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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 川口外務大臣のステートメント「中東和平:2つの国家の平和共存に向けて」

[場所] 
[年月日] 2003年4月29日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文] 

 中東地域の平和と安定の鍵とも言える中東和平については、パレスチナ自治政府におけるマフムード・アッバース新首相の就任、さらにイスラエルとパレスチナの二つの国家の共存への道筋を示す「ロードマップ」の公表という、中東和平推進へ向けた絶好の機会が訪れている。これを受け、国際社会は、従来以上に中東和平推進に向けた支援、協力を行っていく必要がある。そのため、昨年に続くイスラエル、パレスチナ自治区への私の訪問の機会をとらえ、我が国として、改めて双方による暴力の停止を訴えつつ、我が国による中東和平への確たるコミットメントを確認するとともに、パレスチナ自治政府の改革を進めるマフムード・アッバース新首相を支援することにより中東和平を推進するため、我が国として、以下の措置(総額約2,225万ドル)をとる用意があることを表明する。(別添:対パレスチナ新支援パッケージとイスラエル・パレスチナ間信頼醸成新イニシアチブ)

1.人道支援及びパレスチナの国造りに向けた新支援パッケージの表明

 昨年6月に私がイスラエル及びパレスチナ自治区を訪問した際に発表した「我が国の対パレスチナ支援のロードマップ」に従い、緊急人道物資、ワクチンや基礎サービスの供与や食糧援助等の人道支援を行う。また、パレスチナ自治政府が進める改革に対し、パレスチナ自治政府の行政能力向上のため首相府事務所を設置する他、ヨルダンを通じてパレスチナ人司法関係者を訓練する第三国研修等の司法改革支援、地方自治体のインフラ復旧を通じた雇用創出支援や人材育成支援等を実施する。更に、現地での支援の実施体制を強化するとともに、現地レベルでパレスチナ改革を推進し、我が国が地方自治改革支援グループの議長国である「パレスチナ改革タスクフォース」の実施体制を強化するため、治安状況を念頭に置きつつ、JICA関係者の派遣を検討する。

2.イスラエル、パレスチナ間の対話の促進を促すための信頼醸成のための新イニシアチブの開始

(1) イスラエル・パレスチナ市民間協力への支援

 困難な中で人道支援活動を継続しているイスラエルとパレスチナのNGO等市民団体間の貴重な協力を支援するため、「草の根・人間の安全保障無償」を用いて、これらのプロジェクトを支援し、イスラエル・パレスチナ間の交流の促進を図る。

(2) イスラエル・パレスチナ当局間の環境協力の模索

 困難な現地の情勢下で環境の悪化が深刻化する中、環境問題はボーダーレスであるとともにイスラエル・パレスチナ両者の協力した対処が必要な問題である。日本は多国間協議の環境ワーキング・グループ議長として、この地域の環境の改善に多大な関心を有しており、環境の保護及び改善のための両当局間の協力案件を模索し、これを支援する。また、こうした協力案件を通じて、双方の信頼関係の強化も図る。

(3) イスラエル・パレスチナ間の信頼醸成のための会議の開催

 イスラエル、パレスチナ自治区及び日本の実業界、政府、学会から関係者を招聘し、イスラエル、パレスチナ双方の繁栄に向けたビジョンと、そこにおける国際社会の役割について中長期的観点から話し合う会議「イスラエル・パレスチナ間の安定的相互依存関係に向けて」を5月19日及び20日に東京で開催する。