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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 福田総理大臣のアラブ首長国連邦訪問の際の日本・アラブ首長国連邦共同プレス・リリース

[場所] アブダビ
[年月日] 1978年9月11日
[出典] 外交青書23号,399−400頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1.福田赴夫日本国総理大臣は夫人とともに,アラブ首長国連邦政府の賓客として1978年9月10日から11日まで同国を公式訪問した。

 福田総理大臣夫妻には園田直外務大臣を含む政府高官が随行した。一行は,マクトウーム・ビン・ラーシド・アル・マクトウーム・アラブ首長国連邦首相および政府高官によつて歓迎を受けた。

 福田総理大臣は,アラブ首長国連邦滞在中,シエイク・ザーイド・ビン・スルタン・アール・ナハヤーン・アラブ首長国連邦大統領に拝謁を賜わり,次いで同大統領と有益な会談を行つた。

 右会談には,日本側より園田外務大臣らが出席し,他方アラブ首長国連邦側よりマクトウーム・ビン・ラーシド・アル・マクトウーム首相らが出席した。

2.福田総理大臣およびザーイド大統領は率直かつ有益な会談を行い,湾岸地域情勢をはじめとする現下の国際情勢および両国が関心を有する諸問題につき意見の交換を行つた。会談は友好的かつ親密な雰囲気の中で行われ,双方は右会談が両国間の相互理解および友好関係を一層増進する上で極めて有意義であつたことを確認した。

3.福田総理大臣は,アラブ首長国連邦がザーイド大統領の英邁な指導の下で,世界で最も重要な地域のひとつである湾岸地域の安定的発展のために果している重要な役割を高く評価した。

 双方は,中東における公正かつ永続的和平の早期達成が世界平和にとつて緊要であることにつき意見の一致をみた。この関連で,ザーイド大統領は,現下の中東情勢を展望するとともに,この問題に関するアラブ首長国連邦の見解を説明し,福田総理大臣は,中東に公正かつ永続的和平が達成されるためには,1967年戦争の全占領地からのイスラエル兵力の撤退を含む国連安全保障理事会決議第242号ができるだけ早く実施されるとともに,民族自決権を含むパレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利が承認され尊重されることが必要であると考えるとの日本政府の立場を再確認した。ザーイド大統領は,中東問題に関する日本政府の立場を評価した。

 更に福田総理大臣は,アラブ首長国連邦の石油価格に関する穏健な政策を高く評価した。

4.双方は,両国の経済,貿易関係が近年極めて順調に発展しつつあることに満足の意を表明し,今後かかる円滑な関係が一層増進することを希望した。

 また双方は,両国間の友好協力関係をさらに多角的に発展させるため,技術協力,文化,その他の分野において交流を促進することにつき完全な意見の一致をみた。

5.福田総理大臣は,アラブ首長国連邦滞在中,同総理大臣夫妻一行に対して与えられた丁重かつ温かい歓待に対し,心からの感謝の意を表明した。また,福田総理大臣は,ザーイド大統領に対する以前よりの日本国政府の招待を再確認した。これに対し,ザーイド大統領は,近い将来訪日したいとの希望を表明した。訪日の時期は外交チャネルを通じ決定される。