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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] イラク軍のクウエイト侵攻(ナカソネ元総理一行とフセイン大統領との会談)(イラク軍のクエート侵攻(中曽根元総理一行とフセイン大統領との会談))

[場所] イラク
[年月日] 1990年11月4日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

総番号 R224101

平成2年11月5日{約6文字黒塗り}  イラク発

平成2年11月6日{約6文字黒塗り}  本省着

主管  近2

転電スミ


外務大臣殿            片倉大使


イラク軍のクウエイト侵攻(ナカソネ元総理一行とフセイン大統領との会談)(2の1)

第3337号 秘 至急(ゆう先処理) {約7文字黒塗り}

4日、午後{前二文字ママ}11時半から午後2時までの間、ナカソネ元総理一行はフセイン大統領と全体会談を行つたところ、主要なやり取り次のとおり。

(先方:ラマダン第一副首相、アジズ外相、ジャーシム情報文化相、当方:議員団、本使、中山大使他、通訳ミヤモト)。

1. 冒頭ナカソネ元総理より次のとおり発言された。

(1)今回私は今次の危機の平和的解決のたんしよをさぐりに来た。本件は世界的な拡大をする恐れがあり、自分の観測では、事態は緊迫している。危険性は増している。もし戦争が始まれば取り返しのつかないことになり人類的不幸を招致する。

(2)日本は平和国家として、平和的解決のため努力したい。

(3)貴大統領の8月12日のイニシアテイブで基本的お考えは承知している。仏大銃領の国連演説にも関心を有している。本日は貴大統領から直接お考えを聞きたい。

(4)自分の基本的考えは、

(イ)国連諸決議はそん重され、実施されなければならない。

(ロ)武力しよう突は極力回避せねばならない。

(ハ)全ての外国人人質はできる限り速やかに解放されるべきであるというものである。

(5)双方の立場に未だかなりきよ離がある。平和的かん境の中できよ離を近付けるのが政治家の努めであろう。

(6)日本の立場について若干の誤解があるので訂正しておきたい。憲法改正等行つていない、その可能性もない。国連平和協力隊法では自衛隊を戦闘に参加させるものでもない。現下の国会の勢力分布、国内世論から見て同法案は国会を通過しないのではなかろうか。

(7)最後に世界各国の人質の問題に関し、全員の解放が望ましいが、少なくとも、病人・高れい者については速やかに解放して欲しい。

2. ついでサトウ議員より次のとおり述べた

(1)わが方の考え方はナカソネ元総理の述べられたとおりだが、若干付け加えれば湾がんへの自衛隊の派遣はないだろう。

また日本は第二次大戦の経験、世界でゆい一のひ爆国としての経験から戦争の無益さを知つている。(フセイン大統領よりどこの国の原爆かとの質問)

3. 次いでフセイン大統領より次のとおり述べた。

(1)現在の惰勢に関する世界の関心は理解している。この地域の安定が世界の安定にとつて重要なことも理解している。

(2)本件の真の重要性をこ張もけい視もなく、理解してもらうために、本件のはい景の一たんを説明したい。

(イ)イラクは6000年の歴史と文明を有している。文字や法律の発明等により、人類の文明に大きくこうけんしてきた。

(ロ)イラクは海への広がりを当然のことながら求めてきたが、英国がイラクの一部をだつ取し海への進出を禁止した。

(ハ)クウエイトヘい合についてのイラクの動きは今日始まつたことではない。

1938年、クウエイトのし問議会はイラクとの合ぺいを提しよう、クウエイト首長はこれを拒否し、し問議会を解散。

1958年、当時のヌーリ・サイード首長が出席したCENTO会議(おいてトルコ)においても、イラクとクウエイトの統合が提しようされた。この会議には、米国のダレス国務長官も出席していた。

