[文書名] 福田総理大臣のサウディ・アラビア王国訪問の際の日本・サウディ・アラビア共同コミュニケ
1.福田赴夫日本国総理大臣は,ファハド・ビン・アブドル・アジーズ皇太子兼副首相の招待により,1978年9月11,12日の両日サウディ・アラビア王国を公式訪問した。福田総理大臣には,園田外務大臣その他政府高官が随行した。
2.福田総理大臣は,ハーリド・ビン・アブドル・アジーズ国王兼首相に拝謁を賜わるとともに,同国王と現下の国際情勢及び2国間関係について極めて有益な意見交換を行つた。さらに福田総理大臣はファハド・ビン・アブドル・アジーズ皇太子兼副首相と会談した。これら会談には,日本側から園田外務大臣,大口駐サウディ・アラビア大使,道正官房副長官,高島外務審議官らが同席し,サウディ・アラビア側からスルタン国防航空大臣,サウド外務大臣,ヤマニ石油鉱物大臣,ナーゼル企画大臣,アバル・ヘイル財政・経済大臣,マンスーリ外務次官,ダッバーグ駐日大使,セラージ外務省アジア局長が同席した。
3.福田総理大臣とファハド皇太子兼副首相は非常に友好的な雰囲気の中で,現下の国際情勢に係る共通の関心事項及び2国間関係につき意見の交換を行つた。両者の見解は,率直な形で表明され,一致するものであつた。
双方は,両国関係が近年非常に多岐の分野にわたり一層緊密化していることに満足の意を表明し,さらに福田総理大臣の今次訪問が,両国の最高指導者同士の個人的接触を通じ,両国間の相互理解及び友好協力関係を更に増進する上で真に有意義であつたことに意見の一致をみた。
4.(1)双方は,世界平和にとつて中東における公正かつ永続的和平の早期達成が必要であることにつき意見の一致をみた。双方は,かかる和平が達成されるためには,イスラエルが,1967年戦争において同国が占領したジェルサレムのアラブ地区を含む全アラブ占領地から撤退し,民族自決権を含むパレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利を承認すべきである旨認識した。日本側は,公正かつ永続的和平が達成されるためには,同地域のすべての国の領土の保全と安全が尊重されることが必要であることを確認した。
(2)福田総理大臣は,特に,日本がアジアの安定と発展のために払つている努力につき説明した。これに対し,ファハド皇太子兼副首相は湾岸・紅海情勢に関するサウディ・アラビア側の見解を表明するとともに,サウディ・アラビアが同地域の安全と安定確保のために同地域のその他の諸国と協力して果している役割につき言及した。双方は,世界の平和と繁栄確保のため,それぞれが,その地位にふさわしい役割を今後とも果してゆくことにつき意見の一致をみた。
5.双方は,国際経済情勢について意見を交換した。福田総理大臣は,先般の主要国首脳会議の成果及び日本が世界経済の発展と安定及び開発途上国に対する援助拡大のために行つている積極的努力につき説明し,今後ともそうした努力を継続して行くとの決意を表明した。サウディ・アラビア側は,日本側のかかる努力を評価するとともに,通貨の安定,南北間の協力の推進,エネルギー資源の有効利用及び代替エネルギー源の開発の必要性等に対するサウディ側の強い関心を表明した。双方は,今後とも世界経済の安定的発展のため両国が夫々の立場であらゆる可能な努力を行うことにつき意見の一致をみた。日本側は,サウディ・アラビアが世界経済に対する責任を十分に認識し,穏健な石油政策をとつていることを高く評価すると共に,そのような政策が継続されることを希望した。
6.福田総理大臣は,サウディ・アラビアの建設事業及び開発計画実施について同国に対し,日本として可能な限りの協力を行う方針であり,今後とも石油化学関連合弁プロジェクトその他のプロジェクトにおいて,サウディ・アラビアの経済開発と工業化に積極的に貢献したいとの意向を表明すると共に,日本・サウディ・アラビア合同委員会がこの協力を一層推進するものとなる旨述べた。サウディ・アラビア側は日本側のかかる積極的な姿勢を歓迎した。
7.(1)双方は,園田外務大臣のサウディ・アラビア訪問の際合意されたように,文化交流を拡大すると共に,学術,科学技術交流を一層促進するとの必要性を確認し,更にそのための具体的な措置につき,今後共両国間で協議を継続することの必要性を確認した。
(2)双方は,両国間の相互理解増進のために交流の促進が有益であることに意見の一致をみ,その一環として特に青少年の交流を促進して行くことに合意した。
8.福田総理大臣は,同総理大臣及び随員一行がサウディ・アラビア王国滞在中に受けた温かい歓迎と厚遇に対し,心からの感謝の意を表明した。更に,福田総理大臣は,ファハド・ビン・アブドル・アジーズ皇太子に対し,日本を訪問するよう正式に招待した。同皇太子は,右招待を感謝の念をもつて受諾した。訪日の時期は,今後外交チャネルを通じて決定される。
又,ファハド皇太子は,福田総理大臣に対し,ハーリド国王からのかねてよりの天皇陛下に対するサウディ・アラビア王国訪問への招待を改めて行つた。