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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] フセイン一世国王(ジョルダン)歓迎晩餐会における三木内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1976年3月11日
[出典] 三木内閣総理大臣演説集,169−171頁.
[備考] 
[全文]

 フセイン一世国王陛下及びアーリア王妃陛下並びに御列席の皆様、このたびアラブの伝統ある王国であるジョルダン・ハシェミット王国より、フセイン一世国王陛下及びアーリア王妃陛下、並びに随行のアーリア王女殿下、バスマ王妹殿下、リファーイ首相閣下他御一行をわが国にお迎えし、本夕歓迎の晩餐会を開くことができましたことは、私の深く喜びとし、かつ、この上ない光栄とするところであり、ここに日本国政府及び国民を代表し、心から歓迎の意を表したいと思います。

 私どもは、近代におけるアラブ民族の独立及び復興運動の上でハシェミット王家が果した指導的役割、特に今世紀の初め、フセイン国王陛下の曾祖父であられる偉大なフセイン・イブン・アリ王の統率のもとに遂行された有名な「アラブの叛乱」については、近代世界史の輝かしい一頁を飾るものとしてよく承知しており、今なお歴史書をひもとくたびに深い感銘を覚えるものであります。

 フセイン国王陛下は、この輝かしい歴史と伝統を誇るハシェミット王家の当主であらせられるとともに、卓越した識見と経綸を備えた政治家で、且つ、武勇の誉れ高い軍人でもあらせられ、現代アラブ世界における最も傑出した指導者の一人として、ひろくアラブ諸国民より尊敬と信望をうけておられる方でありますが、わが国においてもフセイン国王陛下の御人柄については非常に良く知られ、国民の多くが深い敬愛の念を抱いている次第であります。

 御承知のとおり、わが国政府及び国民は、中東における平和の確立と経済の発展が、世界の平和と諸国民の繁栄のために不可欠であるとの見地からこれに大きな関心を有しており、このためにできる限り寄与致したいと考えております。

 私は本日午前中、フセイン国王陛下より、ジョルダンがフセイン国王の御指導の下に中東、さらには世界の平和と発展のために、如何に積極的な努力を続けておられるかについて親しく伺うことができ、多大な感銘をうけた次第であります。

 わが国とジョルダンとの間では、一昨年小坂特使が貴国を訪問し、貴国よりはハッサン皇太子殿下がわが国を訪問されるなど最近相互の交流が活発化しつつあり、これに伴い両国関係が政治、経済、文化、その他各分野において、益々緊密の度を加えつつあることは誠に御同慶の至りであります。今回のフセイン国王及びアーリア王妃両陛下の御訪日により、この両国の友好関係が一層の増進を遂げることを念願してやみません。

 フセイン国王及びアーリア王妃両陛下の今回の御滞在は極めて短期間でありますが、わが国各界の指導者との会談等を通じ、わが国の実情について御理解を深められることを希望いたします。また明日午後よりは京都に赴かれると伺っておりますが、わが国の古い歴史や文化についても十分見聞されることを希望いたします。

 ここにフセイン国王陛下及びアーリア王妃陛下の御健康、ジョルダソ・ハシェミット王国の発展と繁栄並びにわが国とジョルダン王国との末永き友好を祈って杯を上げたいと思います。