[文書名] アクブルト首相主催午餐会における海部内閣総理大臣の挨拶
アクブルト首相閣下、ご列席の皆さま
本日は私のためにこのような心暖まる昼食会を催して頂き、誠に有り難うございます。また、この機会に、三笠宮寛仁{トモヒトとルビ}親王同妃両殿下が貴国を訪問された際、手厚いおもてなしを受けたことに対し、厚くお礼申し上げます。
トルコ民族は世界に冠たる偉大な歴史を有するとともに、二十世紀に入ってからは世界的英雄ムスタファ・ケマル・パシャの指導の下、近代的国造りに乗り出しました。私は、青年時代からこの光輝あるトルコ民族の歴史に強い関心を抱いてきましたが、この度、日本・トルコ友好百周年という佳節の年に当たり、日本の総理大臣として初めてトルコを訪問できましたことは、私にとり無上の喜びとするところであります。
両国関係が、伝統的な友好関係を基礎として、近年、政治、経済を始めとする広範な分野で急速に緊密の度を増していることは誠に喜ばしい次第であります。オザル大統領、貴首相の訪日等の機会におけるハイ・レベルの対話、両国友好議員連盟を中心とする活発な議員交流、両国協力によって完成した第二ボスポラス橋、トルコ航空の日本乗り入れ等、両国関係の発展振りを示す例は枚挙に暇がありません。
両国は、巨大なアジア大陸の両端に位置する関係にありますが、同時に、多くの共通点によって結ばれています。歴史的に、両国は他民族の支配を受けず、十九世紀から二十世紀初頭、ともに列強の圧力に屈することなく、民族の独立を全うしました。また、国造りにおいても、両国はともに西欧を範とする近代化の道を選択しました。
偉大なる指導者アタチュルク大統領は、共和国十周年記念演説において次のように言っております。「我々はトルコを世界で最も繁栄し、発達した国にせねばならない。我々はそのための手段を手に入れ、そして成功するであろうと私は確信している」。貴国は、まさに、この目標に向かい着実な成果を収めていると申せましょう。
また、両国はこのような近代化を推進する一方で、独自の伝統と慣習を失わず、誇るべき文化的遺産の保全にも腐心してきたのであります。
今後の両国の関係は、このような多くの共通点に基づく確固たる相互理解に支えられ、益々発展する余地が大であると私は確信いたします。
首相
翻って世界に目を転じますと、冷戦の構造から対話と国際協調の新たな国際秩序に向かって国際情勢が大きく変動しつつある中で、世界は湾岸危機という深刻な困難に直面しております。トルコと日本は、国際社会とともに、国連の安保理諸決議の完全実施による公正かつ平和的な解決を追求すべきであるとの立場を一にすることに、私は勇気づけられております。
首相
我々両国民は、互いに協力し合い、ともに手を携えて、次なる友好二百年を目指して前進しようではありませんか。
最後に、トルコ共和国の一層の繁栄とアクブルト首相並びにご列席の皆さまのご健康を祈念して乾杯したいと存じます。