データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国とモンゴル国との共同新聞発表

[場所] 
[年月日] 2006年3月28日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 ミエーゴムビン・エンフボルド・モンゴル国首相は夫人とともに日本国政府の招待により2006年3月26日から30日の日程で日本国を訪問しており、28日に小泉純一郎日本国総理大臣と会談した。また、30日に帰国するまでに、天皇皇后両陛下に謁見する他、小泉純一郎日本国総理大臣と会見し、また河野洋平衆議院議長及び扇千景参議院議長とそれぞれ会見し、また日本国の経済界、文化界及び民間団体の要人とも会談することとなっている。今般のエンフボルド・モンゴル国首相の日本国訪問に際し、日本国とモンゴル国は以下のとおり共同発表する。

1. 日本側は、本年に「大モンゴル建国800周年」を迎えているモンゴル国及びモンゴル国民に対して心からの祝意を表明した。日本側及びモンゴル側(以下「双方」という。)は、本年を「日本におけるモンゴル年」、両国外交関係樹立35周年を迎える明2007年を「モンゴルにおける日本年」として記念することにつき一致したことは両国国民の間の相互理解と相互信頼の強化に資するものとなることを再確認した。

2. モンゴル側は日本側に対して、モンゴル国内の民主化が安定的に進展し、経済が回復・安定化しつつあることを説明するとともに、日本国の支援・協力がこれらに多大な貢献をしていることを高く評価し、感謝の意を表明した。日本側は、モンゴル国が自国の自立的発展のために行っている努力を今後とも支援する旨表明した。

3. 双方は、民主主義、自由及び基本的人権という共通の価値観に基づき「総合的パートナーシップ」の構築を1996年に提唱して以降10年間、両国間の関係・協力が広い範囲で進展し、「総合的パートナーシップ」の確固たる基盤が作られたことにつき満足の意を表明するとともに、「総合的パートナーシップ」構築に向け、両国関係を今後10年間に一層緊密かつ充実した次段階に進めるとの固い決意を相互に表明した。

4. 双方は、両国間の政治対話が高いレベルに達し、相互理解と相互信頼が強化されていることに満足の意を表明し、今後もこれを継続することが重要であることを表明した。エンフボルド・モンゴル国首相は、小泉日本国総理大臣に双方の都合の良い時期にモンゴル国を公式に訪問するよう招待し、小泉日本国総理大臣はこれに対して謝意を表明した。小泉日本国総理大臣は、ナムバリン・エンフバヤル・モンゴル国大統領に双方の都合の良い時期に日本国を訪問するよう招待し、エンフボルド首相はこれに対して謝意を表明した。モンゴル側は、「大モンゴル建国800周年」に当たる本年に、日本国の国会、政府及び民間からより多くの訪問者がモンゴル国を訪問することを歓迎すると表明した。このことと関連し、モンゴル側はモンゴル政府が本年4月1日から12月31日まで、モンゴルに渡航する日本国民に対して短期査証を免除する旨決定したことを表明した。

5. 双方は、多くの分野において両国の関係・協力が広まりかつ深まっていることに関連し、両国の外交当局間のみならず他の分野においても両国の所管官庁間で協議が行われることが重要であるとの認識を示すとともに、経済及び貿易を所管している日本国経済産業省及びモンゴル国産業通商省との定期協議を開始することを確認した。

6. モンゴル側は、現在、中長期的なモンゴル国開発戦略計画を策定中であることを紹介し、同戦略計画の策定にあたってモンゴル国のパートナーである諸国、特に日本国と協議すること、両国の協力を同戦略計画と連携し調整することにつき期待を表明した。日本側は、モンゴル国が中長期的な国家開発戦略計画を有することは、モンゴル国の発展のみならず、両国の協力発展にも有益であると評価した。

