不足時における石油供給の割当の制度

 −−エネルギー供給源の多角化をはかるため追加的エネルギー源の開発の促進

 −−国際的な協調努力を通じるエネルギーの研究開発計画の促進(※9項全体)

   (フランスは※印の項は受諾せず,以下同様)

10 金融および経済問題については,閣僚は協力を強化し,現在のエネルギー情勢の経済上および金融上の波及効果,特に国際収支不均衡問題の処理に関するIMF,世銀およびOECDが行つている作業を大いに促進することを決定した。

 閣僚は,次のとおり合意した。

 −−石油価格の国際収支への影響に対処するにあたり,閣僚は,競争的為替レートの切下げおよび貿易と支払制限の強化または対外借款における破壊的行動を回避することの重要性を強調した。(※)

 −−閣僚は,財政的協力は,国際的経済制度において最近生じた諸問題を部分的にしか緩和し得ないが,既存の公約および市場の信用制度を強化する短期的措置および可能な長期的メカニズムについて作業を進めるであろう。(※)

 −−閣僚は,現在のエネルギー・コスト水準の結果としての諸困難をできるだけ軽減するような国内経済政策を追求するであろう。(※)

 −−閣僚は,適量の資源を有するすべての国を含む国際的な連帯感にもとづき二国間および多角的機構を通じて開発援助の流れを維持,増大させるためのねばり強い努力を続けるであろう。

11 さらに閣僚は世界全体の需給事情の改善に資するごとき新エネルギー源および技術の各国自身のあらゆる実施可能な計画を促進することに合意した。

12 閣僚は国際石油会社の役割を詳細に検討することに合意した。

13 閣僚はエネルギー源開発の一環として自然環境を維持し改善することの重要性が引き続きあることを強調し,これを各国の活動の重要な目標とすることに合意した。

14 閣僚はさらにすべての関係国の長期的利益を考慮に入れた産油国および他の消費国と多角的な協調関係を発展させる必要があることにつき合意した。閣僚は数量および価格についてのエネルギー供給の安定化の問題につきこれらの諸国と技術的情報を交換する用意がある。

15 閣僚はエネルギーおよび一次産品というより広汎な問題を世界的規模でまた,特に国際連合特別総会においてとりあげるという国際連合におけるイニシアティヴを歓迎した。

フォロー・アップ機構の設置

16 閣僚はさきに言及されている行動の進展を監督し,かつ調整するため各国政府高官を代表とする調整グループを設置することに合意した。

 調整グループは,最も適した自己の作業計画を決定する。調整グループは:

 −−既存機関に割当てられることがあり得る作業をモニターし,かつ問題の所在を解明する。

 −−現在とりあげるに適した機関が存在しない作業を行うため必要な場合には臨時の作業グループを設置する。

 −−消費国および産油国の会議の準備を監督する。この会議はできるだけ早い機会に開供することとし,また必要があればこの会議の前に消費国間の会合が開かれる。(※16項全体)

17 閣僚はそのような会合の準備にあたり開発途上国,その他消費国および産油国と協議を行うべきことに合意した。(※)