1961年、ソ連はクウエイトヘい合を認める正式の声明を発出したが英国のぼう害により実現しなかつた。

要するにクウエイトは1913年英国によつてイラクからだつ取されたものである。

(3)1974年に総理が御らんになつたイラクと今のイラクは違つているはずだ。

現在の政権が出来て22年になるが、それ以前のイラクは極めて後進的な国であつた。

この国の建設を進めてきたのはわれわれである。したがつてわれわれが達成したことを破かいするような戦争を望んではいない。

イランとの8年間の戦争は米国によつてし向けられたものである。

米国がこの地域でいかに破かい的なことをしているかについて、例を挙げて説明したい。

1980年、イランとの戦争ぼつ発以前のことであるが、ア首連のオタイバ石油相がザーイド首長の命を受けてわが国を訪問した際、オタイバはわが国の石油相に対し「アラビスタン地方をイラクヘヘい合してはどうか。湾がん諸国はイラクを支持する用意がある」という提案を行つた。そして、オタイバは自分(フセイン大統領)に対しても同じ提案をしたわけであるが、自分は「アラビスタンの問題もさることながら、その前に、貴国(ア首連)とイランとの間で、大トンブ、小トンブ及びアブー・ムーサーの3島についての領有権問題についてかたづけたらどうか」と言つて、その提案を拒否した経緯がある。そして、この後にイランの反イラク・プロパガンダが激しくなつたわけである。ア首連は米国の要請を受けてわが国をイランとの戦争にし向けようとしたわけであり、そして今また、新たな戦争を引き起こそうとしているわけである。8年間の長期に渡るイ・イ紛争の間、米国はその停戦実現のために何ら真けんな努力を行わなかつた。米国がこの地域において破かい者としての役割を果たしてきたことは明白である。

また、イランゲートにしても然りである。米国はイラン及びイスラエルと組んで、反イラク的行動をとつてきたわけであるが、このことは1986年に世界に知れわたることとなつた。

そのため、米国のマーフイー国務次官補が当国を訪れ、イランゲートについての謝罪書簡を持つてきたが、その際「アメリカはこのようなことをくり返すことはない」と約束をしたのである。しかしながら、その約束から1年も経たないうちに、われわれは、米国が再び反イラク的な動きを取つているとの情報を得たために、自分はアジズ外相を米国に派遣して、ベーカー国務長官に対し、「米国は再び反イラク的な行動を取つているようだが、それはすぐに止めてもらいたい。米国が第3世界のいくつかの国で適用している政策は、わが国(イラク)には通用しない」と言わしめた。これは、1989年10月のことである。また、本年の6月には、いくつかのアラブの首のうが、ブッシュ大統領に対して、米国の反イラク行動に対する警告の書簡を発出した。彼ら(アラブの首のう)は、米国の反フセイン(自分)的政策を知り、戦争が起こる危険性を感じ取つたわけである。そして、事実米国はイラク経済の破かいをもくろんでおり、クウエイトもそれに加担していたわけである。

われわれは、5月のバグダッドサミットにおいて、「クウエイトとア首連は、イラク経済の破かいをもくろんでいるが、これはイラクに対する宣戦布告と見なさざるを得ない」と明言した。そのサミツトの場には、他のアラブ参加国首のうと共に、とうのア首連及びクウエイトの首長も同席していた。

また、われわれは本年の7月9日にファハド国王とカクルの首長との間でかわされた電話内容を入手したが、そこではイラクに対する経済的いんぼうについて話がされていた。更に米国政府は、米国議会の決定を受けて、8月2日事件にさかのぼること5ケ月も前の本年3月からイラクに対するこく物禁輸を実施してきている。

米国の当地域における野心・は権願望は、イスラエルのそれとじくを一にするものである。

(4)これらのバックグランドを考えれば、この地域の問題をどう解決するか、処理するためには、同一の規準と同一の原則をもつて解決することが必要であることが明らかになろう。

国連は今次問題についていろいろ決議を出しているが、パレスチナ、レバノン、その他の問題に関する決議はどうなつてしまつたのであろうか。われわれは真の包括的平和を望んでおり、われわれとしては安心していきて生けるかん境を欲している。

米国は、湾がん地域におけるは権をねらつているわけであるが、そこで貴国(日本)に御たずねしたいことは、もし米国が湾がんの油でん地帯を完全に支配下に収めたとしたら、そして消費国に対する供給の配分を決定できる立場に立つたとしたら、さらには、その価格を自由に設定できる力を持つたとしたら、果たしてそれは、日本の利益にかなうことなのだろうか。

