[文書名] バドラーン首相主催晩餐会における海部内閣総理大臣の挨拶
バドラーン首相閣下並びにご列席の皆さま
今夕は私どものためにかくも盛大なる晩餐会を催して頂き、また、ただ今は、首相閣下よりご鄭重なる歓迎のお言葉を賜り、お礼申し上げます。
私は五年前に、日本ヨルダン友好議員連盟代表団の長として貴国を訪れました。今回、こうして再び、日本の総理大臣として貴国を訪問できましたことは、私の大きな慶びであり、また、誇りであります。
我が国と貴国とは、同じ東洋の一員であります。古来東西文明の十字路として栄えたこの地と我が国との間には、シルクロードを架橋として、幾多の交流が行われてきました。昨年秋から今年にかけて、東京はじめ日本の各都市で、「王の道・ヨルダン九千年の芸術文化展」が開催されましたが、貴国の偉大なる文化遺産は、多くの日本人に感動を与えました。
我が国とジョルダン・ハシミテ王国との協力関係の歴史は決して長いものではありませんが、その間に両国間の友好関係は、幅広い分野で目覚ましい発展を遂げて参りました。
両国関係の頂点には、王室・皇室間の深い友情の絆と交流があります。フセイン国王はじめジョルダン王室の方々の度重なる訪日の機会を通じ、我が国国民の間には、貴国の伝統と信義と寛容を重んじる国柄についての理解が広がり、貴国に対する親しみも益々深まってきています。
貴国が栄邁なるフセイン国王のご指導の下に、幾多の困難を乗り越え、長期的ビジョンをもって国家運営に当たっておられ、経済改革に積極的に取り組むとともに、民主化を推進し、官民挙げての国造りに邁進しておられることも、我が国ではよく知られております。
我が国はこれまで貴国の経済社会開発に対してできる限りの協力を行ってまいりました。特に、私は、青年海外協力隊の創設に携わった一人として、現在貴国に二十三名の日本人男女が青年海外協力隊隊員として活躍し、貴国の発展の一端を担っていることを誇りに思うものであります。
アラブには、「タカは翼無くして飛べず」(ハル ヤンハド アルバーズイー ビゲール ジュナーハ)という諺があるとのことですが、我が国と貴国との関係強化と中東の平和と発展のため、私は喜んでその一翼(ジュナーハ)になりたいと考えるものであります。
ご列席の皆さま
バドラーン首相のご健康、ジョルダン・ハシミテ王国の繁栄と発展、そして日本とジョルダンの友好協力関係の一層の増進を祈念して杯をあげたいと思います。