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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 海上自衛隊ペルシャ湾掃海派遣部隊の出港に際しての海部内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1991年4月26日
[出典] 海部演説集,395−396頁.
[備考] 
[全文]

 太平洋、インド洋を経てペルシャ湾を目指して出港する海上自衛隊ペルシャ湾掃海派遣部隊の諸君、遠く我が国を離れて掃海作業に従事されることとなる諸君の胸には揺らぐことのない強い使命感が沸き上がっていることと思います。

 湾岸危機については、すでに正式停戦が成立していますが、ペルシャ湾には、この湾岸危機の間に、イラクにより敷設された機雷がなお多数残存しているといわれており、これらがこの海域における我が国のタンカーを含む船舶の航行の重大な障害となっています。ペルシャ湾は、世界の原油の主要な輸送経路の一つに当たっており、我が国が、この海域における船舶の航行の安全の確保に努めることは、国の存立のために必要不可欠な原油の相当部分をペルシャ湾岸地域からの輸入に依存する我が国にとって喫緊の課題であります。また、かかる我が国の努力は、国際社会において大きな責任を果たすことが求められている我が国にとって、人的貢献策の一つとしても、意義を有するものと考えています。

 政府は、湾岸地域に平和が回復している状況、ペルシャ湾における船舶の安全航行の確保、国際社会に対する我が国の貢献、そして自衛隊法第九十九条の趣旨等を総合的に勘案して、今回、諸君を機雷の除去及びその処理のためペルシャ湾に派遣することを決定いたしました。

 その際、重要な要素として、諸君、そして諸君の先輩が築いてきた海上自衛隊の高い掃海能力があったことは言うまでもありません。諸君の旺盛な士気、そして掃海の技量について、私は承知しておりますが、長い航海を経てペルシャ湾における機雷掃海という危険な作業に向かわれる諸君の健康と安全を心から祈念しております。

 諸君が任務を行うに当たって、政府としては、諸君が誇りを持って安んじて任務に従事できるよう、適切な措置を講ずる所存であります。諸君は、その任務の重要性、そして国民の諸君に対する期待をよく理解し、その実力を余すところなく発揮されることを強く期待し、私の挨拶とします。