自分がこうしてお話しをしているのは、決して貴国に対して米国へのけん悪感を強めて欲しいからではなく、米国の真の意図を知つていただきたいからである。

われわれがみな望んでいることは、この地域の安定とこの地域の石油がそれを必要とする国へ順調に供給されることである。そして、わが国(イラク)の石油政策がこの目的に沿うものであることは、1974年に当国を訪問されたナカソネ元総理をはじめ日本の方々にはよく分かつていただけていることと思う。

米国は、よくりん理的、法的、あるいは人道的見地という表現を用いるが、一体、イスラエル占領によつてしいたげられているパレスチナ人に対しては、こうした見地が取られているのだろうか。

レバノンについても現在シリア軍とイスラエル軍の占領下にあるわけだが、つい先日のこと、国連安保理は、レバノン問題はターイフ合意に基づいて解決されるべきであるとの決議を出したところであり、このターイフ合意はまさにアラブ自身の手で作り出されたものであることを考慮すれば、今回の事件についてもアラブにアラブ自身の手で解決する自由を与えるべきと考える。

ブッシュは、イラクに留め置かれているアメリカ市民の1人が20KG体重が滅つたと言つて大さわぎしているが、何故20KG減つたかと言えば、他でもなく米国がイラクを攻めるかも知れないという不安、即ち人道的見地とやらを振りかざす米国自身が原因なのである。他方、1800万人のイラク国民は、食料品やいやく品の禁輸によつてくるしんでいる状況において、どこに米国の人道的見地とやらが存在するのであろうか。アラブの諸問題についての様々な国連決議は、全て放置されたままになつている。

例えばパレスチナ問題に関しても、安保理の決議も米国の拒否権によつて何ら実施されないままになつている。

とにかく、わが国は戦争ではなくて平和を欲しているが、いざ戦争をしかけられた場合には、国民のゆう気を結集してこれに対応するつもりである。われわれはこの地域の安定とこの地域の石油がそれを必要とする国々に安全に流れていくことを望んでいる。そして、ここで8月2日以前には、イラクの石油はアメリカにも供給されていたという事実を指摘したい。わが国の石油政策は、先程も申し上げた通り、生産国・消費国双方の利益を考慮したものであり、例えば1973年のOPEC決議の際にも、イラクこそが、急激な石油価格の上しようは消費国を困難な状況に追い込むものであり、生産国と消費国の間での話し合いが重要であることを表明したゆ一の国であつた。この地域の真の平和を達成するためには、全ての問題について同一の規準と原則が適用されることが不可欠と考える。平和達成のためには、シオニスト・イスラエルの反パレスチナ人行動をやめさせ、米国とイスラエルの反イラク行動をやめさせる必要がある。平和は決して部分的なものではなく、全体的、包括的なものでなくてはならず、それこそがまさに自分の8月12日提案の基本である。

(続く)



総番号 R224126

平成2年11月5日{約6文字黒塗り}  イラク発

平成2年11月6日{約6文字黒塗り}  本省着

主管  近2

転電スミ


外務大臣殿            片倉大使

イラク軍のクウエイト侵攻(ナカソネ元総理一行とフセイン大統領との会談)(2の2)

第3338号 秘 至急(ゆう先処理){約7文字黒塗り}

往電第3337号分割電報

(5)国際社会が包括的解決が出来ないというのであればアラブにまかせて欲しい。国際社会は、アラブには、アラブの問題を解決する能力があることを知つている。(レバノンに関するターイフ合意がその良い例である。国連が8月2日以前、以降の全ての問題を解決出来ないならアラブ自身の手にまかされて然るべきと思う。

われわれ(イラク)がサウデイを攻撃する意図のないことは、サウデイに対しても保障済みであるが、それは、サウデイは歴史的にイラクの一部であつたことはなく、その逆もなかつたからである。サウデイが外国の軍隊の代わりにアラブの軍隊を駐留させようというのなら、われわれもこれを認めよう。しかし外国の軍隊は、それが駐留しているだけで、ささいなことから戦争がぼつ発する危険性というものが常に存在する。

