[文書名] フセイン国王訪日に際しての日本・ジョルダン共同コミュニケ
1.ジョルダン・ハシェミット王国フセイン一世国王陛下及び王妃アーリア陛下は,日本国の国賓として1976年3月10日から16日まで日本国を訪問された。両陛下には,アーリア内親王殿下,バスマ王妹殿下,ザイド・リファーイ首相夫妻,ラード・ビン・ザイド殿下,タイルーム・ダゲスターニ閣下,ラジャーイ・ムアシェル商工大臣をはじめとするジョルダン・ハシェミット王国の王室及び政府関係者が同行した。
2.国王・王妃両陛下は3月10日,皇居において暖かい歓迎を受け,天皇・皇后両陛下と極めて友好的かつ誠意にあふれた雰囲気のうちに話合いを行われた。国王・王妃両陛下は,東京及びその近郊の産業施設を視察されるとともに,日本の各界の代表的指導者と会見され,日本の経済及び社会の実情を親しく見聞された。また,国王・王妃両陛下は,滞日中,京都を訪問され,日本の歴史的文化財を視察され,日本の伝統的文化に親しく接する機会を得られた。
3.国王陛下は,2回にわたり三木総理大臣と会談され,現下の国際情勢及び両国関係の一層の発展の可能性を含め,相互に関心のある諸問題について有益な意見の交換を行われた。両会談にはジョルダン側は,リファーイ首相ほかが,また,日本側は宮澤外務大臣ほかが同席した。
国王陛下及び三木総理大臣は,相互に両国の基本的外交政策を説明し,現在の国際情勢の下では,すべての国家が相互依存の関係にたつているとの認識を踏まえ,世界平和を推進し,かつ,国際協力を発展させるために両国が相互に協力を続けるべきことに合意した。
4.三木総理大臣は,アジアの情勢に関して説明を行い,国王陛下はアジアの平和と安定のために果たしている日本の役割を高く評価された。国王陛下及び三木総理大臣は,アジア情勢の安定が世界の平和と発展のために緊要であるとの確信を強調した。
5.国王陛下は,中東情勢に関し,現在の行き詰まりが世界の平和に及ぼすべき脅威を含めて説明を行われた。国王陛下及び三木総理大臣は,中東問題が世界の平和に対し有する重要性を認識し,中東地域に一日もはやく公正かつ永続的な和平が達成されることに対する希望を表明した。
国王陛下と三木総理大臣は,この目的のためには,安保理決議242号に従い,1967年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退が行われ,また,域内のすべての国の領土の保全と安全が尊重されなければならないこと,さらに,パレスチナ人の民族的権利が国連憲章に基づき承認・尊重されることが必要であることについて意見の一致をみた。
国王陛下は,日本国政府が中東問題について深い理解を有していることを評価し,これに満足の意を表明した。三木総理大臣は,フセイン国王陛下の指導の下に,ジョルダン・ハシェミット王国が国家建設において目覚しい進歩をとげ,また,中東地域の安定と発展のために大きく貢献していることを高く評価した。
6.国王陛下及び三木総理大臣は,両国関係が,小坂日本国政府特使のジョルダン訪問及びハッサン皇太子殿下の訪日を契機に,近年,緊密の度を増していることに満足の意を表明した。国王陛下及び三木総理大臣は,経済,貿易,技術,科学及び文化の分野における協力を更に促進することの重要性に留意した。国王陛下は,1976年から1980年にわたるジョルダンの経済社会開発計画に対する日本の資金及び技術協力についての願望を表明された。三木総理大臣は,日本政府はこの願望,特にワディ・アラブ・ダム灌漑計画に対する資金協力の要請については,日本の農業開発調査団により実施可能性が確認されれば慎重な検討を行う考えである旨を表明した。
7.国王陛下は,滞日中,両陛下及び随員一行に示された暖かい歓迎と厚遇に対し,日本国の天皇・皇后両陛下,政府及び国民への深い感謝の意を表明された。
8.国王・王妃両陛下の訪日は,日本国とジョルダン・ハシェミット王国の友好関係の促進に大いに貢献した。