[文書名] 日本・モンゴル共同声明
安倍晋三日本国内閣総理大臣と、日本国政府の招待により日本国を公式訪問中のナムバリーン・エンフバヤル・モンゴル国大統領は2月26日に会談し、次のとおり共同声明を発出した。
1. 双方は、両国の関係が、1996年に打ち出した総合的パートナーシップの原則に従って、成功裡に進展してきたことに満足の意を表明し、2006年3月のM・エンフボルド・モンゴル国首相の日本国訪問及び同年8月の小泉純一郎日本国内閣総理大臣のモンゴル国訪問の際に両国の協力関係を新しい段階に進めることについて両国が認識の一致をみたことに基づき、「今後10年間の日本・モンゴル基本行動計画」(以下「行動計画」という。)に署名した。双方は、「行動計画」に基づき、両国が具体的な行動をとり、具体的な成果を得ることが重要であることにつき意見の一致をみた。
2. 双方は、「大モンゴル建国800周年」に当たる2006年を「日本におけるモンゴル年」とし、さらに、日本・モンゴル外交関係樹立35周年記念を迎える2007年を「モンゴルにおける日本年」として記念行事を実施していることが、両国の友好関係並びに両国民の相互理解及び相互信頼の一層の強化に寄与するとしてこれを評価した。これに関連して、日本側は、日本国政府の「21世紀東アジア青少年大交流構想」の下、今後5年の間に、高校生を中心にモンゴル国から学生を年100名程度をめどに日本国に招くことを表明した。
3. モンゴル側は、モンゴル国において民主主義が定着し、市場経済への移行期が基本的に終了し、持続的な発展の新しい段階が始まっていることに言及するとともに、日本国の支援及び協力がこうしたモンゴル国の発展に多大なる貢献をしてきたことを高く評価し、謝意を表明した。日本側は、民主化、自力発展等のためにモンゴル国が行っている努力を今後とも支持することを表明した。これに関連し、日本側は、モンゴル国政府から支援を要請されている「ウランバートル市新国際空港建設計画」(円借款)については、現在実施中の調査結果を踏まえ、モンゴル側の協力を得つつ、積極的にフォローアップしていくと述べた。また、日本側は、「ウランバートル市高架橋建設計画」(無償資金協力)については、同計画の実現を目指して、モンゴル側と共に努力すると述べるとともに、ウランバートル市の大気汚染対策のための協力について、モンゴル側と共に検討していきたいと述べた。さらに、日本側は、「人材育成奨学計画」(無償資金協力)、「ウランバートル市廃棄物管理改善計画」(無償資金協力)及び「第3次初等教育施設整備計画」(無償資金協力)の2007年度の実施に向けてモンゴル側と協力していくと述べた。また、日本側は、2007年度の「青年研修」(技術協力)について、モンゴル側からの受入人数を倍増させると述べた。
4. 双方は、両国間の政治対話が高いレベルで行われ、相互理解及び相互信頼が強化されていることに満足の意を表明するとともに、今後ともこの政治対話を継続することが重要であるとの認識を示した。エンフバヤル大統領は、安倍総理に対して、双方の都合の良い時期にモンゴル国を訪問するよう招請し、安倍総理はこれに対して謝意を表明した。また、エンフバヤル大統領は、皇太子同妃両殿下、河野洋平衆議院議長及び扇千景参議院議長を2007年に「モンゴルにおける日本年」の来賓としてモンゴル国を訪問するよう招請し、安倍総理は、これに対して謝意を表明し、関係方面に伝達すると述べた。
5. 双方は、両国間の協力のメカニズムを一層明確かつ優れたものとすることが適切であると認識し、両国の関係省庁間で開始された対話を拡大・強化することにつき意見の一致をみた。また、双方は、両国間の貿易及び投資の拡大の可能性を高める環境整備が極めて重要であるとの認識につき一致をみ、行動計画に示された協議のメカニズムを通じて、双方が協力して積極的に作業を行うこととした。モンゴル側は、日本国の大企業がモンゴル国の鉱物資源開発分野に対する投資につき関心を有していることに対し歓迎の意を表明するとともに、2006年に改正されたモンゴル国国内法(鉱物資源法及び税法)の施行と関連する法的関係や開発計画方針等の調整を終えた後に、日本側企業との間で協議が開始されるよう支援すると表明した。
6. モンゴル側は、モンゴル側が「モンゴル国開発に係る2021年までの総合戦略」(以下「総合戦略」という。)の策定を終えようとしていることに言及し、日本側に対して「総合戦略」を実施するための計画を策定するための、両国の学者、専門家等による合同チームを日本国の政府開発援助(ODA)の枠内において組織することを要請した。日本側は、モンゴル国が「総合戦略」を重視していることについては十分認識していると述べた上で、モンゴル国の持続的発展のために引き続き協力する旨述べるとともに、モンゴル側の提案を検討する旨を表明した。
7. モンゴル側は日本側に対して、日本国政府の「開発イニシアティブ」の下で、モンゴル国の輸出産品の生産、流通及び販売について支援を行うよう要請した。日本側はモンゴル側の具体的な要望を待って、できる限り前向きに検討したい旨表明した。
8. 双方は、両国間の民間経済の関係を促進する環境整備の一環として、累次モンゴル側が日本側に対して要請している租税条約について、意見交換を今年中に開始することで意見の一致をみた。
9. 双方は、21世紀における挑戦及び人間の安全保障に対する脅威に関わる困難な課題に取り組むために、国連の刷新及び改革が必要であることを再確認した。日本側は、2008年安保理非常任理事国選挙において日本国の立候補を支援するためにモンゴル国が示した「友好と善意の特別の証」に改めて感謝の意を表明した。これに対して、モンゴル側は、日本国が安全保障理事会の非常任理事国として選出され、活動することを支持するとともに、日本国が国連の安全保障理事会の常任理事国になること及びそのための努力を今後も支持することを表明した。
10. 日本側は、国際及び地域の他の機関及び活動へのモンゴル国の参加に関して情報の提供、意見の交換及び助言等の支援を行う旨を表明した。
11. 双方は、北朝鮮の核問題について、第5回六者会合第3セッションにおいて、北朝鮮が具体的行動を約束し、朝鮮半島の非核化に向けた作業が具体的に開始されたことは一定の前進であるとの認識で一致し、北朝鮮に対し、合意された行動を迅速に実行するとともに、国連安保理決議第1718号の完全な実施に向け具体的かつ効果的な措置をとるよう求めた。また、日本側は、日朝平壌宣言に則って、拉致、核、ミサイルといった諸懸案事項を包括的に 解決するとの日本の立場を説明し、モンゴル側は支持と協力の意を表明した。
2007年2月26日東京にて
日本国内閣総理大臣
安倍晋三
モンゴル国大統領
ナムバリーン・エンフバヤル