3番目の選択しともいうべきプリマコフ提案については、その詳細は未だわれわれにもはつきりしていないが、一言で言えば「PAX DEAL」即ち平和のための包括的な取り引きというものである。全ての関係国が前提条件無しに自由な意見交換の場をもつということである。われわれは、1つの問題について様々な意見が存在するということ自体を拒否するものではない。われわれが拒否するものは、服従を強制しようとするきよう迫や警告であり、また、人道的見地といいながらイラク人やパレスチナ人と自国民とを区別して扱つたり、同じ国連決議なのにある問題についての決議と他の問題についての決議を区別して取り扱おうとするダブル・スタンダードである。

(6)(ナカソネ元総理よりの、プリマコフの考え方についてもう少し詳しく聞かせて欲しいとの発言を受けて、フセイン大統領より次のように述べた)。

先程申し上げたように、その詳細はわからないが、確かに一つのアイデイアではあると思う。全ての関係国が前提条件無しに参加して、平和のための包括的な取り引きのための準備が整備されれば、イラクとしてもこれに参画するにやぶさかではない。

(7)外国人拘留者の話に少し触れたい

御承知のこととは思うが、昨日、議会が新たなイニシアテイヴを出した。即ち(イ)もし安保理常任理事国5ケ国が、武力行使は行わず、平和的な解決を図るという保証をするか、あるいは(ロ)日、中、ソ連、独、仏の2ケ国以上が同じことを宣言するなら全ての外国人拘留者を解放するという趣旨のものである。

これまでは、ブッシュ大統領が武力行使をしないという保証をすれば全ての人質を解放するということを提案してきたところであるが、今度更に新しい2条件を表明したものである。

米国等は自国の世論といつたことを言うが、自国の世論をそん重する国ならば、イラクの世論もアラブ全体の世論もそん重するべきであると考える。2億人のアラブ人民の意見は若干のアラブ首のうの発言はともかくとしてイラクを支持するものであることは明らかである。

(以上に対しナカソネ元総理より第2グループの国の二つ以上の国の保証という点に関し、それぞれ独立国である以上、他国の武力行使等について保証する立場になく、自国が武力行使をしないということを宣言する国が二つ以上あれば良いとの意味かと質問されたのに対し)

2ケ国以上の共同声明であることが必要である。なお、そのうち1ケ国は安保理常任理事国であることが条件である。これは平和の為のふん囲気のじよう成という意味で重要である。

(8)(以上に対し、ナカソネ元総理は次のように述べた)。

そこには2つの問題があると思う。1つは、パレスチナ問題やレバノン問題等の重要な問題が放置されたままになつているということ。もう1つは、クウエイト問題そのものの存在である。

クウエイト問題については、オスマン・トルコ以来の歴史的なはい景から、イラクの主張するところもよく承知しており、また、アラブの問題はアラブのわく内で解決されることが最も望ましいことであることも確かであろう。しかし、クウエイトの問題は、既に世界的な問題になつており、国連をはじめとるする世界全体が関心をもつようになつた故由である。そこで、問題解決のためのフオーミュラとしては、国連とアラブの協力という図式が考えられると思う。今回のイラクのとつた行動は、深いところで、パレスチナ問題やレバノン問題に根ざしているものであることが明らかになつたという意味では、今回の事件もこの地域の諸問題を解決しようとする関係国や世界全体にこうけんしたと言えなくもない。

自分(ナカソネ元総理)は、アラブ・イスラエル紛争に関する安保理決議242及び338を支持する者であるが、というのも、自分は日本政府・公式声明に同決議支持を盛り込むのに努力した政治家の1人であるからである。

