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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 米国の中東和平新提案(レーガン提案)についての宮澤外務大臣臨時代理談話

[場所] 
[年月日] 1982年9月4日
[出典] 外交青書27号,412−413頁.
[備考] 
[全文]

1.我が国は,米国がレバノン情勢の鎮静化に力を尽す一方で中東和平の核心であるパレスチナ問題解決の重要性にも十分な考慮を払い,その平和的解決のため関係当事者に和平努力を呼び掛けるとともに,今回のレーガン大統領の諸提案において同問題に正面から取り組む責任ある姿勢を示したことを高く評価する。

2.9月1日にレーガン大統領が行った演説の中で示された米国の中東和平問題に対する具体的な考え方は,基本的に建設的なものであり,真剣な検討に値すると考える。とりわけ西岸・ガザにおけるイスラエル入植の凍結,あるいはイスラエルによる西岸・ガザの併合または恒久的支配に対する反対の立場は日本政府としてもこれを強く支持する。

3.他方,本件提案が西岸・ガザの将来の地位についてジョルダンとの連合のみに限定している点は我が国の従来の立場と異なっている。我が国としては今後ともイスラエルの生存権とともに国家樹立の権利を含むパレスチナ人の民族自決権の実現を支持するとの立場を維持する。またPLOが和平交渉の過程に参加すべきであるとの従来の我が国の立場に変更はなく,その実現のため関係当事者の間で歩みよりが見られることが望ましい。

4.本提案はその精神と趣旨において中東の包括的和平へ至る積極的な要素を含んでおり,我が国としては関係当事者が本件提案を念頭に置きつつ問題の平和的解決のための努力を再開することを切に希望する。

 また,今後関係当事者間の立場の相違については,交渉の場における話合いを通じて建設的方向で解決さるべきであると考える。