データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 福田総理大臣イラン訪問の際の日本・イラン共同コミュニケ

[場所] テヘラン
[年月日] 1978年9月7日
[出典] 外交青書23号,397−398頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1.福田赴夫日本国総理大臣は,ジャッファル・シャリーフ・エマーミー・イラン帝国首相よりの招待により,夫人とともに1978年9月5日から8日までイランを公式訪問した。園田外務大臣が福田総理に同行した。

2.福田総理は,イラン滞在中,イラン皇帝陛下に拝謁を賜わつた。

3.福田総理とシャリーフ・エマーミー首相は,友好的かつ親密な雰囲気の下で,両国関係及び重要な国際問題につき意見の交換を行つた。

4.現下の国際情勢に関する意見交換において,双方は,両国の外交政策の基本姿勢が世界の平和と安全の維持及び全ての国との友好関係の発展にむけて努力することを目指すものであるということで同一のものであることを再確認し合つた。

5.双方は,インド洋における平和と安全の維持の重要性を強調し,この関連で,国際連合決議第2832号に従つてインド洋を平和地帯として認めることに対する支持を確認した。

 イラン首相は,日本を含む工業国のエネルギー需要の過半の供給路であるペルシャ湾の国際経済上の重要性に言及し,イラン帝国政府は世界のこの重要な地域の平和と安全を維持することは沿岸国の責任であり,この地域は外国の干渉を受けるべきではないと考える旨述べた。日本国総理は,ペルシャ湾は,日本にとり経済的に大きな重要性を有する旨述べ,イラン首相の発言に対し十分な理解を示した。

6.双方は,東アジア情勢に関し同様な見解を表明した。イラン首相は,その地域における協力と平和の維持にむけて日本が行つている努力を評価した。

7.中東情勢を展望して,双方は,公正かつ永続的和平を達成するためには,国際連合安全保障理事会決議第242号及び第338号の全ての規定が全面的に適用されること及び国連憲章に基づくパレスチナ人の正当な権利が承認されることが必要な旨意見の一致をみた。

8.両国総理は,世界経済の回復,国際通貨情勢の安定化及び新国際経済秩序の樹立につき意見を交換した。両者は,世界経済情勢の安定化と改善のため可能な限り協力を継続することに合意した。

9.両国総理は,あらゆる分野においていちじるしく拡大しつつある日本とイランの両国関係の現状に満足の意を表明した。

10.双方は,イランからの日本への石油の輸出の分野及び日本からのイランへの技術移転の分野における緊密な協力を継続することに合意した。

 双方は,科学技術協力,特に石油代替エネルギーの開発に関し協力を促進することの必要性を再確認し,経済,科学及び技術協力の促進のため常時協議することに合意した。両者はまたイランの半製品の日本への輸出を含む両国間貿易が相互の利益のために増進されるべきことに合意した。

11.両国総理は,両国が共に古い伝統文化を有しているとともに近代的文明を志向していることに留意し,両国間の文化交流を拡大する必要性を認めた。両者は,両国間の文化協力の増進のため相互に真剣に協議し,それぞれの大学において相手国に関する研究コースの開設及びアジアにおける東西文化交流史に関する共同研究の促進を含む措置を講ずることに合意した。

12.両国総理は,1980年が日本からの最初の公式使節がイランを訪問してから100年目にあたることにかんがみ,同年に日イ修好100年を記念するにふさわしい事業を両国において行うことに合意した。

13.シャリーフ・エマーミー首相は,今回の福田総理のイラン訪問が,両国間における一層の相互理解の促進,相互友好協力関係の強化及び協力の拡大に対し大きく貢献した旨述べた。

14.福田総理は,同総理及び随員一行がイラン滞在中に受けたあたたかい厚遇に対し,感謝の意を表明した。

15.福田総理は,シャリーフ・エマーミー首相が日本を訪問するよう公式に招待した。この招待は感謝の念をもつて受諾された。訪日の具体的日時は今後外交チャネルを通じて決定される。