人質問題についての貴大統領の新たなイニシアテイヴを評価するものであるが、同時に貴大統領に対しては、クウエイト問題そのものについての新たなイニシアテイヴ発きを願う次第である。というのも、自分自身日本において様々な情報を分せきした結果、戦争の危険というものが切迫してきたと感じるからである。これは決してきよう迫や警告ではなく、貴大統領にとつて最も親しい友人の1人として助言しているものである。自分は太平洋戦争の経験から、戦争のひさんさというものを知りつくしているからでもある。米国が大軍を派遣してきた情勢から考えるに、米国が何もせずに出ていくという状況は考えにくく、それだけに危険であると思う。ヴイエトナム戦争やアフガニスタン紛争を見てもわかるように、戦争をしかけた者が利益を得ることはないというのが通念ではあるが、今の状況をかんがみるに、戦争の危険性はかなり高くなつているのではないかと慮れる。そして、米国が戦争しようとした時に、ソ連や中国が最後まで反対するかどうかは疑問である。

というのも、ソ連は国内経済がかいめつ的な状況で、このふゆがが死者無しに越せるかどうか危ぶんでいるような有様で、とても他国のことに気を配るような余ゆうがなく、他方、中国も、てん安門事件によつて西側諸国から受けた批難のあらしをなんとかしずめ、また、外貨の導入を進めたいと考えているからである。従つて、戦争の危機を回避するためには、人質問題についてのイニシアテイヴのみならず、クウエイト問題そのものについての新たなイニシアテイブが求められていると思う。そうしなければ、米国からの安保理に武力行使を容認する決議採択を要請し、そして、たとえ条件つきであつても、そういう決議が発出されてしまうかもしれない。もし戦争がぼつ発したとするならば、それは米国にとつても大きな影響を及ぼすこととなろう。現在の経済不振は更に悪化するかもしれず、その米国に3000億ドルの債権を有する日本にとつてもその影響は不可避である。米国の財政は破たんし、米国民の士気も大いに低下しよう。しかしながら、米国人というのはいつたんカッとなると前後の見境がつかなくなるという性質ももつている。戦争が起こつてしまえば、そこには勝者も敗者もなく、言うなれば人類全体が敗北することを意味しよう。

(以上に対し、フイセン大統領より次の通り発言)

戦争は人類全体の敗北であるというナカソネ元総理の言ばに同感である。われわれ(イラク)の基本的な立場は戦争には利益がないということである。この点、われわれの利害も、日本の利害も人類全体の利害も一致していると言える。

(次に、ナカソネ元総理より発言)

自分は、今月の16日に米国に赴き、ロスアンジエルスにおけるLEADERSHIP COUNCILという会合に出席する予定でいる。

この会合にはカーター元米大統領、フオード元大統領、ベンツエン米上院議員などが参加することになつている。カーター元大統領とは、2週間前東京において、今回の事件について2時間余り話をしたが、カーターは理性的な政治家であり、今回の事態の平和的解決を訴えていた。また、ドイツのブラント元首相しかりである。

(ここで、フセイン大統領より、ブラント元首相は明日(月よう日)当国を訪問する予定になつているとの発言あり)

政府にいる人間は、どうしても決議や声明といつたものにこう束されることでじゆう軟性を欠かざるを得なくなるが、われわれは、自由な立場で、平和や戦争防止についての意見を述べ合うことが出来る。これはまだ自分(ナカソネ元総理)のアイデアに過ぎないが、出来れば自分とカーター及びブラントの3者会談というものも行つてみたい。

(これに対し、フセンイ大統領より、カーター元大統領は、その声明文等から判断するに、理性的な人であり、平和的解決の方途を希求しているという良い印象をいだいている旨発言)

明日、ブラント元首相に会われたならば、ナカソネがこんなこと(3者会談)を言つていたよと伝えていただいて結構である。いずれにしても、米国に対して戦争を思いとどまらせる努力をすることが大切である。自分は、個人的にアメリカ人が好きであるが、彼らがフランクなところはいいのだが、時としてテイーンエージャーみたいなところがあるのは困り物である。

(フセイン大統領にわらい)

貴大統領には、このように長い時間の会談の場を与えて下さつたことに感謝申し上げるが、もう少しお話することが可能でしようか。

(上の発言を受け、フセイン大統領は、ナカソネ元総理のみをおくの別室へ案内した。)

お見込みにより転電願いたい。(了)