7. 双方は、「総合的パートナーシップ」構築に向けた新たな段階の重要な目標の中に、互恵の経済関係の発展が含まれるとの点につき意見の一致をみた。日本側は、モンゴル国の地下資源開発がモンゴル国の発展にとり大きな役割を担うこと、及び日本からの投資と技術面での協力がモンゴル国の地下資源開発に重要な貢献を行い得ると認識していることを表明した。モンゴル側は、本年からモンゴル石炭資源開発のために共同で地質調査を始めたこと及び日本の複数の企業がモンゴル国の鉱山分野に投資を行うことを提案していることを多とし、モンゴル国政府としてこれを政策的に支援することを表明した。モンゴル側は、貿易を通じた途上国の持続的開発に資するために日本国政府が発表した「開発イニシアティブ」のモンゴル国に対する適用を要請し、日本側は、「開発イニシアティブ」の下での協力を行う意向を表明した。

8. 双方は、環境分野における協力について政策対話を開始することを検討することとした。

9. モンゴル側は、日本国政府開発援助に関して2004年11月に策定されたモンゴル国に対する国別援助計画が日本国からモンゴル国への経済援助の戦略的方向を明確に示したことを高く評価し、謝意を表明した。また、モンゴル側は、同国の中小企業振興及び環境保全を目的としたツーステップローン案件(供与限度額29億8,100万円)について、日本が円借款の供与を決定したことに対して謝意を表明した。双方は、モンゴル国の経済発展のために、モンゴル国の債務負担能力を勘案しつつ譲許的な円借款を一層活用する可能性を検討することにつき意見の一致をみた。また、日本側はモンゴル国に対して3.3億円の貧困農民支援(無償資金協力)の供与を実施したことを表明した。さらに、モンゴルの食糧不足解消のための一貫した取組として、本年度も食糧援助の実施を決定し、準備を進めている旨表明した。

10. モンゴル側は、気候変動によって農・牧畜業が直面している水供給問題を包括的に解決するとの課題につき共同調査を行うことを提案し、日本側はこれに留意した。

11. モンゴル側は、日本側に対し、国内において必要とされる道路・建設技能労働者を育成するための職業訓練・産業センターの建設につき要請し、日本側は検討することとした。

12. モンゴル側は、第三回モンゴル・日本文化フォーラムを2007年にウランバートルで開催することを提案し、日本側は検討することとした。

13. 双方は、21世紀における挑戦及び困難に成功裡に対処するために、国連の刷新・改革が必要であることにつき意見の一致をみ、2005年の国連総会首脳会合において採択された成果文書を実施するために協力することを表明した。双方は、国連安全保障理事会における決定を効果的なものとするため、常任・非常任議席の双方を拡大し、途上国及び先進国の代表権を適切に確保すること及び国連安全保障理事会の活動をより開かれた、かつ透明性のあるものとすることを目指して、引き続き積極的に協力していくことを表明した。モンゴル側は、日本が国際の平和及び安全保障を確保することに実質的に貢献していることを評価し、日本が国連安全保障理事会の常任理事国として選出されることを支持していることをあらためて表明した。モンゴル側は日本側に対し、2009年から2010年の国連安全保障理事会非常任理事国として立候補しているモンゴル国を支持するよう要望し、日本側は慎重に検討することとした。モンゴル側は、アジア欧州会合(ASEM)への新規参加希望を表明し、日本側は、モンゴル国のASEM参加への熱意を歓迎し、参加支持することを表明した。

14. 双方は、国境を越える犯罪との闘いが国際社会全体の当面する課題の一つであることに留意し、この点について情報を交換し、協力することが重要であるとの認識を示した。

15. 双方は、六者会合の枠組みの下で、北朝鮮の核問題をはじめとする諸懸案が平和的かつ外交的手段によって解決されるべきとの考えを再確認した。日本側は、日朝平壌宣言に基づき、核、ミサイル、拉致問題等の包括的に解決し、北朝鮮との国交正常化を実現するための努力につき説明し、モンゴル側は、日朝間の諸問題が日朝平壌宣言に基づき包括的に解決されることを支持している旨、あらためて表明した。