[文書名] ナランツァツラルト・モンゴル首相主催晩餐会における小渕内閣総理大臣挨拶
ナランツァツラルト首相閣下、令夫人
並びにご列席の皆様、
オロイン・メンド(今晩は)
まず、ただ今の首相閣下の温かい歓迎のご挨拶に心から御礼申し上げます。
このたび、貴国政府のご招待によりまして、日本国総理大臣として貴国を公式訪問する機会をいただきましたことは、誠に光栄であります。また、私共一行のためにこのような盛大な晩餐会を催していただきまして、感激に耐えません。日本側一同を代表いたしまして、厚くお礼申し上げます。
貴国こそはまさに私が十代の少年の頃から訪れてみたいと強く願っておりました憧れの国であります。私が尊敬する故司馬遼太郎さんは、「モンゴルの大草原は世界の宝」ということをお書きになっておられますが、その雄大な自然の美しさと、世界史に名を残す英雄を生んだ偉大な歴史を有するモンゴルに対して、深い親近の気持ちを抱いております日本人は一人私だけではありません。私は青春の頃の夢が本日ついに実現いたしましたことに感激ひとかたならぬ思いであります。
またこの機会にモンゴルの皆様にあらためてお礼申し上げたいことがあります。それは四年前のあの阪神・淡路大震災の際に、モンゴルの皆様から差し伸べていただきました、温かいご支援に対してであります。被災民のために三千枚もの毛布を飛行機で運び込んでいただき、しかも混乱の極にあった日本側に迷惑をかけないようにと、毛布を空港に置いた後、すぐにそっと帰国されたモンゴルの関係者の方々のご親切とご配慮を、当時も、また今も我々日本人は決して忘れておりません。バヤルラー(ありがとうございます)。
ご列席の皆様、
今回の私共の訪問は、週末にかけての慌ただしい旅となりましたが、それにも拘わらず、貴国政府のひとかたならぬご配慮によりまして、大変有意義なものとなっております。
本日昼過ぎにウランバートルに到着いたしましてから、首相閣下との会談、バガバンディ大統領、並びにゴンチグドルジ国家大会議議長との会見の機会をそれぞれいただきましたが、皆様が国造りに対して抱いておられる熱い思いに直接触れて感銘を深くいたしました。
日本政府は、モンゴルにおける民主化・市場経済の推進に対するご努力を高く評価してまいりました。本日の一連の会談で私が表明いたしました日本政府による種々の支援策は、そのような貴国の懸命のご努力に対して少しでもお役に立ちたいという、日本側の友情の証であります。
ご列席の皆様、
明日、私共はナーダムの開会式にお招きいただいております。年に一度のこのお祭りに参加させていただき、モンゴルの皆様との交流を深める貴重な機会を楽しみにしております。そしてモンゴルの皆様と一緒に味わった楽しい思いを日本に持ち帰り、両国の間の相互理解と信頼関係をさらに深めてまいるよう、私としてもできる限り力を尽くしてまいりたいと考えております。
実は私の地元の群馬県でもモンゴルとのささやかな交流をしております。それは、群馬で一番人口の少ない中里村で、フレルバートル駐日モンゴル大使のご親戚のゾルちゃんという十一歳の女のお子さんを、一年あまり村の小学校にお預かりしており、この四月にめでたく卒業してモンゴルに帰国されたものであります。ゾルちゃんは中里村で大変な人気者で、今回私が訪問するに際しまして、地元の小中学生の友達から沢山の手紙とプレゼントを預かってまいりました。ゾルちゃんは来週十六日が十三歳のお誕生日だそうであります。
文化交流、人物交流のささやかな一例としてこのエピソードを紹介させていただきました。
それでは、ご列席の皆様、
ご主人の杯をお借りして、
首相閣下ご夫妻の健康のため、
ご列席の皆様の健康のため、
貴国と貴国民の繁栄のため、そして
日本・モンゴル両国の友好と協力関係の発展のため
乾杯いたしたく思います。
トクトーヨー(乾杯)!